「絶対ブルーよ」
「うんブルーだね」
「私もブルーがいいと思うな」
「青は似合わないから勘弁して〜〜〜!」
スーザン、エドマンド、ルーシーは笑顔で『ブルー』と言った。
でも、私は青い服は似合わないの。
だから嫌なのに……
「ここまでくると、似合う似合わないは関係ないんだよ」
「そうよ。あなたが何故ブルーを着なければいけないかわかる?」
「えっ……」
正直、何で3人して青、青と言うのかわからなかった。
どうしてこんなことになってるのか、誰かに教えて欲しいくらい。
「わかんないよ。どうして?」
「……もう。
ルーシーはわかってるわよね?」
スーザンは私に呆れて、ルーシーの方を見た。
ルーシーはもちろん!って顔で笑う。
もう、そこまで言うんだったら教えてもらおうじゃない!!!
身構えると、スーザンはもっと大きな溜め息を吐くし、エドマンドまで額に右手を当てた。
「あなただから」
「私だから?」
「そう。自由を歌うナルニアで一番自由なのはアスランとだから」
「私とアスランが自由……?」
言っている意味が分からなかった。
でも彼らから見たらそうなるのかもしれない。
「ブルーは、広い空と生命の源の海を表している色だから。あなたはナルニアの象徴なのよ」
「ナルニアの象徴はアスランでしょ?」
アスランと言ったら赤と黄色のあの旗、と言おうとしたけどやめた。
だって、スーザンたらじっと真剣に私を見つめるんだもん。
「わかった。私、青のドレスを着ることにする」
「「「やったーーーー!!!」」」
渋々了解すると、さすが姉弟!声を合わせて喜びあったの。
私が青を着ることで、なんでそんなに嬉しいのかわからないけど、まあいっか。
だって、どうせ私には選択権がないんだもん。
「ねえ、」
「なあに?ルーシー」
短い溜め息を吐いたとこで、初めて出会ったときよりちょっとだけ背が伸びてお姉さんになったルーシーが私の裾を引っ張った。
彼女はにこにこと私を見つめている。
「あのね」
「うん」
「青って、ピーターも好きな色なの」
「……へえぇ」
気のない返事しか出来なかった。
だって、女の子がピンクを好むように、男の子も青が好きじゃない!
「あれ、知ってたの?」
「……ううん(そういうわけじゃないけど…)」
「よかったぁ」
にっこにこと笑うルーシーを見てたら、可愛くてしょうがない!!!
思わずぎゅうって抱きしめちゃったのは言うまでもない。
あの戦いから一年近く経ってしまって、私達はナルニアでの生活に慣れ親しんでいった。
四人は王、女王としての仕事をし、私は私の仕事をしたの。
私の仕事というのは、専らナルニア全土を見守るというものなんだけど…、とにかく色々な場所を旅してたの。
みんなとは別々の行動をしてた私だけど、たまーにケア・パラベルでどんなことがあったとか、誰ががこう言ったとかの噂は聞こえてきたんだよ。
とりわけ、ピーターがアーケン国との友好を重視していて、リューン国王と話し合いだとか言いながら、狩猟しに行ったりとかは日常茶飯事だったみたい。
私がアスランにナルニアに初めて連れて来てもらった時、ナルニアの初代王のフランク王様、ヘレン女王に会ったけど、アーケン国は彼らの二番目の息子が開拓した土地に建国されたんだよね。
だからきっと仲良くなれるって思ってた。
ずっと昔、ナルニアが始まった時からの血が敵対するわけがないもん!
そんなこんなで、ナルニア全土を見回ってお城に帰ってみると、ピーター以外の三人が待ち構えてた。
何ごとかと思って聞いてみると、ピーターが私をアーケン国に連れて行きたいって言ってるみたい。
でも、位を持たない私がスーザンやエドマンド、ルーシーを差し置いてアーケン国に一の王と一緒に行くなんておかしいじゃない!
そう反論しても、三人とも認めずににこにこしてるし…青いドレスを着て行けって言うし(ドレスを着ることは承諾しちゃったけど)
私はみんなと違って、ただの使用人のようなものなのに。
折れるしかないのかなぁ。
「そろそろ観念してくれないと、今日出発出来なくなるよ」
「本当!、ピーターと一緒に行ってきなよ」
「そうよ!!!二人っきりのデートじゃあるまいし、一部隊全員で行くと思えばいいじゃない」
それが嫌なのに…。
せっかく行くのなら、気ままに行きたいよ。
あ、でもアーケン国はナルニアじゃないから気ままには行けないよね。勝手に入ったら、不法侵入になっちゃう。
アーケン国に行くとしたら、やっぱりこうやっていくしかないんだ…。
「よし、じゃあ行く!」
「決まったぁ!」
私の決意を、エドマンドが盛り上げる様に跳びはねた。
そしてスーザンがこそこそとテーブルの方へ行くと、バサリとそれを広げたの。
「さあ、これを着なさい!」
…青いドレス。
どうしてそこまでこだわるんだろ。
行くと決めたら行動も早くしなきゃね。
ってことで、青いドレスを着て身なりも整えてみると、自分でも結構な貴婦人に見えた。
でもスーザン達と違って、私の髪の毛は黒いから微妙じゃないかな。
余計重たく見える気がする。
「やっぱり!の髪の毛なら絶対似合うと思ってたの!!」
スーザンが喜びを全面に出して言った。私はそれに驚いて振り向く。
「えっ?」
「本当よ、!似合う!」
でもルーシーも同じように似合うって言ってくれた。
すっごく嬉しい!
「クールでシュール。でも話したらこんなに可愛らしい貴婦人なんて、きっとしかいないわ」
「スーザン、照れちゃうよ」
「照れちゃいなさい。
さあ、出来上がったわよ、エド!」
スーザンがドアに向けて叫ぶと、ガチャリとドアを開けてエドマンドが入ってきた。
「姉さん、これはすごいよ!明けの明星みたいだ」
「でしょ!さあ、ピーターのとこに連れていって」
「うん!」
エドマンドは私の前で膝を着くと、上目遣いで私を見た。
「さあ、まいりましょう姫ぎみ」
彼はこう言うと、差し出した私の手を取って歩き出した。
「ところでエドマンド、さっきの『明けの明星』って」
「例えだよ、例え。最近そういうのを習ってるんだ」
そういえば四人とも、王・女王らしい振る舞いとかを習ってるんだったかな。
って、習っていない私は明らかに不利じゃないの?
これからリューン王に会いに行くのに!?
先が思いやられる……
「…明けの明星、絶対使い方間違ってると思うよ」
「バレなきゃいいんだよ」
もーっ!本人にばれてるじゃない!!!
私が膨れっ面を見せると、エドマンドは苦笑して「笑って」とジェスチャーした。
なんでジェスチャーなの?と怒ろうとしたその時、
「?」
前方から私の名前を呼ぶ声が。
「ピーター」
そこには、正装したピーターが立っていた。
きっと私を待っていたんだと思う。だって、彼の向こうには馬車が用意されてるんだもん。
「……そのドレス、よく似合ってるよ」
「あ、ありがとう」
微笑んでお礼を言うと、ピーターは満足そうに頷いた。
でも隣にいるエドマンドは不服そう。
「僕の時はお礼も言わなかったのに」
「だって、エドマンドは大げさなんだもん。でもピーターは私に嘘をつかないからいいの」
「信用されてるんだね、兄さん」
「まあな。
さ、、行こうか」
今度はピーターが私の前で膝を着いた。
でも、こんなの恐れ多い!
「ピ、ピーター!!!そんなことしないで!」
無理矢理立たせようとしたけど、彼は全然立ち上がってくれない。
私は、本当の貴婦人でもなんでもないのに―!
もう一度抗議しかけると、ピーターは私の手を取って立ち上がった。
そして恭しくお辞儀する。
「ここで僕がをエスコート出来なかったら、一の王である前に、騎士でも男でもなくなっちゃうんだよ。だから見栄くらい張らせて欲しい」
「……うん、わかった」
そこまで言われちゃったらこれ以上嫌だなんて言えない。
ピーターを男でもなくすなんて、私には出来ないもん。
私はピーターをじっと見つめると、ドレスの裾をつまんでお辞儀を返した。
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ここからは、妄想が妄想を呼ぶオリジナルの世界です。
苦手な方はこれ以上は読まないほうが身のためです(笑)
15年間を掻い摘んで複数話にしていきます^^
2008/08/06
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