セネル達は、体力の消耗が激しくならない様に走らず、出来るだけ早足で進んだ。
「まだ見えないのかっ!」
「ウィルっち、落ち着きなよ!」
「これが落ち着いてられるか!!ノーマが迷子になったのとは訳が違う!!!」
ウィルがそう言うと、ノーマは溜息をついた。
「わかるけどさーっ、あからさまに言わないでよね!!」
そしてべーっと舌を出す。
「この状況を見て、きっとジェイは怒っているわよ?」
「わかってるキュ。でも、オトコには譲れない事があるんだキュ!」
「キュッポ…。」
は地面に膝をつくと、彼らをギュと抱き締めた。
ふわふわな毛が肌に当たってくすぐったい。
「さん…。」
「ん?」
「…後ろから敵が迫ってるキュ。」
「ええ!?」
は彼らをかばう様に前に出ると、弓を構えた。
「近付いてみなさい、射つわ!!」
は構えながら言ったが、何の効果も無く敵はニヤニヤ笑いながら近付いて来た。
「もう〜っ!」
が放とうとした瞬間、敵は空に飛び上がった。
その後ろに見えるのはセネル。
彼は気付かれない様に近付くと、思い切り蹴り上げたようだ。
「セネルさん!」
キュッポとポッポはくるくる回りながら飛び跳ね、全身で嬉しさを表現していた。
「セネル!」
「、大丈夫か?」
「ええ。助かったわセネル。」
はセネルに駆け寄ると、ガバと抱き付いた。
「ラ、!?」
セネルは顔を赤くすると、嬉しそうに困った顔をした。
「セネセネ、やらしいっ。」
「クーリッジ、最低。」
ノーマとクロエがじとりと睨むと、セネルは「なんでだよ!」と言って反論した。
その後、ウィルがつかつかに近付くと、無言で
ボカッ
と拳を奮った。
「いたたた…」
は殴られた所を擦りながらウィルを見上げる。
「心配させるんじゃない。」
そう言ったウィルの顔はくしゃりと歪み、本当に心配していたのだと思い知らされる。
「ごめんなさい、ウィル。」
「わかればいい。」
ウィルの言葉を聞くと、は自分の腕を彼の腕に絡ませた。
「!!」
ウィルは口をあんぐり開け、を見た。その目は驚きで今にも飛び出しそうであった。
ドシン…
「?」
「…あれ?」
地面が一定のリズムで揺れる。
「なんか…近付いて来てる?」
ノーマが振り返って問い掛けた途端、
「うわーっ!助けてくれ〜っ!!」
という声が聞こえてきた。
そして彼らの横を逃げて行く同盟軍の兵士。
「おい!何が起き…」
セネルが言い終わる前に、兵士は本陣に向かって逃げていった。
「あーっ…」
セネルはバツの悪い顔をすると、を見た。
は緊張した面持ちで彼が現れた方向を見ている。
セネルもそれに倣って見ていると、地面の揺れが段々大きくなっているのに気付く。
「………!?」
そこから現れたのは、一匹のドラゴン。
奇声を上げながら彼らに向かって来た。
「あれって…」
『ドラゴン!?』
皆は声を合わせて言った。
モフモフ族の二人は、毛を逆立たせるとブルブル震えて後ずさる。
はそれを見て彼らを促すと、セネル達の後方の岩蔭に隠れた。
「いくぞクロエ!」
「ああ!!」
二人は威勢良く飛び出して行く。
モーゼスはそのすぐ後ろから二人に当たらない様にうまく槍を投げ、ノーマとウィルはブレス攻撃で援護していた。
「大丈夫?」
「大丈夫だキュ。」
「ポッポ達に怪我はないキュ。」
「良かった。…それよりも、ここは危ないからあなた達は後方の本陣まで戻りなさい。」
諭す様に言うが、彼らには効果ない。
「キュッポも戦うキュ!」
「ポッポもだキュ!」
「キュッポ、ポッポ…。」
ドゴーン!!
大きな振動の後、何の音も聞こえなくなった。
「セネルさん達があの怪物倒したのかもしれないキュ!」
「ポッポ、見て来るキュ!」
「ポッポ、むやみに出たら危な…」
「キューーーッ!」
が言い終わる前に、ポッポの叫び声がした。
とキュッポはびっくりして飛び出すと、ポッポを持ち上げて剣を構えているヴァーツラフ兵がを見た。
「ポッポ!!!」
は素早く矢を番えて放つ。
その矢は、ヴァーツラフ兵の腕に刺さり、怯んだ隙にポッポはの方に逃げて来た。
「…囲まれたわ…。」
ポッポを助けようと必死の内に、ヴァーツラフ兵に囲まれてしまった様だ。
兵士達はどんどん迫って来る。
「キューーーーッ!」
「敵に囲まれちゃってるよ!」
「ド畜生ォ。もう間に合わん!」
遠くから皆の慌てた声が聞こえて来る。
― 間に合わない?…ううん、私が囮になって、なんとか二人だけでも助けなきゃ…
「キュッポ、ポッポ、私が…」
バリーン…バリバリ…
突然、迫って来るヴァーツラフ兵達に雷が落ちた。
「雷………!?」
はキュッポとポッポを抱え込むように抱き締めると、ぎゅ、と目を瞑った。
バリーン!!
バリバリ……
雷が止むと、はゆっくり目を開けた。
視界には砂埃と、倒れたヴァーツラフ兵達。
そして、遠くに見える見慣れた人物。
「……ジェイ!!」
***********
おっとー、ジェイ絡みまで行けませんでした。
何度もモフモフを抱き締めていいなぁ、と思ってみたり♪
次回こそジェイ絡みで☆
2006/05/19
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