「もちろん、カッシェルが隠れるのよ!」




私が嬉しそうに言うと、彼は逆に溜息をついた。





「えーと、あなたは隠れるのの天才なのだから、私にハンデを下さいね。」





カッシェルは「わかりました。」と言って顔を逸らした。
きっと、「隠れるのの天才」というところに顔を赤くしたのだと思うわ。






「ハンデは、一度隠れたらその場所から絶対に動かないってこと。」





私はそう言って念を押す。




「絶対によ!」







カッシェルは無言で頷いた。
彼はしばらく何かを考えていたけれど、急に私を見た。






「…もう一つハンデをあげましょう。」





そして片手を開いた。




「?」




彼はニヤリと笑って言う。






「隠れる時間は五秒でいいです。」





私は彼を見つける自信があったから、それはもう腹が立ったけれどせっかくくれるというハンデをもらわない手は、ないですものね。
私はにっこり微笑むと、了解した。






「わかりました。ありがたくいただくわね。」














そして、目を瞑って五秒を数え出す。








「い〜ち、」









カラリと晴れた日差しが私の肌を刺す。









「にい〜っ」









でも、健やかに吹く風はヒヤリとしていて気持ちいい。









「さんっ」








思いもかけない人と隠れんぼをする私。








「しい〜」









どんなに心踊る事だったか。









「ごっ!!!…よーし、探しますわよ!!」









私は気合いを入れて探し始めた。


















































、歩が遅れてる。」





クロエに注意されて気付く。
昔の思い出に耽って、思う様にの足が進んでいない。





「あら、ごめんなさい。」




は小走りでクロエに追いついた。







「大丈夫なのか?」




「ええ、大丈夫。ちょっと色々思い出してて。」




「それならいいが。」






クロエはふふと笑った。






「一体、どんなことを思い出していたんだ?」




「昔ね、故郷で隠れんぼをしたことを思い出していたのです。」




「ふーん、隠れんぼか。私も、よくやったな。」






クロエは遠くを見た。






「クロエも?」




「ああ。同じ騎士の家系で仲の良い兄妹がいたんだ。彼らの家に行って、よくやったよ。」




「へぇ〜。クロエも隠れんぼをするのですね。」




「…私をどういう風に見ていたんだ、。」






クロエは私をじろりと見ると笑う。







「ふふ、どうでしょうね。」



「お、この!」






私達が笑い合っていると、






「緊張感が足りとらんぞ!!」






とウィルが怒った。彼らは拳骨が飛んで来ないことに感謝したが、一応、肩を竦めて謝った。




















「魔物だ!!」




セネルが叫ぶと同時に、の隣りにいるクロエが飛び出していった。




「ちゅうも〜く!」




ノーマの声が聞こえる。ノーマは新しい術を覚えたのか、楽しそうに放っている。




「苦無!!」




セネルとクロエの間を縫って、ジェイの苦無が飛ぶ。

苦無は魔物の足を止め、他の皆はそれを攻撃して押していった。





戦闘が終わると、が木に身を隠しながら弓を射っていた場所から、仲間達はけっこう離れてしまった。


彼女は目を凝らしてみるが、仲間達は見えない。






「あら…皆どこまで行ったのかしら。」





はきょとんとして仲間が進んだだろう方を見た。




やっぱり、誰もいない。





「…急いで追わないとまたウィルに怒られてしまうわ!!」






はそう呟くと、走る一歩を踏み出そうとした。
しかし、


































ドテッ

























「痛……。」





小石に躓いて転んでしまった。
彼女は起き上がって膝を見る。





「あら…擦剥いてしまったわ。」





膝からは血が滴っている。は慣れた手付きで消毒液や薬をつけた。
そして、一通り手当てし終わったところで目線を上げる。





「カッシェル!?」





なんと、目の前の木にカッシェルが寄り掛かってこちらを見ているではないか。
彼はが自分に気付いたのに気付くと、フッと消えて彼女の目の前に現れた。





そして手を出して立たせる。





は驚いた顔で彼を見ると、「ありがとう。」と言って手を添えて立ち上がった。







「将軍閣下があなたを探している。」




「兄様が?」





カッシェルは頷いた。




「兄様が私を…。」

























「…ここは、城の中庭に似てますね。」






カッシェルは周囲を見ながら言った。







「ええ。私とカッシェルが隠れんぼした場所にね。」







がそう言うと、カッシェルは彼女を見た。















「あなたは結局、俺を見つけられなかった。」



「そう。必死に探したというのに。」














彼女は笑った。








「そして、私は探し疲れて寝てしまった。」




「そうです。俺が抱えて将軍閣下の部屋に戻る途中、将軍閣下に見つかって殺されそうになったんです。くく…」




「あら、その時私が弁護したじゃない。」




「弁護……濡れ衣です。」




「でも、その時私がいなければ、ねぇ。」




「確かに、あなたの所為なのにあなたに助けられた。」







カッシェルは、くくくと笑い出した。







「あなたは面白い人間だ。」




「…私は、あなたの方が面白いと思いますけど?」




「くくっ…」






は優しい目でカッシェルを見ると、微笑んだ。






「…カッシェルは、私を殺そうとしないのね。」





はカッシェルの服の裾を掴んで言った。





「殺す?将軍閣下から連れて来いと命令されているのに?」



「命令?」



「はい。…メラニィのやつは殺そうとしたんですね?」



「ええ。」



「…あいつめ。」



「ねぇ、カッシェル。私はずっと気になっていたのだけれど。」



「……。」



「あなたはあの時、一体どこに隠れて……。」




















さーん!!」
















が何か言掛けた時、遠くからジェイの声がした。
彼らは声のした方向を見ると、顔を見合わせた。







「…次は、敵ですね。」




「ええ。」





カッシェルはそう言うと、の前から姿を消した。









































は、追えるはずのない姿を追って空を見つめていた。


























********************

カッシェル相手大暴走。な感じですねこれは(笑)
カッシェル編は次回で終わりです。

実際、カッシェルが普通に喋るセリフがないので、
普通な感じのカッシェルを書くのは楽しい。けれど
難しいです。

とりあえずもう一話、頑張ります☆

2006/05/27




28へ