すぅー
すぅー
静かな寝息を聞きながら、私は考え事をしていた。
昔はよくこうやって、テラスで話をし、途中でが寝てしまうのだったな。
今日もそうだ。
姿は大人になっても、きっと何も変わってない………と思う。
「…ヴァーツラフ…に…さま…」
急に名を呼ばれてギクリとするが、寝言だったのか再び寝息が聞こえてきた。
「ふぅ…」
別に何もいかがわしくないのに、何故焦るのだろう。
が愛しい。
そんなこと、妹が産まれた時からずっとそうだったはずなのに。
「明日はパーティーか…。」
私が帰って来たのを祝うために、次兄が企画したようなのだが…。
パーティーは苦手なのにな。
まぁ、次兄の当てつけというか、嫌がらせというか、余興というか。
に群がる男達を見せて、私の反応を楽しみたいだけだろう。
なんたる兄だ。
「あら……」
「起きたか。」
「あっ…ごめんなさい。私がお話ねだったのに…。」
「気にするな。それより、明日の用意をしなくていいのか?」
「…明日?」
「せっかく私が帰って来たパーティーなのだから、たくさんめかしこんでもらわないとな。」
「まぁ、兄様ったら。ふふ。」
ああ、幸せだ…。何度ともなくそう思う。
「兄様、明日は絶対私と踊ってくださいましね!!」
「何!?年頃のお前と踊るなど、身が保たぬ。」
「何をおっしゃるのですか。そうして下さらないと、貴族達がうるさくて、私の身が保ちませんわ。」
…私は虫除けか。
「まぁ、そういうことならいいだろう…。」
私は甘いかもしれんな。
「ありがとうございます!!」
まぁ、妹は嬉しそうだし、良かったと言うべきか。
「ねぇ……兄様。」
「なんだ?」
「良く戻って来て下さいました…。はとても淋しかったんですのよ。」
「ああ、すまない。」
妹の目からホロリと涙が落ちる。
途端、泣かせてしまったという罪悪感で胸がいっぱいになった。
「…」
「ご…ごめんなさい…こんなつもりじゃなかったのです…。」
の目から涙が止めどなく溢れ、ぽたぽたと胸の辺りに落ちる。
私は、手を伸ばして引き寄せると、優しく抱き締めた。
すっぽりと腕の中に収まる壊れそうなくらい華奢な体。
私の腕の中で背を震わせて泣いている。
よしよしと頭を撫でると、堰を切った様に大泣きする。
「、すまない…。」
私は謝る事しかできない。
そして、昔に戻る事はもう…
できないのだ。
「………ごめんなさい……。」
は私の胸からゆっくり離れると、私の顔を見上げた。
泣き腫らした目、悲しそうに笑う顔。
どれもが美しくて、愛しい。
私は無意識に妹の頬に手を置くと、クイと持ち上げた。
瑞々しく光る唇。
きょとんとした顔で私の目を見る。
その深い紫色の目に引き込まれそうになって気付く。
………私は今、何をしようとしていた?
「兄様…?」
すっ頓狂な声を出して、妹は私を呼んだ。
私は急に恥ずかしくなって顔が熱くなる。
一体、私は今、何をしようとしていたのだ?
「いや、すまない。…目が腫れてしまったな。冷やさなければいかん。」
誤魔化すと、私は挙動不審に冷やすものを探し始めた。
「大丈夫です。兄様に余計な心配をかけてしまって、ごめんなさい。」
「いや……。」
「私、明日の仕度をして参りますわ。」
「あ、ああ。」
に私が何をしようとしたかバレてしまったかと思う。
「今日の兄様、とってもお優しくて暖かくて、私はドキドキしてしまいましたわ!!」
妹はそう言うと、笑った。
……良かった。バレてはいないみたいだ。
「では、行きますわね。兄様も私と踊るのですから、ちゃんとした服を用意してくださいましね。」
「分かった分かった。」
「ふふ。」
妹はにっこり微笑むと、テラスを出て行った。
一人テラスに残ると、先ほどのことが鮮明に思い出される。
「…いや、なんでもないのだ。」
忘れようと首を振った。
「きっと、疲れすぎているのだろう。少し休むか…。」
私は小さく溜息をつくと、自室に戻るためにテラスを出た。
私は一体…………
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ヤバ。
展開がヤバくなってきましたね(笑)
今回は少し短め。
次回も少し短めでしょう。
ヴァーツラフの心情編はここで終わり。
次からはいつも通りに戻る予定です。
今回はヴァーツラフの優しさが書きたかったんです!
2006/04/15
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