ガサッ…
もうダメだ。逃げたい!
助けて……!
恐くてどうしようもなくて、何も見ないようにとぎゅっと目を瞑る。
気とか失ったらいいかな。そしたら何にも覚えてなくて…。
それって幸せじゃないけど幸せかもしれない。
ぎゅ〜って強く目をつむってたら、目の奥がぴきぴき痛くなっちゃって薄目を開けてみる。
目の前には黒服の男が立ってて私を見下ろしていた。
「ん〜っ!」
怖くてもう一度目を瞑ろうとした時、その黒服の男は優しく私を抱きしめたんだ。
びっくりして目を見開くと、ふわりと香る知ってる匂い。
「!」
小さな声で私の名前を呼ぶ。
ああ、助けに来てくれたんだ。
エドマンド
声に出せない分、心の中で大きく叫ぶ。
嬉しい、エドマンドが来てくれたんだ。
「ちょっと待って、今はずすよ」
彼はゆっくりそう言うと、小さなナイフを取り出して縄を切りにかかる。
ブチッ
瞬間、肌に食い込んでいたそれがぱっと外れ、全身の緊張がとけた。
「さるぐつわも外すから」
エドマンドの言葉を聞きながら、私は両手を彼の背中に這わせる。
そしてガシリと掴むと、力を込めて彼を抱きしめた。
「、動きにくい…」
「んーっ…」
「何言ってるかわかんないよ。今、はず……れた!」
「…はっ…」
口を閉じるように縛っていた布も外れ、掠れた声が出る。
でもすぐに元に戻った。
「エドマンド!!」
「、苦しいよ」
「……えっ…うぇっ……エド…マンド…」
「え、…泣いて…」
くすくす笑うようにしてた声色が変わった。エドマンドの声が低く震える。
「怖かった、怖かったよぉ!」
ぎゅっとしがみつく。爪を立てちゃったかもしれないけど、そんなのを気にもできなかった。
エドマンドは優しく抱きしめ返してくれ、おでこに軽いキスをくれる。
そこからほっこりと温かくなって、怖かった気持ちが吹き飛んじゃった。
「とりあえずここから逃げるから、僕につかまってるんだよ」
「ふぇっ!?」
鼻をぐずらせながら顔を上げると、視界が行きなり高くなった。
そう、だっこされてるんだよ私。
「ちょっ…エド…//////」
「しっ…」
顔真っ赤で抗議しようとしたけど、止められてしまった。
確かに騒いだら見つかっちゃうもんね。
無言で走り抜ける林、木々の枝はざわざわと揺れてお化けみたいだ。
エドマンドが助けに来てくれてよかった。
私、こんな恐いとこに繋がれてたんだね。
助けにきてくれて、本当にありがとう。
「、大丈夫?」
「ん、大丈夫」
「泣き止んだ?」
「うん」
エドマンドはホッとしたのか、私を抱く手に力を込めた。
きゅ、と締め付けられる力が少し心地いい。
「無事でよかった。
アスランから報せを聞いた時、僕の命がどんなに縮んだかわかるかい?」
「ごめんなさい」
「いいよ、無事だったからさ」
なんかエドマンドが優しい。
ちょっとピーターみたい。
「はこんなに軽いんだね。びっくりした」
「えっ?」
「僕はの外見が変わらなくても、中身が僕たちと同じように歳をとってるのはわかってるつもりだった。
でも、つもりだったんだ。深く理解してなかった」
「エドマンド…」
彼の真剣な瞳に吸い込まれそうになり、慌てて瞬きをする。
「体が子供、心が大人だなんて…。僕はいつも、が僕と同じだって思い込ませてたんだ」
「うそ、子供だって言ってたじゃない」
スーザンのことがあってから、エドマンドとはずっとうまくいかなかったもん。
信じてくれないし、子供だって言うし。
まるで…
「私のこと嫌いになったみたいに」
心の中だけで呟いたはずなのに、思わず口に出ちゃってびっくり。
「違う!それは絶対に違う!
アスランのたてがみにかけて誓う!僕はのことは嫌いじゃない。
それは…、外見が歳とらないこととかで僕たちからいつも一歩距離をとってるが嫌だったんだ。
何年一緒にいるんだい?そろそろ心を開いてくれても良い頃だよ」
「そんな…、私、そんなつもりじゃ」
「はそうかもしれないけど、僕にはそうにしか見えない。
僕は、もっとに近づきたいんだ!!!」
カアアッ////
顔が赤くなる。
エドマンドが変な意味で言ったんじゃないのに。
私ってば、何顔を赤くしてんの!
「でも私は守人で…、私とあなたたちは違うって、アスランが」
「君は何でもアスランが言う通りにするのかい?にはの意思はないの?君は君らしくしなきゃだめだよ。
本当のは僕たちと一歩距離を置いたりしない。こうやって、手を握って一緒にいてくれるはずだよ」
あ…
エドマンドはふわりと私の手を握り、にっこりと笑った。
そっか、そんなことあったの忘れてたよ。
私、エドマンドと手を握ってたよね。白い魔女との戦いで。
一緒に走ったんだ。一生懸命に。
彼の手を握り返して、その顔を見上げる。
手も背もこんなに大きくなっちゃった。エドマンドはもう、大人の人なんだ。
それに比べて私は、なんて子供なんだろう。
姿にばかりこだわって、子供を演じてたのは私の方だ。
この姿に惑わされてるんだよね。
「エドマンド、ごめんなさい。私もみんなが大人になってくことをひがんでただけかもしれない。
確かにアスランは私とみんなが違うって言ってたけど、私は私らしくしなきゃだめだってずっと言ってた。
私の心が惑わされてたんだね」
「…」
エドマンドは私の手を握りしめたまま、私の背中にもう片方の腕を回してぎゅっと抱きしめる。
なんか嬉しい。
私もエドマンドも、仲直りしたかったのは同じなんだね。
「そういえば、私が捕まってるのはアスランが知らせてくれたんだよね」
「そうなんだ。
僕たちが明日に備えて野宿して、うとうとし始めた時にアスランが夢に出て来た」
「夢に…?
もしかしてアスランたら、私とエドマンドが仲直りするように取り計らってくれたのかな」
「そうかもしれないね」
「も〜っ!あんなに怖い思いをしたのに!」
エドマンドはくすくす笑うと、抱きしめてくれてた腕を離して指笛を鳴らした。
すると、どこからともなく馬の駆ける音。
「フィリップ!」
「、無事でしたか」
彼はエドマンドの十何年来の相棒。
そう、白い魔女の戦いの時にピーターと剣を練習してた時に乗ってた馬だよ。
「私も助けに行きたかったのですが、何せ私は馬ですからね。忍び足が難しい!
そういうことで王に置いていかれたわけです」
「あはは!それはしょうがないよ。でもありがとう、迎えに来てくれて」
「どういたしまして。
それにしてもエドマンド王、その黒装束似合ってますよ。いっそ盗賊にでも転職したらどうでしょう?」
ヒヒンと笑うフィリップをギロリと睨むと、エドマンドは私の体を持ち上げて彼の背に乗せてくれた。
「ほんと、何年付き合っても口の減らない馬だよ」
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助け出されましたー!
そして無事仲直り^^
お互いの気持ちがわかってよかったです。
言わなきゃわからないことなんてたくさん!
コミュニケーションは大事にしましょう!!!
2008/10/08
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