「少し可哀想だったよね」
「は本当に甘いのね」
「いえ、カロールメンの者にはそこまでしなければわからないのです」
最後にきっぱり言い放ったのはアラビスだ。
コルと一緒にカロールメンから旅をしてきたタルキーナ(カロールメンの貴族の娘)。
褐色の肌が太陽の光で輝いてとってもキレイ。
「厳しいね、アラビス」
「が優しすぎるのよ」
「うーん、そう言われてもなぁ」
私たちはアラビスを部屋に案内すると、そのままお茶を持ち込んで居座ってしまった。
さっきコルがアラビスを連れてきて、私たちはすぐに友達になったの。
年齢が近く見える私がコルと仲いいのを見て、かわいいくらいにやきもちを見せたアラビス。
確かそのうちにコルと結婚した気がするけど、私たちはそれを見届けることが出来ない。
あと一年足らずでナルニアを去らなきゃけないから。
「?」
「あ、ん?」
「んじゃないでしょ。ダーリンが来てるよ」
「えっ……」
手元の紅茶がなくなるという頃、部屋の外にダーリンの姿が見えた。
あわわ、ルーシーはニヤニヤしてるし、アラビスは不思議そうな表情になってる。
「…ちょっと行ってくるね」
「はーい、ごゆっくり」
ああ、もう!ルーシーったら。
きっと私がいなくなった後でアラビスに面白おかしく話すんだろうなぁ…。
私は部屋を出て、ドアの外で待っていたダーリンの前に立って彼を見上げた。
彼はもう何年もまともに会っていない気がするくらい大人になってしまって、あらためてあの告白を思い出してしまう。
「ダーリン?」
「すまない、君がいる間にどうしても話したくて」
「いいよ、大丈夫」
「そうか、ありがとう」
ダーリンはゆっくりと膝を床に着き、私の手を取って甲にキスをしてくれた。
そんな紳士的な態度にどぎまぎすると、彼はふと笑ってそのまま手を握りつつ歩き出した。
無言が続き、廊下には私たち二人の靴音だけが響く。
心臓がどくんどくんと鳴って、あいている方の手で胸を押さえつける。
鳴り止め、私の心臓。どうしてこんなに大きい音を出すの??
こんなの、ダーリンに聞こえたら大変!!!
中庭に着くと、ダーリンは振り向いて私の肩を引き寄せた。
私の身長があまりにも小さいから、180センチを超えている彼は大変そう。
「寒くないか?」
「うん、大丈夫」
「……は美しくなったな」
えっ!?っと思って彼を見つめた。
だって、私の姿は初めて会ったときと同じ15歳なのに。
「俺に、君の姿が皆と同じように見えてると思ってるのか?」
「違うの?」
どきどきしながら言うと、ダーリンはくすと笑う。
だって、もしかしたらアスランみたいに29歳の私が見えてるのかもしれない。
「残念だけど、15歳に見える。だが、29歳にも見えるんだ」
「…?」
「アスランから聞いたが、彼はが本当の姿に見えるらしいな」
「えっ!アスランと話したの?」
「ああ。との関係が気になったから話しかけてみた」
ナルニア人以外の人がアスランと話すなんて思わなかったから、ちょっとびっくりしちゃった。
ダーリンもダーリンだよ。アスランに話しかけるなんて。
それも私とアスランの関係!?気になり過ぎる!!!
「娘のような、妻のような……近い存在だと言っていた。
俺はもっと嫉妬に駆られるかと思ったがそうはいかなかったよ。勝てないと感じた。アスランとの関係は、俺には超えられない深いものがある」
「ダーリン……」
「アスランには勝てないが、ピーター王にもエドマンド王にも騎士ヘラクスには勝てる気がする」
えっと、もしかしてこの続きって……プロポーズ?
困る。困るよ……だって、私は歳もとらないし元の世界に帰らなきゃいけないから答えられないし。
彼はこんなに待たせてもなお、私の返事を待っていてくれてる気の長い人。
結婚してもいい歳な筈なのに、どうしてだろう。
「が返事を出来ないことはアスランに聞いた」
…それもアスランに聞いたんだ。
って、なんでアスランたらそんなこと知ってんの?はぁ〜。
もしかしたら返事するかもしれないじゃんね。
「でも、それでも俺はを妻にと望んでいる。きっと、近いうちにもう一度言うだろうから、それまでに考えていて欲しい。
ナルニアに戻っても、俺の存在を忘れないでくれ」
忘れないよ。
だって、初めて私に告白してくれた人だもん。それにいつも花とか布とか贈り物をしてくれて、忘れるなんて出来ないよ。
「うん、ありがとうダーリン」
「……アンバードにゆっくり滞在してくれ。出来るだけ会いたい」
「ん……」
ダーリンはまた私の手にキスをして、戻っていった。
なんていうか、最後まで紳士的過ぎてホントどきどきしちゃう。
ピーターは同じように紳士的だけどもっと気さくだし、エドマンドにしては男友達みたいだし。
ヘラクスなんてどんな扱いをしてくれてるのか疑問になるときもあるくらいだし…。
私はルーシーとアラビスのところに戻る気にもなれず、ベンチに座り込む。
考えちゃうよー。
ダーリンのことは好きだし、きっと幸せにしてくれると思うよ。
オレイアスとは違って人間だし……
『はダーリンと一緒になる気があるのかね?』
「アスラン!!!」
この悩んでる時に、頭の中にアスランの声が響いた。
近くにるんじゃないかと思って見回すけど、彼の姿は見当たらない。
『もう、ここにはいない。わかっているだろう』
「わかってるけど…声がするとついね。
そういえばアスラン、私はダーリンに返事はしないって決まってるの?」
高らかな笑いが聞こえ、私はちょっとムッとした。
だって、笑うとこじゃないじゃない。
『いや、すまない。ラバダシ王子がロバになったくらい面白い発言だ、』
「もーっ!アスランったら」
私がぷりぷりしだすと、アスランはもっと笑って優しい風を起こした。
その風は暖風となってアンバードを取り囲む。
『、君の生き方は君が決めるべきだ。私の発言は関係ないだろう。
君が望むならば、君はナルニアで子供を産むことだって出来る』
「……本当に?」
『ああ、しかし……よく、考えなさい』
最後のトーンの落ちた声と共にアスランの気配は消えてしまった。
どうしてだろう、アスランはそれをすすめられないというか、望んでない?
「あっ、いたーっ」
不自然にを見上げてる私を呼ぶ声がして振り返ると、そこにはルーシーとアラビスがいた。
二人ともニコニコ笑いながら近寄ってくる。
「ラバダシ王子のロバになった話を聞きました。今頃はティスロック王も腰を抜かしていることでしょう!そしてアホーシタも失脚すればいいんだわ!」
アラビスってなかなか言う女の子だね。
私が苦笑いしてると、ルーシーがぽつりと言う。
「あれ、もしかして今までアスランがいなかった?」
「わかるの?」
「ええ、そんな気がしただけ。アスランはダーリンについて何か言ってた?」
……う〜ん、あの微妙な話はルーシーには出来ないかも。
やっぱり恋の話はスーザンじゃなきゃね。
「ううん。でも、ラバダシ王子がロバになったことは面白い出来事だみたいなことは言ってたよ」
「うふふ、アスランも残酷なこと言うのね」
「やっぱり、ライオンだからではないですか?」
二人が笑っているのを横目に、私は溜め息を吐いた。
もうすぐ十何年もいたこの時代からいなくなるかもしれないこの時に、なんでこんな問題が出てきたのか。
アスランの言葉が気になってしょうがないよ……。
***************
ラバダシ王子がロバになる経緯は『馬と少年』を読んでください(笑)
ここでは女の子達と、告白しながら出てくる場面の少ないダーリン君を
出してみました^^
さてさて、戦いも終わって刻一刻とナルニアから四兄弟が去る時期が
近づいています。どうなることやら…。
2008/11/29
57話へ