「アスランがいなくなったなんて、誰も信じられない」

「うん」

「信じたくない…けど…」

「本当のことなんだよね?」


















歯を食いしばったピーターを見上げる。
抱きしめられてるからこんなにも近い。



でも、オレイアスのときほど、胸はバックンバックンしなかった。
















「ああ、本当だ」















ピーターはそう言うと、私を離した。
はっと気付くと、エドマンドもオレイアスも私達を見つめていて恥ずかしくなる。



あっ、と思って赤くなっちゃった私とは違って、ピーターは堂々としていた。


















そのうち彼は、動じることなく、場に見合った行動をしていくことになる。
どんどんと王様になっていき、私とは遠い存在になっていくんだ。

















「どう…するべきか…」
















三人は地図を見下ろしている。
私はというと、そんな彼らを見守るばかりで何も意見できない。

















「兄さんが指揮を」

「…」

「軍の準備は整っている。兄さんなら出来る」

「無理だ」
















ピーターは否定するけど、エドマンドは唇を引き締めてピーターを見るときっぱり言う。



















「……アスランは信じてた」

「……」

「僕も信じる」
















彼の強い眼差しを受けて、ピーターは意を決したようだった。
深く頷くと空を見上げる。



















きらきらと輝く太陽はそ、の光りを一心に大地に注ぎ、私達を祝福しているようだった。












































































は待ってるべきだ!」

「いや!私も一緒に行く!」

















私達はテントの外で言い争っていた。一緒に行くと言うと、ピーターが大反対。
オレイアスもそれに加勢。私の味方はエドマンドだけだった。



















に何かあったら嫌だ」

「そうだ。がいなくなったら、大変なことになると言っただろう」


















ピーターは私自身のこと、オレイアスは私だけじゃなくて世界のこと。



それぞれ言ってくれてることはわかるし、ありがたいと思うよ。
でも、私だけ一人でどうしろって言うの?


















「一人で逃げたって、の姿が見当たらない途端、ジェイディスが追っ手をよこすと思う」
















エドマンドはそう言うと、私に頷いてくれた。
まるで、僕に任せてと言うように。


















「…それならば、護衛をつけよう。オレイアス、誰がいい?」

















ピーターはピリピリしている。
昨日の穏やかさは嘘のよう。




でも、自分が率いなきゃいけない兵士たち、守らなきゃいけない国。
全部が、彼の頭の中を渦巻いているのだろう。
オレイアスは、そんなピーターを眩しそうに見つめてから言う。

















「……つけるとしたら、ヘラクスしかいません」

















オレイアスは溜め息を吐いた。
きっと、自ら私に近づかないように指示したはずなのに、こんなことになっちゃうなんて思わなかったんだろう。



ピーターはヘラクスの名前を聞くと、オレイアスに向き合った。
その瞳は、何か考えている。



















「ヘラクスの他にはいないのか!」



















それがあまりにも強い口調だったので、オレイアスは少し驚いていた。
逆にエドマンドは「なるほど」という表情。


















「逃げ足も1番ですし、戦いも強い。彼がうってつけです」

















オレイアスは気を取り直して言った。



オレイアスったら、ヘラクスのことを厳しく叱ったり、こうやって推したりして…一体どう思ってるんだろ。


















「ねぇ、ヘラクスはピーターの大切な戦力だよ!私を逃がすために軍から引き抜くのはおかしいよ!それに私とヘラクスは、話しちゃダメなんでしょ」

「そんなことは言っていられない」


















オレイアスは強く言う。
けれど、ここで引き下がるわけにはいかなかった。





アスランがいないのに、私以外の誰がみんなを見守るって言うの?




















「でも…!私は守人なんでしょ?みんなを見守らなきゃ…」

「アスランの守人だ」

「でも、私はアスランを守れなかった」



















私がそう言うと、オレイアスは口をつぐんだ。でもすぐに強い瞳でこう言う。




















「ヘラクスにと逃げる準備を」




「だめだ!」

















え!?






決定しただろうと思われたオレイアスの言葉を、誰が遮ったと思う?

ピーターなんだよ。



















「ヘラクスと二人で逃げさせるわけにはいかない。は、エドが守れ」


















エドマンドはびっくりして兄を見た。


















「僕が?」

「ああ。僕たちが戦うのを、一緒に上から見守っていてくれ」


















ピーターはあっさり意見を変えると、ばつが悪そうにテントに入っていった。
私はオレイアスと顔を見合わせ、エドマンドを見る。


















「まあ、頑張るよ」

「よろしくね、エドマンド」

















もちろん守られてるばかりじゃないけど。




それにしても、ピーターったら何で意見変えたのかな?
ヘラクスのこと、そんなに嫌いだとか?
でも、昨日はヘラクスが友達か、とか言って笑ってたのに…。



















「う〜ん、何でピーターは意見変えたの?」

















エドマンドに聞くと、彼は苦笑して言う。


















は知らなくてもいいんじゃないかな。まだ」


















まだ?
いつかは知ることがあるのかな…?

















その時、オレイアスが「ああ!」という表情になった。
でも、すぐにしかめ面になる。



さしづめ、そんな理由でを危険な目に合わせるなんて…ということだろう。


















「まあ、オレイアスも観念してよ。僕がを守るからさ」
















エドマンドはくすくすと笑うと、私の肩とオレイアスの体を叩いて、ピーターの入ったテントに入って行った。




















「オレイアス、怒ってる?」


















一人残ったオレイアスを見上げて恐る恐る問う。
オレイアスは少し無言だったけど、ふと下を向いて私を見た。



















「絶対に戦いに加わらないように」


















彼はお父さんさながら言った。
私はびっくりして目をぱちぱちと見返す。




















「彼らは知っているのか?が剣で戦えることを」



















ちょっと考えてみたけど、二人は私がヘラクスと練習してたのを見てないし、知らないはず。




















「たぶん…知らないと思う」

「だろうな。が剣を扱えることと、何でもかんでも飛び出していってしまうことを知っていれば、戦いの場に立たせるなんてことはしないはずだ」



















あちゃー…やっぱり怒ってるよ〜。


















「反対されても、私は絶対に行くよ?」

「わかっている。ヘラクスと一緒に逃げるわけがない。

二人で敵を引き付けるだの話を合わせて、魔女の軍勢の後ろにひょっこり現れそうだ」



















その場面を想像しちゃったのか、オレイアスは頭が痛そうだった。



















「…じゃあ、なんでヘラクスと逃げることを提案したの?」

「それが一番いいと思ったのだが……。よく考えたら悪い方に向かうだろうと気付いたのだ」

「あ…あははは…」



















結局、私はみんなと一緒にいる方が危なくないってことだよね。


まあ、いいや。
オレイアスは頭痛そうだけど、ちゃんとわかってくれたみたいだし。



















「じゃあ、私も用意してくるね!」

「ああ…」


















私はそう声掛けると、自分のテントへ戻って行った。























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ちょっとヤキモチなピーター。
エドマンドはヒロインの味方をしてくれましたね!(笑)

次から戦いに入ります☆


2008/07/06








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