ドンッ!
ドーン!
ラバダシ王子達が城門をやぶろうとしている音が聞こえた。
よかった、城門を閉じるのは間に合ったんだね。
「クソ、思ったより早く始めたな」
エドマンドが兵列を正そうと後ろまで駆けて来ると、唇を噛み締めて呟いた。
私は彼にばれないように後ろへ引き下がると、じっと息を潜める。
「スカイ、どうした?」
ドワーフの演技も忘れて、コーリンが話しかけて来た。
私の行動が気になったみたい。
「いや、大丈夫」
「もうすぐ突撃の命が下る。気をつけろよ」
「ああ、ありがとう」
コーリンは照れたのか顔を赤くすると、そのままコルの横へと戻っていった。
ああ、私の子供達はなんてカワイイんでしょ!
他人の心配なんてしちゃって〜〜!
「ヨシッ、行くぞ!
突撃〜〜!」
ニマニマとそんなこと考えてたらエドマンドの突撃合図が聞こえて、慌てて剣を握りしめた。
ジョージの背の上で激しく体が上下し、お尻が鞍にたたき付けられる。剣を彼の
前足の横にぴったりとつけ、振り落とさないように構える。
そして上体を低くしてしっかりと前を見据えた。
槌を持ったカロールメン軍の行動が止まり、一斉にこちらに気付く。
彼らは冷静過ぎて恐かった。よく訓練された兵達だ。
「来る ぞ、構え ろー…」
エドマンドの叫びが途切れ途切れ聞こえ、その後すぐに馬等の蹄の音がなり始めた。
それはカロールメン軍も同じで、彼らは私達ナルニア軍の姿を認めると、列を為して向かってくる。
コーリンの横に列んでいたコルの馬が一歩遅れた。
きっと乗ってる者の恐怖を感じとったからかもしれない。
「きみは後ろへ」
咄嗟にそう言って自分がコーリンの横に並ぶと、剣を構えた。
あともう少し…十メートル、八メートル…五…
ガンッ…ガシャン!!!
エドマンド達がタルカーンとぶつかり、剣を打ち付け合う。横ではヒョウ達が敵に飛び掛かっていた。
そして第二陣、第三陣というように、実際は人数が少ないからそんな大袈裟なものじゃないけど、ぶつかっていった。
ガンッガシッ…
最初の一撃、胸に食らわして一人を倒す。隣ではコーリンが苦戦しながらも戦っている。
ハッと後ろを向くと、馬上で剣を掴んだまま右往左往しているコルが見えた。
ああ、やっぱり戦い方もわかってない!!
一騎打ちしているコーリンを後ろから狙っていたタルカーンを倒し、向かって来たもう一人の奴も蹴り飛ばす。
すると次から次へと敵が向かってきて、なかなかコルのとこへ向かえない。
「もうっ…次から次へうるさ〜い!」
そう呟いて剣を繰り出そうとした時、急に目の前にいた数人の男達が倒れ出した。
「へっ?」
疑問に思って顔を上げると、少し遠くに見えるルーシー達の弓矢部隊。
彼女達は揃って狙いをつけると、私の前にはだかった奴らをやっつけてくれた。
恐る恐る見ると、ルーシーのウィンクが視界に入った。
あわわ、私だってバレてるし!
ジョージに方向転換をさせてコルの方に向かうけど、戦いに慣れてない彼をみつけたタルカーンがが一人、私よりも先に彼の元に着いた。
くうう〜!
ヤバイ、ヤバイよ!コルがやられちゃう!
なんとか一撃目を切り抜けた彼は、馬上でバランスを取れなくなって転げ落ちてしまった。
もう、見てられないよ!
「俺が相手だ!」
やっとこさ辿り着いて、コルを背に庇うように立ちはだかる。
でもタルカーンは私の姿を見て馬鹿にしたように笑った。
だって、コルと同じくらいの体型しかないんだもん。
取るに足らない相手だと思われたんだ!
くやしいっ!
「笑うのは、勝ってからにしてもらおうか!」
剣を鼻先に突き付けて強く言い放つ。
自分でもびっくりしたけど、その言葉はビリビリと周囲を圧倒した。
「何が勝ってからだ。すぐにケリは着く」
くくくと笑って剣を構えるタルカーン。
私も同じように構えて彼を見据えた。
強い…かも…。
言葉通り、その威圧が私にバシバシとぶつかってきた。
一筋縄じゃいかない相手だ。
その時、軽く響くラッパの響きと共にアンバードの城門が開いて騎士達が出て来た。
よし!これでこっちの方が優勢だね。
「……その笑い、後悔させてやる」
「その小さな体で何が出来る。
こちらに剣先が届く前に死が待っているだろう」
な、なんなの!
悔しいったらありゃしない!とことん言ってくれるじゃない!
「きみは今日、俺に会ったことを後悔するよ」
私はそう言うと、ジョージの脇腹を小突いて走らせた。
ガッガッ
地面を蹴る音が耳に入る。
彼はヒョイと死体を飛び越え、風と一体になって走る。
小突くなんていらないね。ジョージは私の思い通り走ってくれる。
だから、私は剣を操ればいいだけなんだ。
フトモモに力を入れてガシリとジョージの体を挟み込むと、絶対に落ちないよう
に体を固定した。もう大丈夫、私なら出来る。
「はっ…」
軽く剣を打ち付け、交差する様にに反対側で走り止める。
そして素早く後ろを向き、もう一度走り出す。
ガンッ
今度は強く打ち付けて、剣がらビリビリと威圧が伝わってきた。
― 次で、最後だ。
今度は走り止まらずにそのまま、ジョージの体を回転させる。
タルカーンよりも早く、私の体はそこへ向かう。
力を込める時間も、彼の動きを見据える時間も、全て私に利がある!!!
「やあぁっ」
彼が構える前に私は剣を上から下へと振るった。
その後のことは言うまい。
グロい話はいらないでしょ?私が勝ったんだからね。
「っふう」
肩の力を抜いて辺りを見回すと、腰を抜かしたように座るコルがいた。
よかった、無事だ。
目線を上げて本部隊を見ると、ダーリンが一人倒したところだった。
けれど…
「くっ…」
エドマンドが鞍から落ちるのが目に入った。
彼の顔は痛みに歪み、えもいわれない気持ちが込み上がってくる。
「終わりだな、エドマンド王」
エドマンドを追い詰めているのはラバダシ王子だった。
先の曲がった剣を、エドマンドの首に当てている。
「っ…エドマンド!!」
思わず本当の自分の声で叫んでしまい、口元を手で覆った。
でもみんなにはわかっちゃったの。
スカイと名乗った人物は、本当はだってことを。
「守人だ!守人がここにおられる!」
「自ら戦われている!」
動物達が叫び、足を踏み鳴らした。
「我らの勝利が近い!」
「アスランのたてがみにかけて、我らは勝利をものにする!」
な、なんだかよくわからないけど、戦いの士気がぐんと上がったんだよね。
守人の力って、本当はスゴイとか?
それに呆気にとられたラバダシ王子の隙を狙って、エドマンドも退勢を立て直したからもう大丈夫そう!
あとは、みんなに任せようかな。
「覚悟しろ、ラバダシ!!」
「私はやられん!!!」
二人の一騎打ちはあっけなく終わり…ラバダシ王子が城門に寄りかかった状態になったんだよね。
きっとエドマンドにやられたんだと思うけど…。
その後、エドマンドも何人かと戦ったんだけど、すぐにタルカーン達は降参した。
あれ、でも本はこんな終わり方だったっけ?
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みんな無事だったようですね〜。
次はアスランの登場です☆
2008/10/16
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