「う〜ん、いい天気」
今日も快晴。気分も最高!
私は気合十分で朝早くに起き出して、真っ先に武器庫にあった剣をとると外に出た。
戦争は嫌い。
戦うなんて嫌い。
でも、守らなきゃいけない。
…とりあえず自分を。
昨日の事でわかったけど、私はアスランに守られてる。だから無事に今日を迎えられてる。
けど、アスランがいなかったら私は今ここにはいなかったかもしれない。
「そんなことにならないように自分だけは守らなきゃ」
そう。決心がついたのはこれ。
スーザンもルーシーも勇敢に戦うもん。私も、何か出来なきゃ。
剣をとる覚悟は出来た。
剣をとったら、誰かを殺さなきゃいけなくなる時が来るかもしれない。
でも、この世界はそういう世界だ。
私はたまたま、平和なあの世界のあそこに生まれただけ。
私がここに来なきゃいけなくなったのは運命だもん。
戦わなきゃだめ。
「ねえ、あなた剣扱える?」
「あ、はい…」
私は寝ぼけ眼の若いセントールを捕まえると、草原に誘った。
セントールって気高いから、背中に誰かを乗せるなんてしないんじゃないの?
そうなはずなのに、この若いセントールは私を背に乗っけて走ってくれたの。
風が爽やかで、ブワアッてぶつかってきて…全部、初めて感じるものだった。
「私、剣を使えるようになりたいの。教えてくれないかな?」
「剣を、ですか?それはかまいませんが…」
彼は私のナリを上から下まで見て悩んだ。確かに、ドレスじゃだめよね。
「ちょっと待って」
そう言うと、裾をまくりあげる。そして持ってた紐で腰の辺りで巻き付けた。
「ちょっ…いくらなんでも、それは…」
「気にしないで!私だって気にしないんだから!」
私だって恥ずかしいに決まってるじゃん!でも、ここにはこのセントール君一人しかいないし!
今日だけなんだから!
「今日だけ!明日からはちゃんと着てくるから」
「……わかりました」
彼は顔を赤らめながら渋々頷くと、お辞儀をする。
「アスランの守人様。僕はヘラクスと申します。以後お見知りおきを」
「あっ…こちらこそ。よろしく!
…ごめんなさい。私が連れ出したのに先に自己紹介させちゃって。剣のことで頭がいっぱいになってた」
「いえ、それだけ熱心だということです」
彼はにっこり微笑むと、私の前に膝をついた。
「さあ、やりましょう。剣を握って…」
ヘラクスはすごく、教えるのが上手だった。聞いたら私と歳が変わらないのに、もう第一線で戦うんだって。
金髪の巻き毛、優しい青い瞳。絶えず微笑むその顔が好印象!
オレイアスとは全く違うタイプなんだけど、ヘラクスもカッコイイよ。
「様は太刀筋がいいですね。もう戦えますよ」
「えっ?」
「普通はそこまでなるのに最低半年くらいはかかるんですけど、様は明日には一人前になりそうですね」
にっこり微笑みながら言われても、説得力ないよ?
だって、一気にうまくなるなんてありえない。
剣だって、使ったことないし。
「お世辞言わなくてもいいよ?それに、敬語はやめてよ。友達になって欲しいんだから」
私がそう言うと、ヘラクスは一瞬ぴたりと止まった。
何かと思って覗くけど、彼は動かない。
でも、イキナリ……
「友達…?
っはは、あははははは!」
「え、何?」
ヘラクスが突然笑うから、びっくりしちゃった。
でも、さっきから見てる爽やかな微笑みとは正反対というか…、豪快?
私、何か変なこと言ったのかな。
「そう言ったこと、後悔するなよ!」
「いたっ…」
デコピンくらった〜〜〜っ!
というか、何!?
「ヘラクス?」
「え?何?友達だろ?気を使わなくても、敬語使わなくてもいいんだろ?」
「………」
え、え、ええーっ!!!
何?豹変してるんだけど?誰これ?
「敬うっつーのはめんどくせーからな。から友達になりたいなんて言ってくれて、よかったぞ」
ぽかんと口を開ける私の肩をぱんぱん叩く。
もしかして…もしかしなくても……
「本性隠してたの?」
「ったり前じゃ〜ん!俺の演技うまかったろ?」
「演技かあぁぁっ!」
は〜、ガッカリ。
見た目は王子様みたいにカッコイイのに。
「いいじゃん、友達がいいんだろ。それともあれか?
様、こちらの方が宜しいですか?」
声色を変えて前のちゃんとしていた言葉使いに戻る。
でもさ、その表情は本性のまんまだよ。説得力ないし。
「ううん、いい。本性知ったらそんな言葉使いされても嬉しくない」
「あ?なんだと〜!」
ヘラクスは私の両肩を掴むと、前後に振って嫌がらせをした。
頭はクラクラになるし……ヘラクスは俗に言う『いじめっ子』なのだろうと思った。
「はぁ〜〜〜ガッカリ」
「おい、なんだそのガッカリって」
「ヘラクスのことに決まってんじゃん」
「は?やっぱ前の方がいいのか?」
「ううん、そうじゃないけど。いいのいいの、私の独り言だから気にしないで。
そだ、朝ごはん食べに帰らない?」
「ああ。乗れよ、」
朝ごはんの時間には早かったけど、私は帰ることにした。
だって、こうしている間にもオレイアスがエドマンドを連れ帰ってるかもしれないじゃない。
それにしても、ヘラクスは私を鷲掴みにすると自分の体の上に放り投げたんだよ!
乗せてくれるのは嬉しいけど、痛いし。
「ヘラクスってセントールだよね?」
「俺がセントール以外に見える?フォーンとか?」
「聞いた私が馬鹿でした」
「わかればいいよ」
ムッ…。
何か、アイツ。幼馴染のマユモと喋ってるみたいなんですけど。
完全に私を馬鹿にしてる気がする。
「俺は異色なんだってさ」
「え?」
急に声のトーンを落として彼は言った。
異色?異色ってなんだろ。
「んとこはさ、同じ生き物の中にちょっと変わった奴いなかったか?」
「……う〜〜ん、いたかも?」
「いなかったんだろ。…まあ、同族の中でも落ち零れのような外れてるみたいな奴だよ」
「え!?ヘラクス、仲間はずれなの!?」
そんな風には見えない。
だってこんなに人懐っこいし、すぐ友達になってくれたもん。
私が肩に手を置くと、彼の体はビクンと波打った。
そして少しの間をあけて、私の手に自分の手を重ねる。
彼の表情は見えないけど、その背中は寂しそうだった。
「今は、そんなことはない。だから大丈夫だって」
「……うん」
ヘラクスは私の手を掴むと、自分の腰に回させる。
不思議に思っていると、彼は笑いながら叫ぶ。
「しがみついとけよ!」
「へっ……っきゃぁぁぁぁぁぁっ!!!」
ヘラクスはありえないほどのスピードで草原を走り回った。
私は彼の腰に抱きつくようにしがみつき、その反動に耐える。
体が彼の背の上で上下に動く。ドシンドシンとおしりに衝撃が走って痛い。
でもそのうち楽しくなってきちゃって、大笑いしてる彼と一緒に私も大笑いした。
おしりはヒリヒリしたけど、ナルニアに来てこんなに楽しいって思ったのは初めてだったかもしれない。
剣を教えてくれたのも、楽しくしてくれたのも彼だ。
私は友達になったばかりの彼に感謝した。
でも私がヘラクスの性格が見た目に似合わず豪快一本だってことを知るのは、もう少しだけ先のこと。
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レッツオリジキャラ〜〜〜♪
見た目は王子様なのに、中身とのギャップがスゴイ彼。
かなり活躍予定あるので、気に入っていただければ嬉しいです^^
こんな堅苦しくない(というか壊れてる)セントールがいてもいいよね(笑)
2008/06/22
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