あれから数年、誰もが大人になっていく。
ピーターもスーザンも、エドマンドもルーシーも王・女王らしい貫禄が出て来たし、オレイアスは前より落ち着きが出て渋くなった。
それに、今私を背中に乗せて走ってるヘラクスもがっしりと大人っぽくなった。
まあ、他の人の前でも素の自分で接するようになって、紳士的じゃなくなっちゃったけどね。
「は、相変わらずだな」
「え、何いきなり?」
「変わらないって言ったんだ」
ほら、また言われる。
本当は嫌なの。
変わらないことはもうわかってるから、言わないで欲しい。
「そう…だよね」
「まあ、変わらないからよかったな」
「へ?なんで?」
「教えるか!」
「あなたも相変わらず意地悪だよね」
「俺は一生意地悪のままだぜ」
さ、着いたという言葉と共に、彼の足は止まった。そして私もおろされる。
「いつ見てもきれいね」
「だろ?もここに住めばいいじゃんか」
「でも…」
はっきり言って、セントールの中で暮らす自信はない。
生活がどう違うのかはわからないけど、体の作りも違うし…なにより彼らは堅苦しい。
それに、きっと不便な点がたくさんありそうだもん。
「あーあ、フラれた〜」
「何を言っている!」
ドカリと殴られるヘラクスと、その殴った張本人のオレイアス。
今でこそそれが普通だから何とも思わないけど、最初見た時は白い魔女との戦闘直前に殴るから、驚いたなぁ。
「殴るなよ!」
「そこにお前の頭があるから悪いのだろう」
オレイアスは適当な理由をこじつけると、私の前で膝を折った。
そして頭を下げる。
「ようこそ、セントールの谷へ」
「お出迎えありがとう。まさか新郎さんが出迎えてくれるなんて思わなかったよ」
「シンロウさん…?」
オレイアスの代わりに、ヘラクスが疑問を表した。
そうだそうだ、ここでは新郎なんて言葉ないよね。
「今日結婚する人のこと。お婿さんね」
「へえ」
「いや、本当はキャサリアと一緒に出迎える予定だったのだが……、に贈られたドレスを着るのと飾りつけるのに時間がかかってしまってな…」
オレイアスは苦笑すると、谷の入口を見た。
なんだかとっても嬉しそう。
……よかったなぁ。
「いいじゃないの!女の子のおめかしって時間かかるんだよ!だから私のお迎えなんていいの」
「すまない」
「ううん、キャシーのウェディングドレス姿楽しみ!」
にっこり笑ってみせると、オレイアスはホッと胸を撫で下ろした。
さすがのオレイアスも、今日は新郎さんだから落ち着かないみたいだね。
「立ち話もなんだろ?中に入れよ。
オレイアス、お前はあっちだろ!」
ヘラクスは私の腕をぐいぐい引っ張ると、オレイアスを置いてさっさと中に入ってしまった。
それから花嫁さんの支度が出来るまで待って…と思ってたのに、案の定支度中のキャシーに呼ばれてしまう。
慣れないドレスに苦戦してる彼女を助けるために、楽しみにしてたウェディングドレス姿を先に見なきゃいけないのを残念に思った。
「キャシー」
「ちゃん!!!」
助かったとばかりに、キャシーは笑顔を浮かべた。
そして純白のドレスを持ちながら私に抱き着く。
「こらこら!花嫁さん、抱き着いてる場合じゃないでしょ!どこがわかんないの?」
「ドレスの着方が…ひらひらしていて難しくて」
「ああ、ちゃんと説明したじゃない!さあ、他のみんなも手伝って!」
キャシーと同じようにドレスの着方で戸惑っていたセントールの女性達を追い立てる。
「これはこう、それは…」
ドタバタと着付けて、なんとか花嫁らしくなった彼女の髪をとかしてヴェールをつける。
これで本物の花嫁さんだ!
「カワイイ!これならオレイアスも惚れ直すね!」
「ホント?ありがとうちゃん!」
ウェディングドレス姿が、いつも以上にキャシーのほんわか具合を引き上げる。
ふわふわした雰囲気に纏われて私も思わず微笑んで…なんだか幸せになっちゃう。
いいなぁ、花嫁さん。
「さあ、一世一代の大仕事だよ!」
「いっせいいちだい?」
「ま、幸せになりなさいってこと!」
「うん!」
キャシーは実は私と同い年。
だから多分18歳だか20歳だかだと思う。
魔女との戦いは出陣してないの。彼女を戦わせようなんて、誰も思わないんじゃないかな。
そのぐらいマイペースでのんびりしてるの。
私達が仲良くなったのは、お城に見習い?みたいなので入ってた彼女が、あんまりにもドジっ子だから気になって声を掛けた時から。
私よりドジっ子なんて、初めてだよ。
それからは何でも頼りにされちゃって……、
最初ヘラクスがカッコイイって言ってたわりには(そうそう、初めてアーケン国に行くときにピーターが話してたヘラクスが助けた女の子がキャシーなんだ)、いつの間にか目線はオレイアスを追ってて。
バレバレだよ?って聞いたら、真っ赤な顔で「私、オレイアスが好きなの!」と騒いでくれた。
その頃の私は、ちょうどみんなとの違いを実際に気付いた頃で……、何もかもうまくいかないと思ったの。
自分がオレイアスに恋をしているのは気付いたけど、なにしろ私は人で、オレイアスはセントール。
好きだなんて言ったって彼が困るだけだから。
だから私は自分の心を奥深くしまって、快くまではいかないけど、キャシーの恋を応援してあげられるようになったんだ。
それからは二人でアタックしまくって、(ちょっと辛かったけど)キャシーとオレイアスが一緒になるとこまでこぎつけたわけなんだよね。
もしかして私って、健気な女の子かな?
「帰ったかー、」
「うん。楽しみにしてた花嫁姿を先に見ちゃったよー」
ヘラクスに泣き真似して言うと、よしよしと慰めてくれた。
よしよしっていうか、ぺしぺしって感じだけど。
「じゃ、行くか」
「うん」
準備も終わって儀式が始まるってことで、私とヘラクスは二人の元に向かった。
儀式の場は峡谷のようなとこで、きっとその場から峡谷の向こうに見える星を読んだら、素敵だろうと思う。
私がそんなことを考えてたら、隣の女性が「あそこは星読みの場と言うんです」と教えてくれた。
そんな場所に二人は立っていた。
神秘的な雰囲気で始まり、星のことばとかいうおまじないのようなものが述べられ、二人の手が合わせられる。
いいな…
そんな事を思ってると、ヘラクスが急に手を掴んできた。
びっくりして声を上げそうになるのを、寸前で止める。
「…なにしてるの?」
「いや、いいなあって思ったら手が勝手に」
「もう、しょうがないなぁ」
確かに羨ましいもんね。
私は手をそのままにして、また二人を見つめた。
「は、結婚しないのか?」
「!?」
ぽつりと呟かれた言葉に驚いて、また寸前で止める。
「何言ってるの!」
「ピーター王あたりと結婚するのかと思ってな」
「!!!」
驚き過ぎて声も出なかった。
だいたい、なんでピーターなのかな。
「しません!私は結婚はしないの」
「ふーん、そっか」
満足した答えが聞けたのか、ヘラクスは二回ほど頷いて正面を見た。
その時、
「何故手を繋いでいるんだ?」
やけに震えた声が聞こえて振り向く。するとそこには、
「ピーター!」
いないはずのピーターがいたの。その後ろにはニコニコしたスーザン。
「なんで?私、今日の結婚式のこと言ってないのに」
「何故かエドマンドが知ってたのよ。私達はさっき、初めて聞いたの」
「あ、俺が言ったなそれ」
ヘラクスが顔をポリポリ掻きながら言った。
口が軽いんだから。
「やっぱりね。ヘラクスとエドマンドは仲良いものね」
「もー、ヘラクス!」
「いいじゃんか、絶対盛り上がるぜこの後」
ヘラクスのカラカラ笑いに、せっかく秘密にしてた自分に溜め息が出る。
「そうみたいね。なんかイベントをたくさん考えてたみたいだったわよ」
「エドマンドはそういうの得意だもんね。
静かな結婚式させてあげたかったけど、こうなったら盛り上がるしかないよね」
「も楽しいの好きよね。
…あら、ピーター?」
スーザンは無言でわなわな震えてるピーターを呼んだ。
「さっさとその手を離せ!」
ピーターは無理矢理私とヘラクスの手を引き離した。
手を繋ぐの、そんなに変なことじゃないと思うんだけど。
「どうしたの、ピーター」
じっと見上げて(彼の背はかなり高くなっていたので)聞くと、彼はうっと詰まった表情で私を見つめ返した。
そして
「僕は、ヘラクスと繋ぎたかったんだ!!!」
と言った。(それも強く)
「ええっ!!」
ピーターってヘラクスのこと…?
私が目を白黒させてると、ピーターが愕然とした顔で目を泳がせた。
スーザンは呆れてるし、ヘラクスは声を出さないで大笑いしてる。
「ピーター王、素直にならないとな」
ヘラクスは笑いながら私の手をピーターに繋がせた。そして自分は反対の手を繋ぐ。
「あんたはそっち、俺はこっち。半分ずつだぞ。いーだろ?」
「…しかたないな」
ピーターは右手だ顔を覆うと、恥ずかしそうに言った。
この後、オレイアスの結婚式は大盛り上がりだった。
エドマンドがルーシーと一緒にたくさんのイベントをやってくれたからね。
今日は楽しかったし、オレイアスもキャシーも幸せそうだからよかったな。
*************
オレイアスの結婚式は終わりです。完全なるオリジナルなので、苦手な方ごめん
なさいね。
でも、もう少し続きます(笑)
2008/07/28
37話へ