高台に建ったアンバード城は、ケア・パラベルほど美しくはなかった。
けれども、民を守るために堅固に造られ、大きな城門は戦争の時に大きな役目を果たすと思う。
白肌の壁は年月に比例して古くなってはいたけれど、未だアーケン国の民達を守るために毅然とそびえている。













「素晴らしいお城だろう」

「うん。敵の襲来に備えて建てられてるんだね」

「ああ、そうだね。アーケン国は、北はナルニアの白い魔女、南はカロールメンに挟まれていたからこんな造りになったんだろう。

まあ、アンバードはアンバードで、ケア・パラベルとは違う良さがあるよ」












呟くように言ったピーターへ簡単にあいずちを打って、門の中を見た。




あれ?人がたくさん。















「アンバードっていつも、道端にあんなにたくさん人達がいるの?そしたらなんか、毎日お祭りだね」

「毎日お祭り…?うわっ…」














ピーターも門の中を見て大層驚いたみたい。
















「パレードかな…、そんな話は聞いてなかったんだけど」

「そうなの?でも私達が来るって知ってるんでしょ?」

「ああ、それは…。何をやってるのか聞いてみよう。

タムナス!」















ピーターはタムナスさんを呼んで、見て来てもらうように頼んだ。
私も行く、と言うとタムナスさんは首を横に振る。
















「だめです。何かあったら私ではあなたを守りきれませんから」

















きっぱり断られた。
けど、何かあるとは限らないじゃない!なーんて言い返さなかったけど。
















「前来た時に、何かお祭りしそうな気配はなかったの?」

「うーん、どうだったかな」

「ピーター、王様でしょ!思い出して」

「それって、王様は関係ないよ」

「いいの!ほら、思い出してよ」
















悩むピーターに声援を送りながら、私はタムナスさんの帰りを待った。
ピーターは思い出さなそうだし、早くタムナスさんが帰ってくれば、それだけ現状がわかるもんね。



そう思ってるうちに、タムナスさんは嬉しそうな表情で戻ってきた。
















「どうだった?」

「素晴らしいことが起こった後に立ち寄れるなんて、とても幸せなことです!」

「どうしたの?アンバードで何がおこってるの?」
















気持ちを高ぶらせて踊る彼の手を取って、諭すように言う。
すると、タムナスさんは喜びを噛み締めた表情で話してくれた。

















「数時間前、双子の王子が産まれたようです!」

















「ええっ!」

「それはすごい!」
















私達ったら、すごいタイミングで来ちゃったんだ。
それなら城下町がお祭り騒ぎなのがわかるよ。


















「それは大変!とって帰って、お祝いの品を持ってきた方がいいんじゃない?」

「いえいえ、品は後でも、先にお祝いを申し上げた方がいいでしょう」

















タムナスさんがそう言うなら、そっちの方がいいよね。
確かに、ここまで来てお祝いの言葉も言わずに帰ったら、かなりあやしいし。


















「そうだな。とりあえず挨拶しに行こう」

















私達は馬車を置き去りにして、最小人数でお城に向かった。
だって、城下はお祭りモードで馬車が通れないんだもん






























住民達も門番達もみんながみんな盛り上がっていて、今のアンバードが攻め込まれたら一発で落とされそうだった。



門番達は私達がナルニアの者だと言うと簡単に通してくれたし!



さすがに城内は案内役がついて(ピーターがナルニアの王だって知ってる人ね)リューン王のところに案内してくれた。
謁見の間なんて通り過ぎて、王様達の寝所も通り過ぎる。















私は道中楽しい話ばっかりして、リューン王とかのアーケン国についての勉強を怠ったことを思い出したの。
慌てて一番前を歩くピーターと離れ、後ろのタムナスさんの横につく。
彼は不思議そうに私を見て、くすくすと笑った。















「リューン王のことを聞きにきましたね?」

「う…なんでわかったの?」

が考えそうですからね。あの四方はそのような勉強をされてますが、あなたは旅をしていて勉強していません」

「…そうなの。だから心配で。リューン王がどんな方だということだけでいいの。教えて?」















両手を合わせて頼むと、タムナスさんはわかりました!と胸をひとたたきして噎せてしまった。

















「ゴホン、えー、リューン王は血の気盛んな豪快な方です。ですから戦いと聞くと、嬉しそうですね。

狩猟も得意です。ええ、我が一の王も負けていませんぞ?」

「今の王は血の気盛んなんだ…」

「今の?」

「あ、ごめん。なんでもないよ」















口を滑らした私は両手を振って否定した。
だって、過去を知ってたとしても未来を知っているなんて知ったら、いい気分じゃないもんね。




確かリューン王は、優しいお父さんだって書いてあった。
王妃の名前はわからないけど、息子はコルとコーリンだったよね。


















、王の御前に着きますよ。戻った方が」

「あ、うん」
















ピーターの横に戻ろうと足を踏み出した時、一番前では

「ナルニアの一の王ピーター王がお着きです」

との声でドアが開いたとこだった。

















「おお!ピーター王!」

「リューン王、この度はおめでとうございます!」

「ありがとう。いやはや、この様な時に訪れるなど、そなた達はタイミングが良い。それは私もだな。

ところで、彼女を連れて来られたか」
















ピーターの横に戻りにくくなって、私はその場で立ちすくんだ。
一体何を話しているのか、よく聞こえない。
















「連れてきました。

もしかして、リューン王も御子が産まれるからと予想して私に頼まれたのでは?」

「はっはっは、そういうわけではない」















二人は笑ってるみたい。
















「では、お目にかけましょう。……あれ、いないぞ」















ピーターに呼ばれた気がした。
というかそうみたい。だって、みんながみんな私を見たもん。















「はい、ここにいます!」















お付きのナルニア人を掻き分けながら、私はピーターのところにいった。
彼はホッとした表情になると、私を自分の前に押し出した。


















です。宜しくお願いします」

















にっこりと笑ってお辞儀をする。
昨日の夜、お辞儀だけはってスーザンに叩き込んでもらったんだ。

















「こちらこそ、。私がリューン、あそこにいるのが王妃と子供達だ」
















はっとそちらを見ると、疲れきった顔で微笑みをたたえながらこちらを見ている女性がいた。














やだ!ここって、私達が来るような場所じゃ…
















「大丈夫ですよ、。私がこんな恰好で申し訳ないくらい。申し遅れましたが、王妃メリンダです」














私が思ったこと、顔に出ちゃったみたい。
だって王妃様がくすくす笑うんだもん。














「あ…はい。はじめまして、メリンダ王妃」

「そんな堅苦しくなさらないで。ほら、王。に頼みがあるのでしょう?」















優しく微笑んだメリンダ王妃は、リューン王よりも五つか六つくらい年下に見えた。
彼女は疲れているのにも関わらず、弾むような声でリューン王をせき立てる。

リューン王は王妃にせき立てられると、コホンと咳ばらいをして子供達を抱きすくめる。
そしてその足で私とピーターの前に来ると、ひざまずいた。
















「リューン王!何をされている!」















ピーターが驚いて彼を立たせようとしたが、彼は立ち上がらない。
そのまま私を見上げたの。
















真っ直ぐな瞳、深く広い海のような瞳。
でも、その奥に燃えたぎる炎が見えかくれしている。


夜明けに浮かぼうとしている日差しのような暖かな意思を感じ、彼に微笑みかける。

















「リューン王。そして王妃。私にはあなた方が望むような力はありません」
















言葉が自然に出て来た。きっとアスランのせいだ。
どこかで私の口を操作しているのかもしれない。
だって、彼らが私に頼みたいことが、私は何故かわかったんだもん。




でも、私は未来を知ってることは隠したいの。
だから王と王妃、あなた達が望んでいることを為すことは出来ない。

ごめんなさい。でも、



















「せめても、私の力として…あなた方が本当に望んでいるものを与えます」


















私には荷が重過ぎるから…、だから、せめて私がこの世界にいたとしても本の通りに。

















「我らが望むものを?」

「はい」

「では、仰せの通りに。アスランの守人よ」
















私は彼が抱く赤ん坊のおでこに軽いキスをし、そして…


















「兄はコル、弟はコーリンと名乗るとよいでしょう」

















そう言い放ってみた。
場の雰囲気がそうさせたっていうか、私なんて言い放つようなキャラじゃないんだけどね。


















「おお!!!」
「まさかそんな!」


















王と王妃は同時に驚きの声を上げた。
王は立ち上がり、王妃の元に駆け寄ると、赤ん坊を一緒に抱きしめる。


















「私達が考えていた名をつけてもらえるとは夢にも思わなんだ」

「おお、王よ。こそ創世の時代にアスランとおられた方なのでしょう。まさしくアスランの守人です!」


















二人は思った以上に感激してしまい、手をつけられない状態になってしまう。



ちょっと、やり過ぎたかな。


















「ピーター、助けて」



















小声で彼に助けを求めるけど、ピーターは答えない。
不思議に思って見上げると、何故か彼は複雑そうな表情で私を見ていた。

















そんな表情を向けられたら不安になっちゃうよ。
















思わず私は、不安に見返してしまった。



















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馬と少年の話の、まあ土台みたいなものです(笑)
まだ続きます^^


2008/08/10






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