何が大丈夫なんだろう?
そう思いながら、遠慮がちに扉を叩く。
すると、中からまたタムナスさんの声が聞こえた。
「誰かお客ですね。ルーシー、開けてもらえますか?」
「もちろん。ビーバーさんかもしれないわ!」
にっこり微笑んだだろう彼女には申し訳なかった。
だって、ビーバーさんじゃなくて私だもん。
ガチャ
ドアノブが回され、ギイイと軋んだ音を立てて扉が開く。
にこにこしたルーシーが出て来て私と目が合った時、彼女はどんな顔したと思う?
「!!」
「はい、だよ」
悲しそうな表情をしたの。
ルーシーはそれほどまでにここに来てほしくなかったんだね。
でも、その表情の理由はすぐに解けた。だって、彼女が聞いてきたから。
「スーザンのおつかい?」
「ううん違うよ。たまには会いにこようと思って」
「…そっか!」
私の言葉を聞くと、途端に明るい表情にもどったルーシー。
ごめん、ちょっとうそついてる。
「タムナスさん、が来たよ」
「がですか!」
心なしかタムナスさんの声も弾んでてちょっと嬉しくなった。
まあ、罪悪感が増したけどね。
「タムナスさん、風邪ひいてるの」
「そうなの?ルーシーったら、なんでそれをスーザンに言わないの」
「だって…」
ルーシーはしゅんとすると、無言でタムナスさんの元に駆けていった。
私もそれに着いていくと、熱があるのか顔の赤いタナムスさんが迎えてくれる。
「、いらっしゃい。すみません、こんな姿で」
「ううん、気にしないで。具合は大丈夫なの?」
「ええ、ルーシーが来てくれてからは楽になりました」
「それはよかった」
そう言うと、ルーシーはホッとしたように緊張をとく。
そしてタムナスさんに何か食べたいものはないか聞いていた。
「私も何か手伝う」
「ありがとう、」
二人でキッチンに入ると、並んで材料を物色し始めた。
私はルーシーに聞きたいことがあったの。
…私が思うに、ルーシーはタムナスさんが好きなんじゃないかって思って。
たぶん、スーザンも同じ事思ってる。だから聞きたかったんだよね。
卵を使った軽い食事を作って、タムナスさんに出してあげる。
そんなことをしつつ、なかなかルーシーに聞けない。
でも、食器を片す段階でやっと気持ちが固まってきた。
聞くぞ…
聞くぞ…!
「ねえ、ルーシー」
「ん、なあに?」
「ルーシーって、タムナスさん好き?」
「好き。も好きでしょう?」
「……うん」
ああー……、これは友達の好きだね。失敗した。
「私、外でお花摘んでくる。はタムナスさんをお願いね」
「え、うん」
ルーシーは突然そう言うと、小屋を出ていってしまう。
そのことに目をしばたたかせて何とか返事をした私は、しょうがなくタムナスさんの元に戻った。
「ルーシーは?」
「お花を摘み行くって」
「ああ、そうですか」
タムナスさんは私から視線を外して窓を見た。そこには一輪挿しが淋しく置いてある。
そっか、あそこに飾るお花が必要なんだ。
私が一人納得してると、タムナスさんは私の手を握った。
「」
「…何かな?」
ちょっとびっくりしたけど、なんとか冷静に返事が出来た。
でも、一体なんだろう。
「ルーシーはどんどん大人になって、美しくなっていきます」
「う、うん」
私は全く変わらないって言いたいなかなぁ。
「私は、それについていけないのです」
「へ?」
あまりにも遠回しな言い方すぎて、私には意味がわからなかった。
でも、もしかしたらと思って…
「タムナスさんてもしかして、ルーシーを?」
熱で赤くなった頬っぺたをさらに赤くさせて、タムナスさんは目を泳がせた。
それを見ただけで一目瞭然なのに、彼はこう言ったの。
「とんでもない!」
「…何がとんでもないんだか」
私がボソリと呟いたのが聞こえたのか聞こえなかったのかよくわからないけど…。
風邪を引いてるけどあの戦いのときよりずっと逞しくなったタムナスさんだって、そうほっとかれるような男性フォーンでもないだろうし。
まあ、ルーシーはかわいいから好きになっちゃうのもしょうがないかな。
何しろ、小さい時から仲がいいもんね!
それに、今ではルーシーだけがタムナスさんのところに訪れる。
他の三人は王様だからって言って…なかなかお城から出ないもん。
「恋、いいよね」
「も恋してるのですか?」
小さな呟きが聞かれると思ってなかったからびっくり!
目を真ん丸くしてタムナスさんを見ると、彼はにこにこと優しい表情でこちらを見ていた。
「……私は、恋することを捨てたの」
「何故ですか?」
「だって私、みんなと違ってずっと15歳だもん」
「まあ、言われればそうですね」
タムナスさんはまじまじと私を見る。
「確かに見た目はあの時のままですが、中身は確実に大人になってます」
「そ、そうかな?」
「はい。あなたは考え過ぎなんですよ」
考え過ぎ。
ずーーっと前にアスランにも言われた。
でも、こうやって考え過ぎるようなこと言ったのはアスランだし。
そんな言葉で片付けられちゃうなら、こんなに悩んだりしないよ。
…でも、見た目が変わらないなら変わらないで最初に割り切っちゃえば、こんな考え過ぎなかったかもしれない。
「もっと、楽に行きましょう。昔、ルーシーに聞いたことがあります。
アキヘヤの向こうのあなたたちの世界は、ナルニア人のような喋るケモノはいないのでしょう?
いないものがいる世界で、あなた一人の見た目が変わらなくても、誰も気に留めたりしませんよ」
目からウロコが落ちました!
って例えだけどね。
そんな考え方したことなかったよ。
「そっかぁ…
そうだよね!」
「はい。そうですよ」
その時、タムナスさんの耳がピクピクと動く。彼はドアの方を見て微笑んだ。
「ルーシーが帰ってきたようですね」
ガチャという音と共に現れたルーシー。彼女は一輪挿しの花瓶だということを忘れて両手いっぱいに花を抱えてきた。
私とタムナスさんは笑い合うと、再びルーシーを見る。すると、タナムスさんが突然ルーシーに問い掛けた。
「ルーシーにはが何歳に見えますか?」
「え?25歳くらいでしょ?だって、ったら大人なんだもの」
「!」
びっくりしたよ。
そりゃ、まあ、どう思ってるかなんて聞いたことなかったけどね。
ルーシーがそう思ってたなんて。私は見た目なんかルーシーよりももっともっと下に見える。
「ほうら。わかる人にはわかるんですよ」
「……ほんと!」
私はもう、嬉しくて嬉しくてしょうがなくなっちゃって。
えへへ。
こんなハッピーを教えてくれたタムナスさんに、抱き着いちゃった!
「タムナスさん大好き!」
ぎゅーって彼を抱きしめるとなんか、ルーシーに怒られちゃった。
あれ?と思ってルーシーの名前を呼ぶけど、彼女はそっぽを向いて「タムナスさんは風邪ひいてるでしょ!」と言うだけ。
まさか、もしかしたらもしかしてなのかな……?
私はタムナスさんに抱き着いちゃったお詫びをすると、早々に退散した。
*************
もしかしたらもしかしてな話でした(笑)
この後、馬のジョージはちゃんと待っていてくれたようです。
それも花を摘みにいったルーシーにがどんな人か聞いて、帰りはを誇らしげに背中に乗せていたそうですよ(笑)
2008/08/01
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