大地が大きく揺れて、私達が立っている場所は崩れさってしまうんじゃないかと思った。
足をすくませてる場合じゃないと思い、ジェイディス軍を睨み付ける。



でもそんなのは戦いに全く効果がないってことわかってる。
どうせ、私の姿なんて彼女には見えてないでしょうから。

















「!」
















そう思ったのに、あの魔女は私を見たの。
それも勝ち誇ったように笑って、腹が立つったりゃしない!



















「あいつ、目がいいんだ…。今、を見て笑ったよ」


















エドマンドが言ったのは、まさに私が思ってたことだった。



















「それも、意地悪くね!」



















私がぷんすか言うと、エドマンドは真剣な表情で見下ろした。


















「勝つ気、満々なんだろうね。

でも、そうはさせない…」

















ジェイディス軍の第一陣がナルニア軍まであと数百メートルというとこまで走って来た時、ピーターはまたこっちを見た。
エドマンドが頷くと、彼は掲げていた剣を振り下ろす。



すると、




















「キェーッ!」



















私達の後ろから、偵察隊がたくさん飛んで来た。
その足には、彼等の頭二周りくらいの大きさの石を掴んでいる。




















「やっちまえ!」



















ビーバーさんは体全体をつかって叫ぶ。エドマンドも期待を寄せて見つめた。















彼らは風を切って空の高い位置まで行くと、ジェイディス軍に石を落し始めた。

落下してくる石が地面を跳ね、敵軍は浮足立つ。
でも、あのミノタウロスは冷静に空を指差した。

















「空を見ろ!」

















その声に黒ドワーフ達が弓を引く。
瞬間、ビュンビュンという音と共に、偵察隊達は矢に貫かれて真っ逆さまに落ちていった。

















思わず、驚きで口に手を当てそうになるのを止める。

私こそ冷静にしてなきゃ。みんなの恐怖を煽り立てちゃだめだ。

















ギリと歯を噛み締めると、ピーターの背中を見る。
悔しい。誰ひとりも失いたくないのに、そういうわけにはいかない。
戦いってそういうものなんだ。

















オレイアスに目を移した時、横にヘラクスがいるのに気付く。
彼はオレイアスに耳打ちされていた。















一体何を話してるんだろう。















興味津々で見つめる。
すると、ヘラクスは私を見たの。目を細めて。


そして目が合った。

















「…」

















目が合ったことに驚いてると、彼は私よりもっと驚いていた。
すぐに目を逸らすと、オレイアスに耳打ちする。



オレイアスはそれを聞いて、もうあと数秒で命を賭けた戦いになるにも関わらず、ヘラクスを軽くポカンと叩いた。




















「っ…何やってるんだか!」



















思わずの呟きに、真剣な表情のエドマンドとビーバーさんに睨まれちゃった。






















ピーターがオレイアスに何か言ったと思ったら、オレイアスはゆっくり頷いて言葉を返す。

きっと、


「ついてきてくれるか?」

「命ある限り」


の場面じゃないかと思う。














するとピーターは、ヘラクスにも声を掛けた。
ヘラクスも頷くと、ピーターはくすりと笑う。
















ホントに、一体何を話してるんだろう?
















気になりつつ、彼等を見据える。



ピーターが、ゆっくりと剣を掲げた。
ゆっくりに見えたけど本当はもっと早いのかもしれない。
そう、あの映画の場面のように、動きがひとコマひとコマ強調するようにゆっくりと見えたの。























「ナルニアの―――、アスランのために!!!」























剣を掲げきった彼は、ナルニア軍全員に叫び放つ。






















「アスランのために!!!」






















兵士達から続けて放たれた声。
それは一丸となって空へ消えていく。



私はその声が、いつまでも彼らの中で続くことを願う。



















ずっと、消えることなく…


















そして、間もなく離れた私にもその衝撃が感じられる程に強く、両者はぶつかった。
























ピーターと白馬を先頭にして、左にオレイアス、右にヘラクス。その後ろはセントール。
間にひょうさん達が鋭い瞳と牙を構えている。他の動物達とフォーンはその後ろで槍を構えている。



















ドッドッドッドッ


















ここにいる全ての生き物の心臓が鳴るように、彼らは走る。
そして双方武器を構えて、ぶつかった。



























ドウン…





























胸がぎゅっと締めつけられた。
私の目にはその戦いの光景が焼き付けられる。その瞬間瞬間の動きが、私の心をやきもきさせた。






















「っ…」





















味方がやられ、敵が一歩深く進む。それを別の味方が阻止しようと躍起になる。
何かが起こる度に胸が締め付けられ、心が喘ぐ。
























こんなの嫌だ、こんなのは見たくない!























逃げたい気持ちが先行して、少し後ずさってしまった。
はっと気付いて周囲を見回すと、私の行動に気付いたのはエドマンドだけだったみたい。





















、手を繋ごう」





















彼はこう言ってくれた。
でも、私は私の意志でここにいるんだから、甘えちゃいけない。





















「ううん、大丈夫。ありがとうエドマンド。」

「いや…」



















彼はふと笑うと、すぐに戦いへ目を戻した。




戦いは依然、ナルニア軍が圧されていた。
数で戦うわけじゃないけど、やっぱり戦況を左右するのは数だ。




でもナルニア軍も負けじと押し返している。それを見て、ジェイディスが動き出した。






















後ろで待機していたジェイディスがが動き出すと、ピーターは今相手していた敵を切り捨てて周囲を見回した。
僅かに圧されてはいたけど、負けていないのを確認する。




エドマンドはそれを見て剣を振り上げる。





















「火を放て!」























私達と共に並んでいたセントールの女性の一人が、弓を握り弦を引く。




















キリキリキリキリ



















そこから絞られるような音がした後、ビュンと爽快に矢が放たれた。






























ゴオォ…
































放たれた矢は空中で火だるまになったかと思うと、鳥を形どった。
それは燃えるような朱色の羽を双方に伸ばし、風を切って飛び回る。















青い空に朱い鳥なんて、似合わなくて不思議。















鳥はそのまま降下すると、ナルニア軍とジェイディス軍を隔てる様に横切った。




















「あっ……!」






















その場所から突然火が燃え上がる。煌々と揚がる火は、本当に両群を隔てた。



















「ウオォ!!」


















それを見たナルニア軍が沸き立つ。
でも歓喜の声が上がった途端、ジェイディスが杖を振りかざして瞬く間に炎を消し去った。




















「くそ…」



















エドマンドの悔しそうな呟きが聞こえる。
他にも、セントールの女性達の小さな溜め息も聞こえた。












ピーターは再び周囲を見回すと、時期と悟ったのか命令を下した。

























「敵を岩場に誘い込め!!!」

「合図だ!」























ピーターの声にエドマンドも反応して私の手を取る。





















「行くよ、!」

「う、うん」





















私は岩場に向かう戦ってるみんなに気を取られながら走り出す。
見たところ、ピーターはもとより、オレイアスもヘラクスも無事のようだった。
それにホッとすると、今度こそエドマンドにちゃんとついて走り出した。

























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戦いの場面だから淡々と進んでしまう!!
うわーん、楽しくなくてごめんなさい!


2008/07/10









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