たくさんの緑に囲まれながら、早過ぎず、遅すぎずと進んでいく。
今回アーケン国に行く人数は十人から二十人程度で、そんな多くはないみたい。
でも私から見れば、結構な人数だった。













それに、なんでこんな扱いなの!



















「ピーター、私も馬に乗る」

「だめだよ。は馬車だ」

「でも私、馬に乗れるよ」

「そのドレスじゃ乗れないだろう?」


















ピーターはくすくすと笑うと、私を上から下まで見回した。
あ、確かに。このドレスじゃあ馬に跨がれない。

















「そういうことだよ」
















ピーターはそう言って馬車のドアを開け、私に入るように促した。

















「このドレスじゃ、何かあっても一緒に戦えないね」

「大丈夫。今回の目的はアーケン国訪問で戦いじゃない」

「そうだけど…何かあったら…」

「その時は、僕が戦うよ」
















ピーターはそう言って私を馬車に押し込めドアを閉めると、自分は馬に跨がった。

















「道中はたくさん話をしよう。の旅とか、僕たちのこととか」

「うん!」

















ちょっと心配だけど、きっと楽しいことが待ってるって期待で私の心はいっぱいになった。




















































は一人で旅して、何事もなかったかい?」

「うん。行く先ざきで皆が助けてくれるんだ。だから大丈夫!」

「そっか、僕らみんな心配してたんだ。ナルニア国内だから大丈夫だろうけど…、は泣き虫なとこがあるからね」

「ピーターったら!」

















彼の言葉に馬車越しに膨れてみせる。するとピーターは嬉しそうに笑った。
男の子って、女の子が怒ると楽しいみたいだよね。


















「ヘラクスがセントールの女の子を助けたって話を聞いたかい?」

「ううん、聞いてない。助けたって…何かあったの?」

「ああ、悪い巨人が出て来てね、水浴びしていたその娘に襲いかかったんだ」

「うんうん」

「でも、ちょうどそこにヘラクスが通り掛かって助けたってわけ。

その後が面白いんだけどさ…」
















ピーターはクスクスと笑う。きっと思い出し笑いだね。






続きが気になる。
だってヘラクスったら本物の王子様みたいな容姿なのに、(ピーターもエドマンドも言ってた)全然女の子のウワサがないんだもん。


彼には星を読む力がないからモテないのかもしれない。
本当のとこはセントールじゃないからわかんないけど。















「彼はいつも通り、最初に紳士的な態度で接したらしいんだ。そしたら女の子がやけに喜んじゃってベタベタしてきたんだって。それで嫌になって本性を出したんだそうなんだけど…」














ピーターは含み笑いをした。
もう、その後が気になるのに!















「そのギャップに更に惚れられて、ケア・パラベルまでベタベタされながら連れて帰ってくるはめになったんだよ」

「あはは!そうなの?あのギャップに惚れちゃうなんてもの好きな女の子だね!」

「ああ。

本当はスーザンの命でを捜しに行ったのに、違う女の子を連れ帰ってくるもんだから、大目玉くらって。

ヘラクスは今スーザンの目が届かないとこにいるよ」

「もーおかしーっ!それって災難ー!」

「だろう!」















私達はクスクス笑い合うと、ヘラクスの疲れた顔を思い浮かべた。
きっと彼からすれば、女の子なんてめんどくさいから浮いた話がないのかも。


































笑いが止むと、ピーターは真剣な表情で私を見た。
一体、なんの話だろう。

ドキドキしながら見返すと、ピーターは一息吐いて話し出す。

















「アスランには、会ったかい?」

「ううん、会ってないよ」

「そっか」

「うん…」
















会えなかったことがどんなに寂しかったか。

会えなかったことがどんなに心細かったか。















私がナルニア全土を旅したのはアスランを探そうとしてたのかもしれない。
彼はナルニアにはいないかもしれないのに。一縷の望みを賭けてね。

結局彼には会えなかったけど、その分たくさんのナルニア人に会えたし、助けてもらった。
私も、大人になったかもね。
















?」

「あ、ごめん。色々考えてて。

アスランはもうナルニアにはいないかもね。ピーター達も見てないでしょ?」

「ああ。僕たちの前にも現れない。が見てないなら、ナルニアにはもういないだろうね」















ピーターはにっこり微笑むと、お付きで来ているみんなに休憩にしようと声を掛けた。

私なんかは馬車に乗ってて気付かないけど、彼は色々見てるんだ。
周囲を把握して、ちゃんと王様してる。




私達は何度か休憩を取りながら森の中を進んで行った。
次第に木々が少なくなり、岩肌が見えるようになってきた。
しばらく歩くと峠が現れ、圧倒される。















「すごい峠…」

「ここを越えればすぐにアーケン国に着く。、気を引きしめるんだ」

「え、うん」

「よし、じゃあ行こう」















彼の言った気を引きしめるが最初、何が何だかわからなかったけど、進むにつれて理解できた。
















「いたっ…あいたっ…」














道が悪くて、馬車がすごく揺れる。
寄り掛かってた壁に頭がぶつかって、痛いのなんの!















「大丈夫かい?」

「う、うん…」

「あはは、大丈夫じゃなさそうだ」














ピーターは頭を押さえてる私を見て口を開けて笑う。
もう、他人事だと思って。





そのガタガタが一時間程続いて、もう慣れて来たと思った頃、やっと柔らかな草が生えそろう場所へと移った。
ピーターは私が生きてるかどうか確かめるがごとく、場所の中を覗いてきた。
















「生きてるよ」

「よかった。に何かあったら、アスランに申し訳が立たない」

「うそつき」

「嘘じゃないって……あ」














ピーターの途切れた言葉と共に馬車が停まる。
何かと思ってドアに手を掛けた時、それが思いきり引かれた。
















「きゃ」

「!」















バランスを崩してドアを開けた人に倒れ込む。
すると、その人はなんとか私の体を支えてくれた。
















「びっくりしたー」

「すみません、














パッと目を開けると、私を支えた人が目に入る。
でも彼って家に帰ったんじゃなかったの?

















「タムナスさん!」

「久しぶりです、。お元気そうで何より」

「タムナスさんこそ。今日はピーターの付き添い?」














そう聞くと、彼は少し黙り込んで考える。そして顔をあげて私を見た。















「一の王の付き添いというよりか…、あなたのお守りですね」

「えーっ!」

「ルーシーに頼まれたんです」













照れ笑いする赤ら顔が妙に可愛かった。
こんなんでお守りだなんて、大丈夫なのかなぁ。















「あなたのお守り、精一杯努めさせてもらいますよ!」
















俄然彼はやる気だし。
でも何をやらかすかわからない私が彼に付き添われてるのはいいことだよね。
きっと、貴婦人の振る舞いも教えてくれるかもしれない。

















「うん、よろしくね!

っっと、ピーター?」

「どうぞお手を、姫ぎみ」
















彼は馬車に足をつきつつ、体をタムナスさんに支えてもらってる私に手を出してくれた。
そこに自分の手を乗せてしゃんと立つと、ゆっくり馬車を下りる。




目の前には大きな門。
白く古い壁に囲まれた、大きすぎず小さくはない城壁。
見上げると塔がいくつも立ち、アーケン国の旗をたなびかせている。

















「ついたよ、アンバード城だ」















ピーターの声が、右から左へを通り過ぎていった。




















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アーケン国到着☆
馬と少年の前置き的な話ですね^^
タムナスさんも登場して、ちょっと賑やかになってきました!


2008/08/07





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