「俺は反対だ!!」
部屋の中に響く第二王子ヴェスティクスの怒声。
ここは王族の会議室。これから起こるガドリアとの戦争についての会議が行われていた。
参加しているのは、ボラド家全員。
この度問題となっているのは、第一王女の戦参加についてだった。
推薦したのは第三王子ヴァーツラフ。後押ししたのは第一王子ヴァルシード。この二人は直々に戦い方を教えているので、彼女の実力を知っている。
しかし、反対しているのは第二王子ヴェスティクス。彼は、妹の実力を知らない。
「まだ、早過ぎる!!」
「しかしなぁ…。」
「父上!!」
「もやる気だしな。」
「…」
「今回は、一人でも多くの戦士が欲しいところだしな。」
「しかし、に万が一の事があったらどうするのですか!!」
「その時は、見捨ててかまいません。」
の澄んだ声が響く。
「!?」
「でも、そうならないように私は援護にまわります。」
「…」
「ヴェティ兄様…」
「…わかった。俺はもう反対しない。しかし、何が起こっても俺は関与しない。」
ヴェスティクスはそう言い放つと、音をたてて椅子に座った。
「さぁ、ヴァーツラフ将軍、私達はどう戦うのだ?」
王女の一件が無事に片付くと、話は戦術に関してへと移って行った。
作戦会議が終わると、一悶着起こった。
ヴァルシードの息子のヴァイシスが、「が戦うなら、俺も戦う!!」と言い出したのだ。
「お前は駄目だ。」
そう言い放つ父に、彼は食ってかかる。
その時、彼の前までつかつかと歩いて行く女性がいた。
母のエレイナだ。
彼女は右手で息子の頬をひっぱたく。
乾いた音が鳴った。
その場にいた者全員が、エレイナの方を向く。
「いいかげんになさい!!」
「…母上?」
「あなた、今まで訓練をサボってきたのに、戦えるわけないでしょう。最近やり始めて、上達が早いとか褒められて、自惚れるのもいいかげんになさい!!今まで、必死に訓練してきたちゃんとお前とは、力の差は歴然よ!」
「!!」
「お前は、どこまで皆様の荷物になるの?
お前を守ろうとする騎士達が死んでいくのは目に見えています。
こんなにちっぽけな命のために、お前より素晴らしい命が奪われていくのが見えていてよ!?」
「エレイナ!!」
泣きながら叫ぶ妻を、ヴァルシードは止める。
エレイナはハッと気付くと、息子の顔を見た。
全て本当の事。
頭の良い彼はわかったのだろう。
力強く手を握り締めると、無言で踵を返してドアを出ていく。
「ヴァイシス…。」
「…エレイナ、すまない。」
ヴァルシードは妻を抱き締める。
「僕が言わなければならない事なのに。」
すると、妻はふるふると首を横に振った。
「いいえ、母として言わなければならない事もあるのです。」
彼女は夫の手を解き、よろよろと王女のそばまで行くと、王女を抱き締めた。
「ちゃん、あなたを引き合いに出してしまってごめんなさいね。」
「いえ、エレ姉様。」
「必ず、生きて戻ってきてね。あなたは私の大切な妹なのだから。」
「ええ。ちゃんと戻って来るわ。」
二人の姿を見て、周囲の者達は涙を誘われたという。
場所は変わって、ここは王女の自室。
会議なども無事に終わり、各自砂漠を超える用意をしに散らばった。
も他と同じく、自室に戻り用意を始めていた。
この時のために揃えた装備一式。
アーチャー用の軽い鎧。
いざ剣を扱う事になった時のためにと、アーチャー用の鎧の中に忍ばせる鎧。
ヴァーツラフ兄様に見つからないように、剣は持たないが。
ヴァル兄様が言うには、戦いの中で使える剣はいくらでも拾える、との事だった。
弓は、ヴァーツラフ兄様が直々に用意してくれたそうで、あとで取りに行く事になっている。
カチャリ。
「どなた?」
用意が終わりそうな頃、自室のドアが開いた。
そこから顔を覗かせたのは、甥のヴァイシス。
「ヴァイシス…あなた…」
はびっくりして駆け寄る。
ヴァイシスはあまり歳の変わらない叔母に、ひしと抱き付いた。
「な…なんでなんだ。
が戦いに行くなんてっ…
そんな事考えもしなかったからっ…」
彼は涙声で訴えた。
力強く掴まれる服は、今にも破れてしまいそうだ。
男の子だなぁ。
は思う。
そんなに私に負けたくないのかしら。
「俺、を守るためにもっと訓練しておけば良かった!!」
「え?」
「を守ることも出来ないなんて、なんて駄目な男なんだろう…。」
ヴァイシスはぎゅっとを抱き締めた。
痛いくらいに。
「…私に、負けたくなかったんじゃないの?」
が唐突に言い出すと、ヴァイシスが少し体を離す。
「俺、そんな子供じゃないぞ…」
「そうなの?」
きょとんと見つめるに、ヴァイシスは心から溜め息をついた。
「そうだよッ!!!好きな女の子一人守れない男なんて、失格だと思ったんだ。それがすごく悔しくて。
それに、母上がおっしゃった事は全部本当の事だからさ。」
ヴァイシスはから完全に離れると、の目を見て言った。
「キスしたい。く…」
「いいわ。」
はヴァイシスの次の言葉を聞く前に、ヴァイシスの頬にキスをする。
「、頬じゃなくて…」
ヴァイシスがそう言い欠けると、はガシッと彼の顔を掴む。
そして、自分と目が会うように固定した。
「ヴァイシス、わかっていると思うけれど、
私はあなたの恋人じゃない。
叔母なのよ?」
「…」
「家族愛ではないキスを求めるなら、もっと強くなって、もっと賢くなって、魅力的になりなさい。」
は最後まで言い終わると、彼の顔を離す。
「さぁ、わかったなら行きなさい。さぁ!」
ヴァイシスが何とも言えなく悲しそうな悔しそうな顔で自分を見つめるのを、冷静な顔で見つめ返しながら言う。
しばらくの間、二人は見つめ合っていたが、ヴァイシスは諦める様に目を伏せると、静かに部屋を出て行く。
彼の後ろ姿に、は言葉を放つ。
「私は、必ず帰って来るわ。また会いましょう。」
彼は振り向く事なく、出て行った。
「さて、お待たせいたしました。ヴァーツラフ兄様。」
「!?…気付いていたのか?」
ヴァイシスが見えなくなると、は小さな溜息をついて、ドアの影に隠れている兄に声を掛ける。
ヴァーツラフはそれに驚くと、目を丸くしたまま影から出てきた。
「当たり前です。この位分からないと、戦に参加なんて出来ませんから。」
「そうか。…それにしてもあのガキ…。」
「?」
「遅いと思ってきてみれば、あんなガキに捉っているとは。」
「…兄様は、ヴァイシスの事はヴァル兄様のように嫌わないのですね。」
「ガキには興味が無いのだ。」
「ふうん……。」
そう言い放つ兄の顔をニヤリと笑い、は思った。
自分より強い方しか目に入らないようですわね。
と。
「何だ?」
「何でもありませんわ。さあ、参りましょう。」
は兄の腕に自分の腕を巻きつけると、にっこり笑って彼を促した。
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お疲れ様でした。
ヴェティ兄様は優しいですね。
彼ならきっと、妹の実力を知っていても反対していただろうなぁ。
と思うのは私だけでしょうか?
年齢が近くて、めっちゃ可愛い女の子が傍に一人居たら、
やっぱり叔母でも惚れてしまうのかしら。
う〜ん。
それにしても、ヒロイン恐い(笑)
今回の話から、大体五話前後は続き話になりまーす♪
2006/03/28
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