アスランはニコニコ笑いながら(私にはそう見えるんだけど…)他のもの言う動物達や不思議な妖精達と何かを話していた。
私は何もする事がないので、今まさに生えたばかりの草むらに寝転がった。
本当に生えたばかりの草むらに寝転がる女の子なんて世界中どこを探しても私だけかもしれない!!!
私は嬉しくなると、寝転がるのをやめて立ち上がった。
そしてもの言う動物達に近づくと、彼らのお喋りに入っていった。
うさぎさんやくまさんとお話したり、小人さん達の作業を見たり、ドリアードやバッカス達と踊ったりしたの。
それはそれは楽しい時間で、学校で友達と喋ってるときくらいテンションあがっちゃった!!
でもね、一番楽しかったのはナルニアで一番最初に笑いの種になったカラスくんとお喋りした時!!
ふふ、話が噛み合ってないばかりか見当違いなことばかり私にしてきて、なんだかとっても可笑しかった。
「ポリーとディゴリー、大丈夫かな。」
呟くと、空を見上げる。
私の心を一番支配してたのは二人の心配。あ、あとイチゴもね!
本当よ!!
…ディゴリーがジェイディスの誘惑に駆られてりんごを齧ったりしてないかとか、雨が降ってイチゴが飛べなくなったりしてないかとか…。
だって、本って断片的な事しか書いてないでしょ?
私が知っている部分の他に二人に何かあってもおかしくないじゃない。
雨だって、本当は降ってるかもしれないでしょ?
「大丈夫だよ、。」
「…アスラン。」
私の心配が聞こえたのか、アスランはゆったりとした足取りで私の方に歩いてきた。
のしっのしっと踏みならす地面からアスランの足音が響いて心地いい。
「彼らはちゃんと帰ってくる。彼らを信じるんだ、。」
「……うん。」
アスランは大地に靡く草原のように綺麗な薄緑色の目を細めると、私の横で座った。
「だって、心配なんだもん。」
「そうか。」
私は二人が飛んで行った方向を見て溜息をついた。
するとアスランは私とは反対方向を向いて暖かい息をフウッと吹く。
「何をしたの?」
「風を起こしたのだ。」
「風?」
「そうだ。彼らが暖かい風に乗って帰ってこれるよう起こしたのだ。」
アスランは鬣をブルブルと振ると、前足の中に頭を埋めた。
アスランの暖かい息に乗って二人が帰ってくる。
…こんなに心強い事はないよね!
私は嬉しくなって思わず、アスランの首根っこに抱きついた。
「。」
「ごめんなさい!でもこうしたいって思ったの。」
アスランは優しく私の抱擁を受け入れてくれた。
力を込めて抱きしめる。
頑張ってみるけど私の腕じゃアスランの首全部に手をまわすことは出来なかった。
でも、アスランから香る日なたの匂いが私にはくすぐったくて、とっても幸せだった。
「、ナルニアの王と王女に会わせよう。」
「ナルニアの……?」
私はうっかり忘れていたの。
ナルニアの王はアスランだと思い込んでたから。
「フランク王とヘレン女王だ。」
アスランの後ろから男の人と女の人が出てきた。
ああ、そっか!
確かロンドンから馬車の御者さんとその奥さんがナルニアに来たんだ!
でも私が会った二人はロンドンの御者さんとその奥さんという感じではなくて、凛々しい男の人と美しい女の人だった。
でも…。
「これじゃあ、王や王女らしくないわ。」
私はそう言うと、さっき仲良くなった小人さん達を掴まえて頼んだの。
王や王女にふさわしい服を作るようにってね。
「、君は素晴らしい発想をする。」
「うふふ。」
「さあ、おいで。」
私は呼ばれるがままにアスランの横に行くと、王と王女に恭しく(できるかぎりね)お辞儀した。
「です。 。」
「初めまして、。」
「、いい名前だわ。」
王と王妃は私にそう言って、優しく微笑んでくれた。
ナルニアはきっと、この二人のもとで平和な時が流れていくんだろうなぁ。
あの冬が来るまで。
私はのほほんとそんな事を考えると、ニンマリと笑い返した。
「は君達のいた世界で、Japanと呼ばれる所の者だ。」
「…Japan?それはどこだったかな。」
「ええ…。」
二人は考え込んでしまった。
きっと、もうナルニアの人になっているから忘れかけているんだろうな。
だから私は、「すごく遠いところです。」と言った。
そうだ。すごく遠いところ。
場所も、時間も。
「、私はこの二人に教える事がたくさんある。小人達の服作りの手伝いをしてくれないか。
彼らの服は一流だけれども、君みたいに素晴らしい発想のデザインは苦手だ。何しろ、生まれたばかりだからね。」
「はい!」
アスランはウインクすると、二人と歩いて行った。
私はそれを見送ると、小人さん達のもとに走っていった。
しばらく小人さん達のお仕事のデザインを担当して、一段落したところで顔を上げる。
…これならもう私は必要ないかな。
デザインも決まったし、皆そのように縫い始めてる。
私は立ち上がるとぐ〜っと背伸びした。
「うーんっ!!……あれ?」
異変を感じる。
何が異変かって?それは…
「空が、青くない。」
ある遠くの空の色がおかしくなってる事に気付いたの。
私は一目散に駆け出してアスランを探した。
彼はすぐ見つかって、駆け寄った。
「アスラン、見て!!空が飴色になってる!!!」
「…、静かに。」
「あっ…ごめんなさい。」
私は両手で口を塞ぐと、アスランを見た。
彼は飴色の空に顔を向けると、何かを感じ取っているようだった。
声を掛けたいけど掛けられない、そんな雰囲気を醸し出している。
「……。」
アスランが何も言ってくれないので、私の心も不安になる。
大丈夫だと思うけど、ディゴリーとポリーが心配でしょうがなくなる。
…失敗していたらどうしよう。
「。」
「…あっ…、はい!」
「彼らは大丈夫だ。」
私の心配を読み取ったのか、アスランは私を安心させようと声を掛けてくれた。
でもその顔は、恐ろしいような悲しいような複雑な顔をしている。
「じゃあ、あの空は?」
「悪だ。」
「悪……。」
アスランは飴色の空をじっと見つめている。
一瞬も目を逸らさず、瞬きもせず、ずっと空だけを見つめている。
悪って、やっぱりジェイディスのことだよね。
ジェイディスはやっぱりりんごを食べてしまったんだ。
本の通りに進んでる。
という事は、二人はもうすぐここに帰ってくるの?
「そうだよ、。
でも彼は今、戦っている。」
「……ディゴリーが?」
アスランの横顔はとても悲しそうだった。
きっとジェイディスの巧みな言葉と戦っているディゴリーの気持ちと、アスランは共にいるんだろうな。
お母さんの事を一緒に、悲しんでる。
「私、用意するね。」
「…何をかね?」
「内緒!!」
きっと私の考えてる事なんて、アスランには分かってしまっただろう。
けど、あんな悲しそうなアスランの顔は見たくないから咄嗟におどけてしまったの。
「動物達、聞いて!!私を手伝ってちょうだいっ!!!」
私は楽しそうに喋っている動物達の方に走ると、彼らに向かって叫んだ。
「やはり、を選んだのは正解だった。」
そんなアスランの嬉しい呟きは、今の私の耳には入らなかった。
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久しぶり更新です☆
自分の使命を前向き?に捉えて出来る事から取り組むヒロイン。
そんな背中を見て、アスランは励まされるのでした☆
「君がいるから、私は笑っていられる。」
2006/08/03
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