「皆さん、ご無事で何よりです。」
フェニモールは救護テントの外で彼らを待っていた。
「あたし達は頑丈だかんね!」
「それは、ノーマだけだろ。」
「セネセネ、一言多いっ!!」
フェニモールはくすくす笑うと、を見た。
「無事でなによりです。さん。」
「ありがとう、フェニモール。…ところでワルターは?」
の言葉にワルターの名が出て来ると、セネル、ジェイ、モーゼスの動きがピクリと止まった。
「え、あの、皆どうしました?」
はそれに気付くと、三人の顔を見て心配そうに聞いた。
「いえ、何でも。」
「いや…別に。」
ジェイは他方を向き、セネルは明らかに機嫌が悪くなった。
「ちゃんは罪作りだな〜っ。」
「何でだ?」
「クーはわかんなくていいよ。」
遠くでノーマとクロエがボソリと言った。
「ワルターさんは人形兵士を連れてヴァーツラフ軍の兵を一掃しようと戦場に残っています。」
フェニモールが周りを気にせず言ったので、気まずそうなはホッとした。
「そうなの。無事そうでよかった。」
「!」
が言い終わるやいなやモーゼスがを呼んだ。
「はい?」
がびっくりしてモーゼスを見た。モーゼスはいつに無く真剣な顔で彼女を見ている。
「どうしました?」
「ちょっと来るんじゃ!!」
モーゼスはつかつか彼女に近寄ると、腕を引いてテント裏にを連れ込んだ。
「モーゼス?」
モーゼスがあまりにも長い間真剣な顔つきで自分を見つめるので、はとてもドキドキした。
「どうし……」
が言いかけた瞬間、モーゼスは彼女を抱き締めた。
何の前触れも無く急に。
いや、彼に似つかわしくない行動が前触れだったのかもしれない。
しかし抱き締められる事に動揺するではないので、彼女は優しくモーゼスの背中を撫でて再び彼の名を呼んだ。
「モーゼス?」
モーゼスは重そうな唇を開く。
「…は一体誰が好きなんじゃ?」
「え…?」
「ワシはの事が好きじゃ。家族とかそういう理由じゃなく、が好きなんじゃ。」
モーゼスはここまで言うと、抱き締める力を強くした。
モーゼスの細い長身が、を頭から足元までがっしりと包み込んでいる。
彼の体躯は筋肉が出来上がっており、肉の余裕がないほど硬い。
しかし、荒々しさを感じる風貌からは考えられないほど抱き締め方はとても優しい。
その素肌から伝わる人としての暖かみは彼女を包み込み、そして彼特有の自然の匂いがの心を安心させるのであった。
「私は…モーゼスの事をその様に見た事はありません。そして、他の方もです。」
はモーゼスの背中を撫で続けた。
「モーゼスの気持ちはとても嬉しいです。私はドキドキしています。」
「…うそじゃ。」
「うそではありません。私の胸に耳を当ててみてください。」
はそう言うと、胸当てを外して自分の胸を指差した。
「オ、オウ。」
モーゼスはゴクリと唾を飲み込むと、屈んでの胸に耳を当てた。
モーゼスの顔がの胸に当たる。
彼の真っ赤な髪の毛がふわりと腕に触りくすぐったく感じた。
「どう、ですか?」
「…本当じゃ。」
モーゼスはの心臓の音を聞き続けた。
「あの、モーゼス。」
「何じゃ?」
「まだ、聞きますか?」
「オウ。」
「そうですか。」
モーゼスがなかなか離れないので、はそのままの体勢が少し辛くなった。
「あの、モーゼス。」
「何じゃ?」
「寄りかかっていいですか?」
「オウ。」
「ありがとうございます。」
はそう言うと、モーゼスの顔に前のめりに寄りかかった。
「むごっ!!」
途端、モーゼスが呻く。
「!?どうしました?」
はパッと離れると、自分も屈んでモーゼスの顔を見た。
「…………の胸は…デカイのう。」
「……。」
「あっ…いやっ…、はホントにドキドキしちょったのう。」
「はい。」
「疑ってスマンかった!!」
「いえ。
…私、本当に嬉しいのです。でも、すぐにお答えできなくて申し訳ないです。」
はペコリと頭を下げた。
「、男が告白したのに何だか落ち着いちょるな。……よく、こういうことあるんか?」
「えっ!?いえ、そういうわけでは。」
「…あるんじゃな。」
「……え、ええ。でも、モーゼスみたいに真剣に気持ちを伝えてくれた人はモーゼスの他にただ一人しかいません。」
「ほうなんか…。誰じゃ?」
モーゼスが聞き返すと、はにっこり笑って、
「内緒です。」
と言った。
「内緒か…。しょうがないのう。
でも、その想いが遂げられんで良かったわ。」
「………。」
「そいつは今どうしてるんじゃ?」
「…えと、亡くなりました。」
「亡く……スマンかった!!!」
「いえ、大丈夫です。今は皆がいるから、モーゼスがいるから私はとても幸せです。」
が笑うと、モーゼスは目をうるうるさせて抱きついた。
「、好きじゃあっ!!!!!」
「ありがとうございます、モーゼス。」
男泣きするモーゼスの背中を、はいつまでも撫でていた。
「ねぇねぇフェモちゃん、グー姉さんは一緒じゃないの?」
ノーマがフェニモールに話しかけたとき、テントの入り口にとモーゼスの姿が見えた。
「あ、おかえりちゃん。モーすけに何にもされなかった?」
「どういう意味じゃ!!」
「げ!モーすけ、なに目うるうるさせてんの?キモ!」
「キモ!とか言うな!」
「確かに気持ち悪いですね。」
「そうだな。」
「ワレらなあっ!!!抜け駆けしたワシがそんなに羨ましいんか?」
皮肉を言うジェイとセネルに、モーゼスはニヤニヤしながら言った。
「ぬ……抜け駆け!?モーゼス、まさか!」
「モーゼスさん、あなた…。」
ジェイとセネルは目を飛び出さん限りに開けると、モーゼスとを見た。
「?」
は疑問符を頭に掲げながら二人を見返す。すると、彼らは急に心配顔になった。
「じゃがな、先延ばしじゃった。」
モーゼスはクカカと笑うと、席に着いた。
そんなモーゼスを見ながら、ジェイとセネルは胸を撫で下ろす。
「なんだ。」
「心配して損をしました。」
未だに疑問符を並べているを無視して、彼らは勝手に話を終わらせた。
そしても席に着く。
「グリューネさんは、お使いを頼んだらそれっきり…。戦場とは反対の方向だったから、戦いには巻き込まれていないと思いますけど。」
「あ〜迷子になったんだね。」
「きっとそうだな。」
「グリューネならありえますね。」
グリューネが迷っているところを想像して、ノーマとクロエとはくすくす笑った。
「それじゃ、行こうか。」
セネルが立ち上がると、他の皆も一斉に立ち上がった。
「あ、待ってください!」
フェニモールは彼らを呼び止めると、胸の前で手を組んだ。
「海の導きのあらんことを。」
皆がフェニモールを見つめた。
見つめられているのに気付くと、フェニモールは顔を真っ赤にして祈りのポーズを解いた。
「あたしの誠名はゼルヘス、「祝福」です。皆さんの無事を祈っておきました。」
フェニモールは珍しくにこりと微笑んだ。
それに驚きながら、ノーマがセネルに誠名の意味を聞いた。
「その人の本質を示すもう一つの名、だったか?」
「はい。水の民は皆持っているのですよ。」
「…ンネス…。」
が何か呟いたので、セネルが振り向いた。
「どうした、?」
「あ、いえ何でも!」
「そうか。じゃあ、ありがとうフェニモール。」
セネルはそう言うとテントを出て行く。それに皆も続いた。
「よし、行くぞみんな!!!目指すは艦橋最上階だ!!!!!!」
彼らは天高く拳を振り上げると、大声で「オーッ!!」と言った。
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さてさて、いよいよ艦橋に入りますね。
それにしても、モーゼスの告白いかがでした?
モーゼスに抱きしめられた感を味わっていただきたいと
思って書いたのですが、う〜ん、イマイチでしたかね。
次はもっと頑張ります!!!
2006/05/21
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