「そいつを殺せ!」













どこからともなく強い意志が飛び出した。
仕方ないよね。だってナルニアはテルマール人に滅ぼされたんだから。
だからいきなりテルマール人の、それも王子を救世主として受け入れるなんて出来ない。



昔、白い魔女と戦った時は今と状況が違かった。
だってペベンシー四兄妹は違う世界からやってきたアダムとイヴの子供。
敵側の人間じゃなかったし、エドマンドが白い魔女に加担した時もアスランがいたから大丈夫だった。













でもカスピアンは敵であるテルマールの王子。













「その角笛はナルニア人から盗んだのだ!」

「盗んでない」













ニカブリクの言葉にカスピアンは角笛を強く握りしめて言い返した。
彼は怒りを抑えて歯を噛みしめている。













「盗んでないだと?」

「テルマール人が奪ったものは?」













鼻で笑うニカブリクに続いて言葉を放ったのはアステリウス。
彼はナルニア人たちをカスピアンにたきつけようとしている。













「住みか!」

「自由!」

「そして命!」













アステリウスにのせられてナルニア人たちが叫ぶ。
それを聞いたカスピアンは治まった怒りとは別に悲しみが溢れてきたようだった。













「全て私に責任があると?」

「そうとも。罰を受けろ」













ニカブリクは徹底的に彼を否定する。
それに怒ったリーピチープが剣を片手に前に飛び出してきた。













「笑わせるなニカブリク。お前の先祖は白い魔女に味方したんだ」

「こいつらを追い出すためならまたそうする」













リーピチープの細い剣を長い爪で払いのけて睨むニカブリク。
彼の次の言葉を止めるように松露とりが出てきた。













「魔女が生き返らなくて何より。

この人をアスランと戦わせる気か?」

「「「そんなこと!」」」













松露とりの言葉にナルニア人たちは否定する。
それを見回した彼は言葉を続けた。













「我々は覚えている。アダムの息子が―王であった時だけナルニアは平和だった」

「何故テルマール人を俺たちの王に?」

「「「そうだ!」」」













納得のいかないニカブリクは問う。ナルニア人たちも頷く。
するとカスピアンが目の奥に小さな炎を燃えたぎらせて言う。













「君たちを救える。

この森の向こうでは私は王子だ。テルマールの王位継承者だ。私が王位につけばナルニアと和平を結べる」

「そのとおり。ついに時は熟した」













グレンストームが一歩前に出てカスピアンを見た。
そしてナルニア人たちを見回して夜空を見上げる。













「私は毎晩空を見る。アナグマは覚えるのが務め、私は見るのが務め。

勝利の星タルバと平和の星アランビルが天空で出会ったのだ。

地上ではアダムの息子が再び我々に―自由を取り戻してくれると言う」

「できるのか?本当に平和を取り戻せる?絶対に?」













木の上でそれを聞いていたリスさんがちょろちょろと動きながらカスピアンに問う。













「二日前まで私は信じなかった。喋る動物や―ドワーフやセントールの存在を。

でも君たちはこんなに大勢いる、テルマール人の想像を超えて。

この角笛が君たちを私を結びつけてくれたのだ。

共に力を合わせ奪われたものを取り戻そう」

「あなたが率いてくださるなら、息子たちも私も―…剣を捧げて戦おう」













カスピアンの言葉に感銘を受けたグレンストームが剣を抜き、空に掲げた。
それを見て彼の息子や他のセントールたちも剣を掲げる。

するとそれにならってセントールの左右にいる者たちがどんどんと武器を掲げていったの。













「俺たちは命を捧げます。無条件で」













最後にリーピチープが剣をくるりと回してお辞儀をした。
横にいた松露とりはにっこり笑うと、すぐに表情を戻してカスピアンを見上げた。













「ミラースの軍勢が迫っています」

「やつらと戦うならより多くの兵と武器が必要だ。敵は時期ここへ」













カスピアンはミラースの軍から武器を盗むことを決めたようだった。













「そうだ、ここに僕とは別にテルマール人が来なかったか?」

「テルマール人…?…のことですか、ならあそこに」













カスピアンは私のことを忘れてなかったんだ。良かった〜……なんて思ったのも束の間、そういえば形的に落馬した王子を見捨てて逃げた臣下の者になってんじゃない!?
切腹!とまではいかないだろうけど、カスピアン怒ってるかも。













「そうか、無事だったんだ……といってもは強いから簡単には死ななそうだけど」

「言ってくれますね、王子」

!」













怒ってるかも…とは裏腹に、カスピアンは私の無事を確認すると両手を広げて私を抱きしめたんだ。
それにかなりびっくりした私は思わず硬直しちゃった。













「王子、苦しい…」

「え?あ〜すまない。あまりにも嬉しかったからつい。それにしても良かった。森の魔法の力か馬から降りれないようだったから心配してたんだ」

「私が馬から降りれないことわかったんですか?」

「ああ、止まれとか叫んでいたしね。よくここに来て助けてもらったね。テルマール人だから危なかっただろう?」

「あ……それは……」

「王子、こちらへ」













私が自分の事を説明しようとした時、向こうの方から松露とりがカスピアンを呼ぶ声が聞こえた。
そっか、作戦会議かな。













「ああ、今いく。じゃあまたあとで、

「はい」













私の正体を知ることもなく、カスピアンは行ってしまった。
正体教えなくて大丈夫かな、これから。













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無事カスピアンと再会しました!
置いて逃げたような感じだったのに、カスピアンは怒ってなかった〜(笑


2010/02/13






78話