セントールの背中に乗せてもらうのは久しぶり!
そう思ったら口元がニヤニヤしてきちゃった。だってナルニアに来たのもずっとずっと前の話。
だからこの上下の揺れとか、お尻が温かいだとかそういうのがもう懐かしくって。











、何故ニヤニヤしている」











私の笑みが気持ち悪いと思ったのか、アステリウスが怪訝そうな表情で話しかけてきた。
もう、なんなのその表情は!眉間に皺がよってるし。
ミノタウロスの眉間に皺が出来るなんて、それ以上に怖い表情は他にないよ!!!











「セントールの背中に乗るのは久しぶりだなぁって」

「…セントールが誰かを背中に乗せるなんてことは初めて見たが、昔にもそんな変わった奴がいたのか」

「あのねぇアステリウス、私はアスランの守人なの。だから乗せてくれるセントールもいるんだよ。グレンストームみたいにね」











つんけんした態度で言うと、彼の方がニヤニヤ笑いで答えた。
でっかくて黒いミノタウロスがニヤニヤするところなんて…悪いけどちょっと気持ち悪い。



今はナルニア人はとても少なくなってみんな協力してるけど、私がいた頃は魔女の勢力だったミノタウロス。
あの戦いでオレイアスにやられたりしてたよね。懐かしいなぁ。
そう考えるとこうやってアステリウスと話してるのが不思議。











「何の役割を持っているかわからないような守人が、自分の立場を逆手に取って可哀相なミノタウロスをいじめている」

「アステリウス!」











ニヤニヤしながら自分を保護した言葉(冗談なんだろうけど)を言った彼にグレンストームが怒る。
グレンストームが怒ると、なんか背中が熱くなって乗りにくい。











「今、背中が熱くなっただろう」

「何でわかったの、アステリウス」

「グレンは怒ると背中を熱くするんだ。そのうち火傷するぞ

「アスス!!!」











グレンストームはミノタウロスの名を短くして怒った。アステリウスもグレンって読んでたし、背中が熱くなることも知ってるくらいだから仲良しなんだろうな。
アステリウスはお腹を抱えながらひとしきり笑うと、グレンストームの怒りが爆発して私のお尻が火傷する前に後方に消えてくれた。











「アステリウスは人望の厚いミノタウロスなのですが、こう…」

「ユーモアがあるんだよね」

「そうなのです。も気をつけて下さい」











気をつけるってどうしたらいいの?なんて聞けるわけも無く、私は静かに頷いた。





















数時間歩くと、日も沈みかかってきた。
でもまだ森は明るく清清しい。昨日の夜を考えたら今はなんて歩きやすいんだろう。
私達はさっきアステリウスがいたからわかるように他のナルニア人と共に歩いてきたんだけど、歩みが遅くてカスピアンに今日中に会えないかもしれないからってセントールだけ先に走ってきた。
もちろん私は背中に乗ったままついてきたけどね。











「あそこで声が聞こえる」











少し先でリーピチープとカスピアンのやり取りが聞こえた。
グレンストームと他のセントール達はゆっくりとそっちに進んでいく。
私は彼の背中から降りるとひっそり後に続いた。











「生かしておくなんて言ってないぞ!」

「リーピチープ!よさんか!」

「松露とり?邪魔をするからには理由があろう」

「ないよ、殺せ」

「その人が角笛を吹いた」











リーピチープがはっと息を呑む。その時、グレンストームが彼らに声を掛けた。











「では角笛を見せろ。我々は角笛の音で集まった」

「グレンストーム!」











松露とりが足を引きずって立ち上がると、カスピアンのところに這っていった。
そして彼に角笛を見せるように促す。
カスピアンは惚けた顔でグレンストームを見上げていたけれど、松露とりに促されて角笛を見せた。











「そうか」











グレンストームはつぶやくように言うと踵を返した。











「我々の仲間がすぐそこへ来ている。話しはそれからだ」

「わかった」











カスピアンは頷くと立ち上がった。そしてグレンストームの後ろへつく。
緊張した雰囲気が漂っている。だからカスピアンに話しかける機会を失くしちゃった。
どうしようともたもたしていると、セントール達は次々と踵を返してグレンストームとカスピアンの後ろへついていく。
私は彼らの一番後ろへつくと、邪魔にならないように歩く。
その時、突然足をぽんぽんと叩かれた。











「ん?」

「ピーピキークはちゃんと連れて行ってくれたのか」











リーピチープだった。私は彼の言葉に頷くとしゃがんで話しかけた。











「私を信じてくれてありがとう」

「女性には優しく、が騎士の基本だ」

「さすが誇り高きナルニアの騎士リーピチープだね」











私の言葉に彼は胸を張ると、その小さな手でドンと叩いた。











「して、何故私の名前を知っているのか?」

「うーん、こう言えばわかるかな。私はアスランの守人のっていうの」

「!!!」











私の名前を聞いてリーピチープは硬直すると、ギシギシ言いそうな体の動きを見せて私にお辞儀した。
なんかその行動がおかしくて笑いそうになったけど、笑ったら彼のプライドが傷ついちゃうよね。
だから笑うのは我慢しておいた。











「あの方の守人!!!今までの無礼をお許しください」

「ううん、許すも何もあなたはナルニアのために戦う騎士なんだからああでなくちゃ」

「ありがたきお言葉」











リーピチープってもしかしてアスランを崇拝してたりするのかな?
私の正体を知ったら言葉遣いが変わっちゃった。残念。
なんて考えながら、彼と一緒にセントールの後ろをついて行った。












*************

無事カスピアンを保護。
まだ話しかけてませんが、カスピアンの反応はどうなるのかな…?


2010/02/05





77話