ナルニアから元の世界じゃなく、全く別の世界に戻って来たんだ…
この時私はそう思っちゃったんだ。
だって、この世界での事なんて何にも考えてなかったんだよ!
恋なんて…、好きだとか言われるっていうか…、マユモにそんなこと言われるなんて思ってなかった。
「マユモ…」
「そんな驚いた顔すんなよ。わかってたことだろ?」
「わっ…わかってないっ」
「…マジで?」
「……当たり前だよっ!」
当たり前のように言うマユモを批判する。
だって、そんなそぶりなんてなかったよ。私がナルニアから帰って来てから変だなあって思ったくらい。
私のこと、好きなんて。
その時、急に頭がクラッとして思わずマユモに寄り掛かった。
マユモは不思議そうに私の肩を支えてくれる。
「おい、大丈夫か?」
「ん、わかんない…。頭痛い…」
「俺のせいなのか?」
「わかんな……」
ふと意識が途切れる気がした。
ううん、途切れるならこのまま真っ白になるのかもしれないけどこの時は違かった。
どこか遠くに意識を飛ばされたんだ。
だって、気付いたら草原の真ん中に立ってたんだもん。
「ここは………マユモ?」
一緒にいて、私を支えてくれてたはずの幼なじみがいない。
もしかしたら、もしかしなくてもここはナルニアかな…。
「風が気持ちいい…」
この清々しい空気を久々に吸った気分なる。まあ、二日前にはまだいたんだけどね。
私はめいいっぱい深呼吸すると周囲を見渡した。
向こうの方に小さくお城が見える。どこの国のお城だろう。
お城とは反対側を見ると、そこには鬱蒼とした森が広がっている。
暗くて、迷い込みたくないような。
一体、ここはナルニア世界のどの位置になるんだろうか。
なんで私はいつの間にここに来ちゃったんだろう。そして、
「どうしたら帰れるんだろう」
これが1番。
ナルニアに来たのはいいけど、またこのまま何年もいることになるのか、ジェイディスの時みたいにすぐ帰れるのかわからない。
こんな広大な草原にひとり、ぽつねんと置かれたって心細いだけだよ。
「誰か!」
思わず叫ぶ。
誰も来ないなんてわかってるし、もし来たとしても変な人とかだったら大変な事態に陥ることだってわかってる。
でも、この心細さが私にそうさせたんだ。
「誰か!」
「どうした?」
いきなりの返事に驚いて振り向くと、そこには同じ歳くらいの男の子が馬上から話し掛けてくれていた。
「迷っちゃって…」
「迷った?一体どこに行くつもりだったんだ」
「えと…ナルニアに…」
「!」
男の子は目をカッと開いた。
ナルニアって言ったのはマズかったかもしれないって気付く。
だって、もし次に私が来るとしたらカスピアンがいるような1300年も後の時代だもん。
ナルニアは滅びたことになってるはず。
男の子はしばらく私を見つめると横に首を振った。
「ナルニアはもうない」
「そ、そっか」
二人で無言になる。
これ以上何を話せばいいんだろう。もしかしたらナルニアの敵だろう男の子に何を頼ればいいんだろう。
「お前はナルニア人ではなし、どこの国の人間だ?そんな服装見たこともない」
「う…えっと…」
「…」
「その…」
言葉に詰まる。
どうすればいいんだろう…。
「……まあいい。迷っているならば私のところに来ればいい」
「え?いいの?」
聞き返すと男の子はあからさまに嫌悪を示した。
「私はそんなに心の狭い人間ではない」
「あ…うん」
心が広い、狭いとかの問題じゃなかったのに…。なんていうか強引な人?
まあいいや、途方に暮れてたけどとにかく助かったし。
彼は私を自分の後ろに乗せると、お城の方へ馬を走らせた。
「ナルニアとは、どんな国なのだ」
「え?」
彼はおもむろに呟いた。
ナルニアに興味があるのかな。
「いろいろな動物や生き物がいるんだよ。お喋りして、毎日を過ごすの。熊さんと魚を捕ったり、フォーンと踊ったり、木の精と歌ったり…、セントールの背中に乗せてもらったりね」
「実際に見たような話し方をするんだな」
「……もう、滅んじゃったんだよね」
「ああ、かなり前の話だ」
「そっか…」
泣きそうになる。
みんなはどうしちゃったんだろう。オレイアスとダーリンはうまくやったのかな。
ううん、きっとその時代はまだよかったんだ。その後きっと…
「お前は博士よりずっとナルニアを生き生きと話す。私の歴史の勉強はなかなか面白かったが、お前が教えてくれたならもっと面白く出来ただろうな」
彼はククと笑うと、拍車をかけた。馬はヒヒンと一鳴きし、さらに走り出した。
ナルニアのことを勉強した男の子…。
最初はカスピアンかと思ったけど違うみたい。私が思ってる彼の像と当てはまらないもん。
この人は一体誰なんだろう。
「さあ着いた」
「…ここは?」
「テルマールだ」
テルマール!!!
ナルニアを滅ぼしたとこだよ。やっぱりカスピアンの国じゃん。てことは、やっぱりこの人はカスピアン?
「あの、もしかしてあなたはカスピアン?」
「私はカスピアンではない」
「そ、そっか」
やっぱりね。
そうだと思ったけど、なんとなくね。だってナルニアのことを知ってるし、博士とか言うし。
でも彼は一体誰なんだろ。
「テルマールは初めてか?」
「うん、初めて。いいとこだね」
これは嘘じゃない。だってこんなに町が活気づいて、お祭りみたいだもん。
お母さん達は色とりどりの野菜や果物を片手に立ち話して、その子供達は雌鳥を追い回している。
「お祭りみたいで楽しそう」
「そうだろう」
私がにっこり笑うと、彼は目を細めて笑った。
「その服装では目立つ。これを羽織れ」
そしてこう言うと自分のマントで私を包んでくれる。
強引なとこもあるけど、優しいんだなぁ。それに私のこと警戒もしないし。
「ありがとう!」
「いや」
彼はふと笑い、私の腕を取る。
どこかに連れて行ってくれるみたい。
「町を案内しよう」
「うん!!!」
私は彼に連れられて、テルマールの町を歩き出した。
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幼なじみの告白から一転、ナルニアに逆戻り!
この男の子は一体誰!?
2009/06/03
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