アスランのテントに続く道を、私達と兵士達は囲むように長蛇の列を作る。
そして近くの者と話しては、ジェイディスがいつ通るだろうかと道を見つめていた。















「大丈夫、エドマンド」

「……うん」














彼の顔は初めて会った時と同じくらい青白かった。
それは心配になる程で、頷かれても説得力がない。

私は彼の手を握ると、にっこり微笑みかけた。
エドマンドも顔を引き攣らせながら無理矢理微笑み返してくれる。














「私と手を繋いでいよう」

「………うん」













きっと、本当は恥ずかしくて嫌だっただろうなぁ。
でも、エドマンドは拒否せずに私の手を握り返してくれた。
















「ジェイディス!ナルニアの女王、離れ島の女帝!」















サイクロプス達が白いドレスに包まれた彼女を囲んで現れた。



私達は良く見えるように前の方に進んで、睨み付けるように彼女を見つめる。
すると、ジェイディスはエドマンドと私を見た。






彼女は何も言わなかったけど、私達を見てフンと鼻で笑う。
なんて失礼なのかしら!!





そのままアスランに目を移して同じように鼻を鳴らすと、彼女を持ち上げていた椅子は下ろされた。



ジェイディスは本物の女王であるかのように毅然と立ち上がった。
そして胸を張って高慢な表情で一歩、一歩と前に進み出る。
そして2、3歩歩いたところで、再び私とエドマンドを見た。
















「裏切り者がいる。アスラン」
















みんながエドマンドを見る。
繋がれた手はきつく握り締められた。

















「あなたを裏切ったのではない」

「古い掟を忘れたのか?」

「世をつかさどる魔法のことなら――私は書かれた場にいた」

















グルルと喉を鳴らすアスランを見て、ルーシーが不安そうな表情になる。
私もドキリとした。



ジェイディスが、嬉しそうに笑ったから。
















「なら、承知のはず。裏切り者は私のもの。彼の血は私の所有物」
















彼女がそう言い切ったところで、ピーターが剣を抜いた。
オレイアスも、ヘラクスも、他の動物達も武器を構える。


















「私の権利を力でつぶせると思うか?お若い王様」


















鼻で笑うジェイディスを複雑な表情で見つめるピーター。
彼は目を逸らすと、少し間を置いて剣をしまった。















「裏切り者の血を私によこさぬなら――

掟によってナルニアは崩壊し、火と水のうちに滅びるのだ。

あの少年は、石舞台の上で死なねばならん

それがしきたりだ」














今度は私がエドマンドの手を強く握り締めた。
きっとお互いに感覚がなくなるほど握り締めたと思う。



その存在を確かめあうように。















「拒むことはできぬ」

「やめろ。2人だけで話そう」















アスランはジェイディスを連れてテントの中へ入っていった。

こういう時のために、いつもとは逆にアスランが考えてる事が私にわかればいいのに、と思った。
そうしたら、役に立てるかもしれないのに。

























































「しりとりでもしよっか?」

「しりとり?」

「後の文字と最初の文字を繋げる遊びだよ。ナルニア、アだから、アーケン国…みたいな感じ」

「やるやる!」














気まずい雰囲気の中で提案すると、ルーシーが頷いてくれた。
でも、ピーターとスーザンはじろりと睨む。
















、私達は今そんな気分じゃないわよ」

「そうだ、もう少し場をわきまえて…」

「僕はやるよ」














エドマンドはピーターの言葉を遮って言いった。
ピーターとスーザンは驚くと弟を見つめる。















「だって、気が紛れるだろ?」















エドマンドは青白い顔ではにかんだ。
すると、彼の後ろからヘラクスがにょっと顔を出して言う。
















「僕もやります」















気のせいか、ヘラクスがニヤリとピーターに笑いかけたように見えた。
それはやっぱり気のせいじゃなかったみたいで、ピーターはヘラクスをキッと睨んで自分も参加を認めた。
ピーターって、負けず嫌いなんだね。

















「ん、が最後についたら終りだから」

「じゃあさっきの例えはおかしいんじゃない?ナルニアは国がついてないけど、アーケンはん、がつくから国付けたんでしょ」















ルーシーに痛いとこ突っ込まれた。
でも、良い例が浮かばなかったんだもん、しょうがない。

















「そこは緩く、楽しくいかなきゃ!」
















私の言葉にみんな頷くと、一生懸命考え出した。
























結果的にしりとりはよかったのかよくなかったのかわからなかった。
だってね、生きてきた世界が違うから、知ってるものも多少のズレがあって(特に私が)。
言うたびに「何それ」と聞かれれば説明し…を続けちゃったから、しりとり自体はあんまり続かなかったんだよね。



ちょうど、パソコンについての説明が終わって、ルーシーに「ん」がついてるからの負け!って言われた時、天幕をバッサリと開けて、ジェイディスが出て来た。
そしてその後ろからは顔色の悪いアスラン。

















「アダムの息子の血は諦めると」
















…やっぱり、あれは起こるんだ。アスランは、ジェイディスに…





ナルニア軍に歓声が起こり、エドマンドは私の手を離してピーターと抱き合う。

私は、アスランの顔を見ていたらいてもたってもいられなくなって、みんなのとこから彼の元へ走っていった。
スーザンが小さく私の名前を叫んだけど、気にしなかった。





だって、今ここで私がいるべき場所はアスランの横だもん。
私は彼の背中に手を掛けると、ジェイディスを見上げた。









彼女は、勝ち誇るように笑っている。

















「ほう、そなたも含めて話をすべきだったかもしれないな」

「……」

「また喋らぬのか。初めて会った時も、喋らなかった」

「…」

「その時は恐怖感からだったようだが、今日は違うな」














彼女はくくくと笑って私を見下した。私はそんな彼女を睨み上げる。


















「そなたは私のものになる。あの時言った通りだ」


















言い放ったジェイディスは自分の椅子の前まで歩くと、再びアスランを見た。


















「約束は確かか」


















彼女の言葉にアスランは喉を鳴らすと、

















「ガルルルッ!!!」















と吠えた。
ビクリとして椅子に腰を下ろすジェイディスを見て、ナルニア軍の兵士達は大いに笑う。
ジェイディスはそのまま何も言わず、自分達の兵士を連れて引き返していった。

















「アスラン…」

、私は大丈夫だ。皆と一緒に喜びを分かち合いなさい」
















アスランはそう言うと、私を置いてテントに入ってしまった。
立ち尽くす私は、どうしようか考える。





みんなと喜びを分かち合いたいけど、そんな気分にもなれない…。


















様」


















その時、ヘラクスが声をかけてきた。彼は少し用があるといって私を連れて行く。
そしてナルニアのみんなが見えなくなった時、彼は私を乗るように促すと、一気に走り出した。



















「……何するの?」

「こっちに用があるんだ!」

















彼が向かう方向、それは…









ジェイディスが帰っていった方角!?



















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エドマンドが無事でしたね〜!
これから物語りは佳境になっていきますが
次でちょっと一波乱あります(笑)


2008/06/29








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