あの後、結局私は突撃隊に配属された。
カスピアンは自分達と同じ潜入隊に入れるべきだって言ってくれたんだけど…またエドマンドが反対してくれちゃって。
せっかく行くことを許可してもらったし、あんまり我儘言うのはよそうと思ったの。
突撃隊はグレンストームとアステリウスと一緒の隊。
私達はテルマールの城下街門前に待機していた。
「まさかがこっちに来るなんてな」
「ああ。王と一緒の部隊か、ルーシー女王と共にアスラン塚に残られると思っていました」
アステリウスとグレンストームは私を何度も見て、瞬きをした。
さも、ここにいるのが不思議だという風に。
「うん。ピーターに出撃自体止められるかと思ったんだけど…」
「だけど何だ?」
アステリウスが興味津々に促す。
「なんていうか、そのこと以外で怒ってて……それで私の出撃をやけっぱちで認めたっていうか…」
なんだか上手く言い表せない。
彼が何かで怒ってることだけはわかったのに、その原因がわからなかった。
「ほう…」
グレンストームが考え込むように顎に手当てているのに反して、アステリウスはニヤニヤしながら私を見ていた。
やっぱしミノタウロスがニヤニヤするのは気持ち悪い。
「何だアスス、ニヤニヤして。ミノタウロスのニヤニヤ顔程、気持ち悪いものはないぞ」
その言葉にアステリウスは目を吊り上げた。
う〜ん、その顔は凄く恐い。
「考えてみろグレン。ピーター王にとって、カスピアンはライバルだ」
「うむ?」
「全てにおいてだぞ」
「そうか!」
アステリウスの考えがわかったらしく、グレンストームは大きく頷いた。
そして二人で私を見る。
でも、私には全く意味がわからない。
ピーターとカスピアンがライバル…ねぇ。
「、私にも昔同じようなことがありました」
「グレンストーム?」
「女一人と男二人がいたら、必ず起こるかもな」
「アステリウス?」
色々言われるから、頭の中がこんがらがってしまう。
私が考え込むと、二人は顔を見合わせた。
「「厄介だ」」
そして同時に言う。
厄介って……私のこと?
「ピーター王はカスピアンにヤキモチを妬いてるんだよ」
それはなんとなくわかる。王としての位置だ。
昔のナルニアの王とこれからのナルニアの王。どっちも王様だから二人ともやりにくいんだろうな。
「立場的なものだよね」
「そうだ。それ以外にもある」
「それ以外?」
アステリウスはグレンストームと顔を見合わせた。
その光景を、この数分で何回見ただろう?
「、お前が原因だぞ」
「へっ!?」
素っ頓狂な大声を出してしまう。
ヤバいと思って周りを見渡すと、整列して合図をまつナルニア人達が、みんなして口に人差し指を当ててシーッとポーズした。
私は両手を合わせてみんなに謝ると、アステリウスを見上げる。
「私が原因?なんで?」
二人だけじゃなく、私の周りにいるナルニア人達全員が、呆れたように目をぐるりと回す。
もう、失礼だなぁ。
「鈍感もここまで来たら罪だな」
「言い過ぎだ、アスス」
「グレンもそう思ってるだろ?」
「まあ……」
申し訳なさそうに私を見る彼に、腹が立ってしまう。
だって、二人して私を馬鹿にしてるんじゃないかって思う。
何が言いたいかわかんないよ!
「もう!答えを教えて!」
痺れを切らして言うと、アステリウスが事もなげに言った。
「ピーター王はに惚れてるんだ」
「……」
あまりにも驚き過ぎて、言葉が出なかったの。
ピーターが私に惚れてるって?どんな…意味?
「とあの四人の王・女王は昔、一緒に戦い、黄金時代を築いたんだろう?その数年の間にピーター王とは何もなかったのか?」
ぐるぐる回る頭で質問をなんとか理解して答える。
「そんなことは…なかった…?」
「疑問系かよ」
「たぶ…ん」
よくよく思い出してみれば、ピーターは私のことを大事にしてくれたし、ヘラクスとダーリンと同じくらい愛をくれた気がする。
私はそれを、ピーターなりの優しさだと思って…
でも、彼らがいなくなる前の日…私が大人になった日。
ピーターは私を欲しいって言って……
「っ…!本人からちゃんと聞いたわけじゃないから、信じない」
「ちゃんと聞いたわけじゃない?ってことは昔、何かあったんだな。
まあ、信じないのは自由だが…。王にはあの気の強いライバル心をどうにか解いてほしいもんだな」
悶々としてる私の心を刺すような鋭さで、アステリウスが毒づく。
私もあの理不尽に怒っているピーターを思い出して頷いた。
「ピーター王とカスピアンは心が通っていません。何か、良くないことが起きるかもしれない…」
グレンストームが城を見据えて呟いた。
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2010/09/07
84話