「ヴァーツラフ兄様がお帰りになるの!?」
「ああ。俺のとこに連絡が来た。」
「僕のとこじゃないのがヴァーツラフらしいね。」
「もうヴァル兄様ったら、そんな皮肉を言わないでくださいな!!
…では、たくさんおめかししなければ!!」
「あ、!!」
「いっちまった。…なんだか…」
「恋人に二年ぶりに会うみたい、だろう?」
「はは、そうですね。兄上はどうなんですか?」
「うーん、でも、また兄妹が揃うのは嬉しいよね。」
「確かに。」
久々に見たクルザンドは、私がここを出た時より栄えていてほっとした。
もしかして、私がいないうちにどうにかなっているのではないかと思ったが、そんな事は余計な心配だったようだ。
あまりにも久方振りだったため、私は街をぶらついてみる事にした。
今年はちゃんと雨が降って作物も出来たのか、出店に並ぶ果物の艶がなかなか良い。
商品の良さをアピールしようと、店の主人が大声を張り上げている。
その横では、妻が果物を切り分けて客に試食させていた。
素晴らしい光景だと関心する。
少し進むと、アクセサリーを売っている店の前にメラニィを見つけた。
気に入ったものがあるのか、ずっとガラスケースを見つめ、そのものに見入っているようだ。
私が後ろから声を掛けると、びくと反応して振り向く。
「ヴァーツラフ様!お、お恥ずかしい所を…」
「いや、何か欲しいものがあるのか?」
「い、いえ。」
メラニィはそう言うと、チラリとケースの中を見た。
「あれが欲しいのか。
オイ、店主!!」
「ヴァーツラフ様!?」
「はいはい…!?ヴァーツラフ様ではないですか!!!どうなさいましたか?!」
店主は私の顔を見て驚いたようだ。私はそれを気にせずメラニィが見たものを指差す。
「これをこいつにやってくれ。で、いくらだ?」
「滅相もない!!お代などいただけません!!」
「いや、絶対に払うぞ。いくらだ?」
「う………3,000ガルドです。」
「よし。」
私は店主に金を渡すと、品を受け取る。
「どうだ?」
「いえ、もらえません!!」
メラニィは必死に抵抗したが、無理矢理持たせた。
最後には礼を言い、嬉しそうに去って行く。
うむ、よかった。
ふと、再びガラスケースを見ると、妹に似合いそうなペンダントを見つける。
カットされた青い宝石のついた銀色の鎖のペンダントだ。
「店主、これも貰おう。」
私はお金を置くと、ペンダントを手に店を出た。
この砂漠特有の暑さ、夜は打って変わった様に寒くなるクルザンドの気候。
好戦的だが暖かい人々。
何もかもが久方振り過ぎて、新鮮だ。
そして、どれも私の大切なものたちだ。
なんだか、妹に会うのが楽しみになってきたな…。
城門に着くと、兵士達があたふたして敬礼する。
もしや、ヴェスティクス兄上に出した手紙が着いてなかったのでは…。
しかし、その心配はすぐに消えた。
城の入口に見覚えのある人影があったのだ。
最愛の妹の。
妹は私に気付いたのか、ドレスの裾を持ち一目散に駆けて来る。
そして私の目の前で止まると、にこりと微笑んだ。
「兄様、お帰りなさいませ!!」
「か?」
「はい、そうですわ。」
思わず確かめてしまったのは、遠くからは見覚えのある人影だと思ったのだが、近寄って来た本人を見ると…
二年前とはえらく違う…
なんというか…もう可愛いという言葉は似合わなく、美人という言葉しか合わないような…
「大人になったな…。」
そして、美人になった。
その姿を見れば、さすがの私もドキリとする。
「うーん、皆にもここ一年ですごく変わったと言われますが、私にはわからないのです。」
「そう…なのか。」
本当に変わった。
なんだか私の知らない女性になってしまった。
「兄様…?」
「いや…ここではなんだ、中に入ろう。」
「はい!!」
は、本当に変わってしまった。
見た目に面影は残っているが、やはり、大人になってしまったと言うのが妥当だろう。
ふと見下げた妹の首に、サジェからの指輪がチェーンに通して下げられているのに気付く。
きっと、妹の指に嵌らなくなってしまったのだろう。大事そうに首から下げられている。
― は、サジェと共にいるのか。
妹がまだあの悲しみを引きずっているのかと思うと、悲しくなった。
夜になると、この微笑みは消え、しとしとと涙を流すのだろうか。
サジェを想い、悲しみに暮れるのだろうか。
そんな指輪を見ていると、自分の買ってきたペンダントなど、出せるはずも無い。
「兄様、私の顔ばかり見て、どうされまして?」
「い、いや。」
何赤くなっているのだ私は。
「さあ、ここで上の兄様達もお待ちです。」
はそう言い、ドアをノックして開けた。
「ヴァーツラフ!!」
「ヴァツ!!」
二人の兄は嬉しそうに笑うと、私を抱こうとしたのでキッと睨んでやる。
すると、「ヴァーツラフらしい。」と長兄が笑った。
久々だったため、私達の会話は弾んだ。
しかし、しきりに質問される遺跡船絡みについてを、巧みに躱さなければならないので、結構大変だった。
成功するまでは、話すわけにはいかない。
そのうち、が何かの用で席を外すと、専ら妹の話が持ち上がる。
「が変わっていて驚いただろ。」
「あぁ。知らない女かと思った。いつのまにあんなになったのだ?」
「ここ一年だね。いろんな貴族青年に言い寄られてるよ。」
「何!?」
「ヴェティも言い寄ってるけどね。」
「何!!!!!妹だろう!!」
私が怒りに任せて立ち上がると、次兄は顔を引きつらせた。
「い、いや。女の好みに兄妹なんて関係ないだろ。」
「大アリだ!!」
私がそう叫んでも何知らぬ顔つき。ヴェスティクス兄上の思考は一体、どうなっているのだ。
しかし、まぁ、私も変わったを見てドキリとしたのは否定しないが。
「それより、ヴァイシスのが問題だろ。」
「そうかも。息子はが大好きだからね。
イベントがあればを相手に連れて行き、そこでを口説こうとする貴族青年達を蹴散らし、を守る騎士を気取ってるんだよ。」
「…どうなってるのだ、お前の息子は。」
そう言うと、長兄はにっこり微笑んで、
「しょうがないよ、が目立つくらいの美人だからね。」
と言った。
…それではなんとも言えないではないか。
「確かに。は母上に似ていて、クルザンドにはいない感じの美人だからな。人目を惹くんだろ。」
…まあ、
の顔立ちはクルザンドの女とは違う。
人を惹きつけてもしょうがないのかもしれない。
「そういえば、は、まだサジェを引き摺っているのか?」
私が聞くと、兄達は微笑んだ。
「引き摺ってははいないな。
…あれは、受け止めたというのが正しいだろう。」
…受け止めた?
「あの出来事を受け止めて、は大人になったんだと思うよ。」
「そうか。」
そういう事か。
何故あんなに大人っぽくなったか不思議だったが、それが分かった気がした。
「さて、そろそろ部屋に帰るかな?疲れたろう、ヴァーツラフ。」
「…あぁ。」
「当分は居れるのか?」
「たぶんな。」
「じゃあ、たくさんの相手をしてやれよ。喜ぶぞ。」
ヴェスティクス兄上はそう言うと、ウィンクした。
二人の兄は、がたがたと立ち上がると、私より一足先に部屋を出て行った。
「…なんだか、なぁ。」
の変化に対応しきれず、私は戸惑ってしまった。
兄としてこれではけないと思いながら、翌日を迎える。
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お疲れ様でした。
途中でメラニィが出て来たり、展開が微妙でしたが(笑)
とりあえず、兄様帰ってきました!!
ヒロインも遺跡船時の姿に変化(笑)
可愛い→美人に。でも中身はやっぱり天然でほんわか。
妹が美人になってて焦るヴァーツラフ兄様を書きたいなぁって思ったり♪
2006/04/12
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