「おいし〜!!」


「ほぉ〜、こがあな味どうやったらできるんじゃ!!」



ノーマとモーゼスが朝食を絶賛している。



彼らはスプーンを手持ちの椀に突っ込み、中身を掬ってがつがつと口へと運ぶ。
そして、幸せそうな表情でその味を堪能すると、再び椀にスプーンを入れた。


無論、今日の朝食がいつもと違うわけではない。


むしろ質素で、野菜などのごった煮にライスを入れた粥みたいなものであった。


はおいしそうに食べている二人を眺めると、自分の椀に目を落として、スプーンを掴み粥を口に運ぶ。



…おいしい…かしら?



そう思うと、もう一度口に運ぶ。


二人が絶賛するほどではない。



がこう思っている中、二人は「おかわり!」と叫んで二杯目に移る。







「その…そんなにおいしいですか?」


食事を担当したフェニモールが、疑う様にノーマに聞いた。


「うん!マジおいし〜よ!フェモちゃん、いいお嫁さんになれるね!!!」


ノーマはそう言うと、少し引きつった顔でイヒヒと笑った。







―  皆、本当は緊張してるのだわ。

   は思う。

   
   セネルもそうだったけれど…






周囲を注意深く見てみるとわかる。

ノーマとモーゼスは食べて紛らわそうとがっついているのが一目でわかるし、
クロエは先ほどからスプーンをずっと見つめている。


また、ウィルとジェイは用意された朝食に手を付ける事なく、綿密に作戦を練っている。
しかし、グリューネだけはにこにこと食べていた。



―グリューネは、すごいわねぇ。



は再び口にスプーンを運んだ。









ガサッ



突然、テントの幕を荒々しく上げて入って来る者がいた。



「ワルターさん!」



その姿を見ると、フェニモールは名前を呼ぶ。



セネル達に緊張が走り、皆が一斉にワルターを見る。



「朝食、お食べになりますか?」



フェニモールは遠慮がちに聞くが、ワルターはそれに答えずスタスタとセネル達の方へ向かってきた。

セネルとモーゼスはキッとワルターを見ると、椀を置いて構える。



ワルターは、それをチラリと見やったが、気を止めずにの前でまで行くと立ち止まった。

そして、座っているの腕をガシリと掴む。




「…来い…」


「え…?」




は何がなんなのか分からず、ワルターを見上げる。

ワルターの前髪は額から少し浮き、綺麗なブルーの両目を見せている。
その目には強い意志が見え、キラキラと深く澄んでいた。



「な、何をしてるんだ!」



セネルは意表を突かれた顔で、叫ぶ。



「ワの字!!何しとるんじゃ!」



モーゼスは殺気を剥きだした。






「…来い!」


ワルターは強く言うと、を無理やり立ち上がらせようとする。


「どうしたの?ワルター。」


はそう言って椀を置くと、ワルターの顔を窺う。


「…」


「…わかったわ。一緒に行く。」


がそう言うと、ワルターは掴んだ手を離し、背を向けて歩き出した。
は静かに立ち上がり、ワルターについて行く。



!」


セネルとモーゼスが同時に呼んだので振り返ると、二人は怒りと心配が入り交じった複雑な顔をしていた。
は心配させないようににっこり微笑むと、手を振った。



とワルターがテントを出て行くと、セネル達はあっけにとられた顔でその場所を見つめる。


「どういうことじゃ…」


モーゼスが口を開く。


「わ、わかんないよ。なんでワルちんがちゃん連れてくの!?」


ノーマがあわわと口に手を当てる。


「知り合いだったのか…?」


クロエは不思議そうに言った。


「…な…なんでなんだよ。」


セネルが悔しそうに目を見開く。


さん…?」


ジェイは、彼らが出ていった方を見つめて、溜め息をついた。











「どうしたの?ワルター。」


二人は救護テントから少し離れた場所に来ると立ち止まった。

はワルターに声を掛けるが、彼はそれに答える様子はなかった。


「…」


「…」


ワルターが喋らないので、彼が喋りだすまで待つ。


「…なぜ、貴様はあいつと一緒にいる!?」


ワルターは突然、不思議な質問をするとに近づいた。

そして、この前のように自分の服の袖での額をごしごしと拭き始めた。


「痛いわ!」


は思い切りワルターの体を押す。

ワルターはふらりとよろけると、半歩下がってキッとを睨む。


「あ、ごめん…なさい。」


は素直に謝ると、ワルターの袖を持ち自分の額に持っていく。
彼はそれに満足したのか、ふただびごしごしと拭きだした。







「あいつって…セネルのこと?」


「そうだ。」


「もしかして、さっき見ていたの?」


「…」


「私がセネルと『約束』しているの、見ていたのね?」


は少し頬を膨らますと、ワルターに背を向けた。


「私がセネルと一緒にいたって、他の皆と一緒にいたって、いいじゃない…」





「…許せん。」


ワルターがぼそりと呟く。


「え?ワルター…なんて…?」





その時、内海から空へと光の柱が現れる。
その光は空高く昇り、美しい。


「…あれは、ステラ?」


は光の柱を見て呟く。


「貴様、ステラ・テルメスを知っているのか?」


ワルターは訝しそうに聞いた。


「ええ。私の意識に話しかけてくるの。」


「…流石、遺跡船と同調しているだけはある。」


ワルターはそう言うと、光の柱を見つめた。


「遺跡船と同調?」


「遺跡船を動かしているのは、ステラ・テルメスの意志だ。」


「そんな!?遺跡船を動かせるのはメルネスだけではないの?」


「…メルネスの、姉だからだ。」


はそれを聞くと、胸が締め付けられるような気持ちになった。




―  シャーリィの姉だから、ヴァーツラフ兄様に利用されている。
   そんな、ひどい!

   ステラだって、シャーリィとセネルと一緒に何気ない毎日を過ごしたいだけだろうに、
   兄様、許せない。


   許せないわよ――――!!







「おい。」


ワルターが呼びかける。


「なに?」


は不機嫌そうに答える。
ワルターは気にせずに続ける。


「なぜ、そんなにメルネスを救いたいのだ?」


「それは…、シャーリィが私を、姉みたいだって言ってくれたからよ。」


「?」


「私、軍に捕まっている時にシャーリィと出会ったの。その時、そう言ってくれたのよ。」


は自分の素性を探られないように出会った時のことを掻い摘んで話す。



「貴様が捕まっていた?なぜだ?貴様、いったい…」


「…」


ワルターはを疑わしそうに見つめる。
その視線に自分の身の上を見透かされそうになる。




「やめて!!


 もう、聞かないで。


 いつかは、明らかになるのよ。


 でも、今ワルターに知られてしまったら私…


 おかしくなりそうよ…」




はそう言うと、

両手をワルターの体に絡ませると強く抱きしめた。
   

「ワルター…」


「…」


ワルターは彼らしくなく拒絶せず、また、意味を深く聞こうともしなかった。
彼は大人しくに抱きしめられると、左手での髪を触る。



「…美しいな。」


こう呟くと、手に力を入れきゅ、とを抱きしめた。


はその行動に驚いたが、この刻を胸に刻もうと無言で抱きしめられることにした。





「俺は、前線には出れん。」


「聞いたわ。人形兵士を動かすのでしょう?」


「…」


「シャーリィは、私が必ず助けるから。」


「威勢の良いことだ。」


「私、刺し違えてでも助けるわ。」


「…貴様が死のうが俺の知った事ではない。」


「うふふ、そうね。」


はワルターの言葉にくすりと笑うと、彼から離れた。



「じゃあ、行ってくるわ。」


「…」


「ワルター、死なないでね。」


はそう言うと、ワルターに背を向けて救護テントに向かう。




その後ろ姿を眺めながら、彼は




「お前もだ。」




と呟いた。




***************************


すいません。
どこが本編に沿っている夢小説なんだろう。かなり、
私のオリジになっている気がする!!!!

ま、いっか。(笑)

そろそろ兄様との対決が近づきますね。
ハラハラ…

どうなることやら。

2006/02/19