「ねぇねぇ、あそこに何か掛けてあるよ?」
ノーマはセネルの手を引っ張った。
「なんだよ、今は掘り出しモン見つけてる場合じゃないんだぞ。」
セネルは腕を振りほどくと、無理矢理進もうとする。
「ちょっ…セネセネ!」
「あれは…弓ですね。」
ジェイがノーマの指したものを見て言った。
はそれに反応すると、誰よりも興味を示したようだった。
「弓……?」
はこんな所に弓が掛けあるのを不思議に思い、近寄って行った。
「あ、ちゃん!!」
「!俺達は道草してる場合じゃ…!」
彼らの言葉が聞こえていないのか彼女は弓にどんどん近付き、ついには手に取った。
「これは……!!!」
手に吸い付くようなグリップ、施されている細工。
何もかもが懐かしい。
― ヴァーツラフ兄様が私に下さった弓だわ…。
は感慨に浸ると、弓を見つめた。
「どうした。」
「あ、いえ…。」
「!!素晴らしい弓じゃないか。持って行ったらどうだ?」
ウィルはそう言うと、が今まで使っていた弓を彼女の肩から取ると、弦を外した。
「あ、でも…。」
「こんな事態に置きっ放しの持ち主が悪い。」
ウィルは外した弦をに渡し、が今まで使っていた弓を代わりに立て掛けた。
「さあ行くぞ。」
「…はい。」
は促されるがままに歩き出す。
― 何故私の弓をここに置いたのか。
兄様の意図がわからない。
「なぜ…。」
「なんか言ったか?」
「いえ…。」
― ヴァーツラフ兄様…
はこの最上階にいる自分の兄を思い、弓を抱き締めた。
彼らは急ぎ足でダクトに乗ると、一息ついた。
「どんな部屋に飛ぶんだろう。」
「とりあえず安全な部屋がいいなーっ。」
「ノーマ、それは夢に過ぎないだろう。……クーリッジ、ダクトの中で貧乏揺すりをするのは止めろ。焦っているのはわかるが…。」
「、腹へらんか?」
「しょうがないですね…。」
狭いダクトの中、七人はわいわいと好き勝手に喋る。緊張の表れなのだろうか。
「ごふっ…。」
そんな中、勢い良くパンを口にかき込んでいたモーゼスが、喉を詰まらせてに背中を優しく撫でてもらっている姿が見られた。
それを見たセネルとジェイは、モーゼスの口にもっとパンを突っ込もうとしてウィルに拳骨をくらった。
ゴウン…ウイィィン…
ダクトの揺れが治まると、周囲の景色が動かなくなる。
ここは、先ほどと違った部屋。
何が違っているかというと、
「やっと来たかい。」
目の前にメラニィがいる事だった。
「先回りされたか!!」
皆は武器構えるとメラニィを睨み付けた。
メラニィはその目線を受けると、楽しそうに言った。
「初めてここに来るお前達とは違うんでね。」
ピシンッ
メラニィの鞭が床をはたく。
「コソコソ逃げてんじゃないよ!!」
ビシン!!!
強く恨み篭った音が鳴った。
「ふふ…、久しぶりに会ったっていうのに、つれないじゃないか。」
メラニィはを見た。
の額からヒヤリとした汗が一滴流れる。
ありがたいことに、このやり取りを気付いている者はいない。
「フンッ!粋がってんじゃないよ!!」
メラニィは鞭を鳴らすと、爪術を唱え始めた。
彼女を守る様に出現する、ベア系の魔物達。
「ウィル、ノーマ、援護を頼む!!!」
「わかった!」
「了解っ!!」
彼らは後方で爪術を唱える。
「チアリング!」
「シールド!」
「、シャンドル、私を援護してくれ。ジェイは…」
「僕は、セネルさんとクロエさんと一緒に攻めればいいですね。」
「ああ、頼む!」
かくして戦闘は始まった。
しかし、明らかに形勢は不利である。
「魔物の数が多過ぎる!!」
「クーリッジ、これではメラニィに一撃も出来ない!」
どこからともなく溢れ出す魔物達を切り付けながら、クロエが言った。
「くそぉっ!!」
魔物の一撃を避け、セネルが後方に飛び退く。
「あれっ?セネセネ、ちゃんがいないよ!!」
突然ノーマが叫んだ。
セネルは攻撃を避けながらモーゼスの横を見る。
すると、先ほどまで弓矢で応戦していたの姿がどこにもなかった。
「なっ!?モーゼス、はどこに行ったんだ!」
「なんじゃと!?」
セネルの叫びはモーゼスの耳に届いていない様だった。
「はどこ行ったんだ!?」
セネルが大声で再び叫ぶと、モーゼスは聞き取れたのか周囲を見回し、
「おらん!!」
と言った。
「おらん!!じゃないっ!!!」
魔物がいなければモーゼスを殴りに行く様な勢いでセネルは叫んだ。
「おらんもんはおらん!!……狼破!!!」
モーゼスは応戦しながら叫び返した。
これ以上モーゼスを構っても無意味に感じたセネルは舌打ちした。
「くそっ…、一体どこに行ったんだ!?」
セネルは後方に下がって目を凝らした。
しかし、の姿は見つからない。
「クーリッジ、下がり過ぎだ!!ノーマとレイナードにまで危害が及ぶぞ!」
前方からクロエの叫び声が聞こえる。
セネルが下がり過ぎた事で、彼らの陣形は崩れ、攻撃を防ぐどころか押されていた。
「ぐっ……くそっ!!!!」
セネルは拳を強く握り締めると、応戦するため前方へ走っていった。
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仲間を心配するセネル。
リーダー格はとっても大変ですなぁ。
それにしても、彼女は自由奔放、皆を
心配させすぎですね。
2006/05/25
25話ヘ