「いってらっしゃい、ピーター」

「いってくる。

エド、ケア・パラベルを頼むよ」

「うん。まあ、何かの時にはルーシーがいるから大丈夫だよ、兄さん」

「それもそうだな」

「なんだっていうのよ」















ピーターとエドマンドが二人してルーシーをからかってる。
私もそれをくすくす笑うと、ルーシーにじろりと睨まれた。




確かにエドマンドが言った通り、ルーシーがいるから大丈夫。
何たって少年みたいに戦に乗り込んでくんだもん。
それとは反対にスーザンの弓の腕は最強だけど、いつからか戦には出なくなったの。















「私がいなくてもがいるから大丈夫よ」













ルーシーがつんとして言った。
仕返しらしい。私は苦笑して両手を振る。



冗談じゃないもん。
















「私はいや…「に戦わせるなんてダメだ」















否定しようとした時、鎧に身を包んだピーターが大仰に批判。遮られてしまう。
ピーターはいつも、私が戦うことに反対なんだよね。
















「何かあったらこまりますからね」















横からオレイアスが口を挟む。
今回の征伐には、オレイアスも参加している。彼がいるということは、ヘラクスもいるはず。
















「そうよ、ルーシー。は戦わせられないわよ」

「冗談よ、スーザン」

「まあまあ。

オレイアス、ヘラクスは?」
















話を変えるために振った話題。
オレイアスも気付いたみたいでそのまま話を続けてくれる。

















「ヘラクスは先に北の地へ偵察に行った。そこで合流する予定なのだ」

「そっか。ヘラクスは向こうにいるんだね」

















ちょっと残念だった。
彼にも気をつけてって言いたかったのに。

















「残念だったな、
















エドマンドがニヤニヤした。その後ろではピーターが複雑な表情。




ああっ、これじゃ昨日の発言がおかしいじゃない。


















「別に残念じゃないよ!

ただ、気をつけてって言いたかったなって」

















私がそう言うと、みんなが溜め息をついた。
そして、ピーターは踵を返すと、
















「それが残念ていうんだ」
















と不機嫌な声で言った。


















「いくぞ、オレイアス。

ああ、ラバダシ王子。最後までおもてなしを出来ずに申し訳ない」
















ピーター、言い方に刺があるよ…。ラバダシ王子もびっくりしてるし。



なんでピーターはヘラクスの話をすると不機嫌になるんだろ。
戦いの時は、あんなに仲がいいのに。


















「いいえ、ピーター王。私の事はお気になさらず、ナルニアの平和が一番ですからね。思う存分征伐してきて下さい」
















驚いた割にはまともな返事したラバダシ王子を、ピーターは申し訳なさそうに見た。
さっきの、刺のある言い方が恥ずかしくなったみたい。

















「そう言って頂けると百人力です。では、残りの滞在を楽しんで下さい」

「はい」















なんか、ラバダシ王子がまともに見えてきちゃうよ…。ホントに、高慢で我が儘なのかな〜。
今の状態じゃ、スーザンの心が揺れるのがわからない気もしない。















そう思ってから頭をブンブンと左右に振った。



ダメだダメだ。最初に見た狡猾そうな瞳を思い出せ!
ラバダシ王子は絶対、本に書いてあった通りの人なんだから。














私達は、ピーター達の後ろ姿が見えなくなるまで見送った。
彼らが行ってしまってから、ぞろぞろとお城の中に入る。



その時のスーザンは、ラバダシ王子に称賛するような視線を送っていた。
きっと彼も気付いてただろう。けど、あえて彼女を見ずにそのまま部屋に消えていった。


















、君の発言て面白いよね。北に着いたら、兄さんは先ずはじめにヘラクスを殴るだろうよ」

「え?なんで?」

「ちょっと、それ本気で言ってるの?って、初なのね」

「うぶ…?」
















馬鹿にされてる気がする。
というか、明らかに馬鹿にされてるよね。



















「まあいいよ。ピーターの面白いとこ見れたし」

「それに、ラバダシ王子の素晴らしい言葉も聞けたしね。うっとりしちゃった…」
















あ〜あ、やっぱりね。
だって、あんな熱い視線送っちゃうし…。


















「スーザンたら、ラバダシ王子に気があるのね」

「ええ…あんな紳士な男性、見たことないわ。それもピーターが開催したあの馬上試合と槍の試合…彼は見事だったわ」

















うっとりしてるスーザンも、ホント美人。
女の私でもスーザンを見てうっとりしちゃうくらいだもん。
















「まあ、確かに彼の技は素晴らしかったよ。認める」















エドマンドが頷いた。するとスーザンは鼻を高くして得意顔をする。
















「ほうら」

「…何が、ほうらなの、スーザン。部屋に帰りましょ」
















私はぽーっとしてる彼女を引っ張って部屋に戻った。



















ラバダシ王子の良いところばっかり話そうとするスーザンを部屋に押し込め、その疲れに部屋に戻る気も失せて散歩に出る。
といっても中庭だけどね。


ゆったりとした足取りで石畳を抜け、緑深い庭を見上げる。
これは誰の趣味でつくったんだろ?やっぱりフランク王朝の誰かだよね。
きっと腕の良い庭師がいたんだろうなぁ…

それにしても、今はそれに値する庭師がいないのか上手く手入れをされてないみたい。
まあ、今のは今のでイイんだけどね。














噴水の周りをくるりと回って、宙を舞う水に手をかざす。
ザザザといって、温かいお湯が私の手に当たった。

















「このまま、ちゃんと本の通りにうまくいくかな…」
















噴水の中に足をつけて、縁に座る。
その温度が身に沁みた。




心配だった。
だって、急にピーターが征伐に行く事になった。
でも本当は、ラバダシ王子が帰国すると同時に征伐に向かうはずだったのに。





だからピーターも心配。何かあったら、どうしよう。
この前アスランの国に飛んだみたいに、ピーターの元へ助けに行けたらいいのに。
















私って、前からだけど役立たず……
















そこまで考えてしょんぼりした時、急に背後から抱きすくめられて身体が大きく震えた。

















「だれっ!?」

















恐怖に身を強張らせる。力が強くて抵抗も出来ない。
心臓がドックンドックンと早鐘を打つ。




身体がぶるぶると小刻みに震え出した。
逃げ出したい、恐い。




つんとした独特なお香の匂いが鼻につく。
あまりにきつ過ぎてくしゃみが出そうになった。
何でここまで思う結果になったかわかった。この匂いはカロールメンのもの。

















「お前、私に気があるのだろう?」


















高慢な言い様に唇を噛み締める。
顎に手を掛け無理矢理振り向かされて、その人物が目に入る。
それだけでも、体が固まるのがわかった。



















「ラバダシ王子……」




















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征伐に行っている場合じゃないよ、ピーター!(笑)

ヒロイン、ピンチです。


2008/08/21







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