今、ルーシーは何て言った?
スーザンがナルニアを出て行った……?
ナルニアを、出て行った!?
「ええ〜〜〜〜っ!!!ちょっ、ちょっと待って、どうして?」
目玉が飛び出しそうになりながら、私はルーシーの両肩を掴んだ。
そして前後にブンブン揺らすと、疑問を言う。
「わ、わからないわ。置手紙とかなかったし…」
ルーシーも困惑しているようだった。
そうだよね、きっと朝起きたら彼女の姿がなかったんだろう。
ううん、朝食に来なくておかしいと思って部屋を見に行ったらもぬけの殻だったのかもしれない。
「お城の周りとかはいなかったの?」
「ええ。いないのよ…」
「ウソ〜〜〜!」
頭が痛くなってきた。
体をフラフラさせながら、気を確かに持たないとと自分に言い聞かせる。
…どうしてスーザンがいなくなるか。それは一つしかない。
「ラバダシ王子を追ってったんじゃないかな……」
進まぬ物言いで、ルーシーは最初聞き取れなかったようだった。
でももう一度聞こうと口を開きかけた時思い当たったみたい。
「まさか!」
「そのまさかだと思うよ。昨日の私とスーザンのケンカもラバダシ王子が原因だし」
「ええっ!!!ちょっと、ラバダシ王子が好きだったの?ピーターはどうしたの、ピーターは?」
今度はルーシーが私の両肩を掴んでブンブン振る番だった。
私達はスーザンのことで頭が混乱してるんだと思う。だって、普通だったらこんな悠長な会話してないもん。
「ラバダシ王子なんて好きじゃないし、ピーターも違うし」
もう、みんな勝手にあれやこれや思ってくれちゃって…。私はおもちゃじゃないんだから!
じとりと睨むと、ルーシーは苦笑した。
「わかったわかった。とにかく、エドマンドのとこに行きましょ。スーザンの部屋にいるから」
うっ……。
エドマンドも会いづらい。昨日のこと、どう思ってるだろう。
食器持たせたままだったし、逃げちゃったし。怒ってるかもしれない。
息をつまらせたような顔をすると、ルーシーが顔を覗き込んできた。
顎をクイと上げて笑う。
でも、よく見ると目が笑ってなくて恐いよ〜〜〜。
「エドマンドとも何かあったんでしょ」
「……そんなことは…」
「そう。なら、行くわよ」
半ば引きずられるように部屋から出され、スーザンの部屋の前まで腕を掴まれて逃げないようにされていた。
逃げないよ。なんて言っても信じてくれないだろうけどね。
「エドマンド」
「あ、ルー…と」
わぁ〜、間があったね。
あはは。エドマンドも気まずそうに私を見てすぐに目を逸らす。
それを見て、ルーシーは少し膨れたようだった。でもすぐに気を取り直すと、真剣な表情で兄を見た。
「が言うには、スーザンはラバダシ王子を追いかけてったんじゃないかって」
「僕もそう思うよ。これを見てくれ」
エドマンドはスーザンの薔薇のテーブルの上にある飲みかけのワインを指した。
それは渋い赤色がグラスの中で揺れ、誰かの血のようだった。
「ワインがどうしたの?」
「これはただのワインじゃないんだ」
「どういうこと?」
エドマンドの言葉に、私も興味心身に聞いた。
だって、ただのワインじゃないなんて何か薬とかまじないがきいてるってことでしょ?
そんなもの見たことないから、私だって知りたい。
エドマンドはちょっと驚きつつ私を見た。そしてそのまま言葉を続ける。
「これは惚れ薬だ」
「「ええっ!!」」
ルーシーと顔を見合わせると、やっぱり二人で同時にエドマンドを見た。
だって、惚れ薬なんて実際にあるもんなんだ。
「試してみるよ」
私達の驚き顔をそのまま、エドマンドは気にするでもなくワインをぺロリと舐めた。
ああっ、そんな簡単に舐めても大丈夫なわけ!?
彼は舌なめずりして舐めたものを飲み込むと、私を見た。
「ああ、。昨日のことは本当に申し訳なかった。のことを考えていなかったんじゃなくて、スーザンがおかしいことばかりに頭がいってしまって」
「え…」
何コレ、即効性の惚れ薬?
確かにスーザンの時みたいに、エドマンドの目に異様な光が宿ってる。
「僕はいつだってのことを考えてるよ。兄さんの手前……」
エドマンドは急に喋るのをやめた。彼は目を見開いて、自分の口をゆっくりと手で塞いだ。
明らかに惚れ薬の効果に狼狽しているようだった。顔が、青白くなっていたもん。
「僕、何か言ったかい?」
「ええ、ペラペラと」
恐る恐る聞くエドマンドに、ルーシーは睨みを利かせた。彼女の目を見て、エドマンドはもっと真っ青になる。
「エドマンド、まさか本気じゃないでしょうね」
「……僕は、一体何を言ったんだい。ルー」
「……あなたが今思ってること、そのままよ」
「…まさか。惚れ薬を飲んでから最初にを見たからだろう?」
「ふうん、そ〜ねぇ」
二人が同時に私を見るので、彼らの会話の内容がわからずにきょとんとしている自分が申し訳なかった。
殆ど右から左へ抜けていった状態だったけど、大事な話だったのかもしれない。
「「……」」
「なに?」
「なんでもない!」
呆れた表情をしたルーシーの横で、エドマンドが強い口調で言った。
彼は気まずそうな表情で目を逸らすと、片手で顔を覆った。
なんだか……恥ずかしそう?
「どうしたの、エドマン…」
「なんでもないって!!!」
手を出すと、その手をパシンと撥ね退けられる。
心配してるのに、そこまでしなくてもいいじゃない。…酷い扱いだよね。
あ、そっか。まだ昨日私が逃げたことを起こってるわけだね。
「そう」
「……あ、、ごめ…」
「知らない」
謝ろうとしたその言葉を、私の手を跳ね除けたように私も跳ね除けちゃった。
すると、エドマンドはその高い鼻をへし折られたようにつまった表情になる。
「お互いケンカはそこらへんにして、スーザンのことを考えましょ」
気の張り合いをルーシーに一掃去れ、気まずい雰囲気で話し合いを戻す。
本当にスーザンがいなくなっちゃったんだから、私だって悩んでるなんて殻に閉じこもってはいられない。
どうにかしなきゃ。
それに、これじゃまるで……からっきし『ナルニア国物語』と違う内容になっちゃってるじゃない!!!
「スーがラバダシ王子を追っていったのは十中八九そうだとしても、今からじゃ追いかけても間に合わないな」
「ええ。きっとまだこの惚れ薬の効果が消えてないだろうから、もし追いついたとしてもスーザンは帰ろうとしないでしょうしね」
「それはありうるよ。だって私、スーザンとあんなに変なケンカしたの初めてだもん。さっきのエドマンドもそうだったけど、気持ち悪いくらい目がぎらぎらしてる」
私がそう言うと、二人はその話に食いついてきた。その、目がぎらぎらするってとこに。
「そうか。それが惚れ薬にかかってる者とかかってない者の見分け方なんだな」
「うん、たぶんそう。…ところで、スーザンは一人で行っちゃったの?」
一番気になってたとこっていうか、心配だったとこを聞いてみる。すると、意外な答えが返ってきた。
でも、エドマンドの表情はなんていうかルーシーを窺うような感じ。
小首を傾げたルーシーに苦笑すると、エドマンドは私に向かって言った。
「いや、何人かナルニア人を連れて行った。カラスと数人の小人……
…そして、タムナスもだ」
「ええっ!!!」
今のは私の叫びじゃない。そう、ルーシーのだよ。
彼女は驚きに口をあんぐり開けると、エドマンドを見た。
「タムナスさんも、連れてかれたの?」
「いや、タムナスはスーザンを心配して自ら着いていったようだよ」
その言葉を聞いて、彼女は「さすがタムナスさん」とだけ呟いた。
「とにかく情報を集めよう。動くのはそれからだ」
エドマンドの言葉に頷くと、私達はそれぞれ情報を手に入れようと躍起になった。
でも、それは数日で無駄な行動だったってわかったの。
それはね。
「スーザンから手紙が来たんだって!?」
ルーシーと一緒にスーザンからの手紙を覗いていると、慌てた様子のエドマンドが飛び込んできた。
彼は私達の手から手紙をひったくると、食い入るように読みふける。
「なんだってこんな……」
「ホント。自分から出て行ったのに、よくもまあこんな手紙を出してくるわね」
「エドマンド、ルーシー、スーザンは惚れ薬に蝕まれてるんだからしょうがないんだよ。そんな言い方しちゃダメ」
とは言ったものの、私も内心複雑だった。
だって、スーザンから来た手紙って……
『婚礼のお知らせ』
だったんだもん!!!
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せっかく4人がわからの『馬と少年』なので、ストーリー変更して
楽しんでしまいます♪
次はカロールメンにレッツゴー☆
2008/08/29
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