「!!」
少し歩くとセネルの姿が見えた。
彼はより早く気付いたのか、彼女が呼ぶ前に名を呼んで走り寄って来た。
「ありがとう、セネル。ちゃんとお別れできました。」
「そっか、良かったよ。」
セネルは優しく微笑んだ。
「あっ…ごめんなさい、急いでいるのに。」
「…いや、気にしないでくれ。さあ行こう。」
「はい!」
セネルはの手を取ると、早足で歩き出した。
冷たい廊下を抜けると、先程とは打って変わって真っ暗な広間に出た。
真っ暗といっても奇妙な明かりで照らされ、ぼぅっとするようなコントラストの部屋だ。
「ちゃんとセネセネ、遅いよ〜。
…もしかしてこんな時に宜しくやってたの?」
ノーマはニヤニヤ笑いを向けながら言った。
「宜しく?」
は意味が解らないのか聞き返したが、セネルは顔を真っ赤にして、
「そんな事するか!!」
と噛み付いた。
ノーマは更に意地悪くニヤニヤ笑うと、
「セネセネも男の子だねぇ。」
と言った。
彼女の隣りではクロエがと同じ様にきょとんとしており、その横にいる男性陣はノーマとセネルに交互に軽蔑の目を向けていた。
「セネル、宜しくとは何ですか?」
はきょとんとした顔のまま、セネルの顔を見上げた。
セネルはますます顔を赤くすると、
「そんな顔で聞くなよ…。」
と呟いてそっぽを向いた。
それ以降、がその事について聞こうとすると、セネルは目線を合わせないようにしたそうだ。
「、ワシが教えちゃろうか?」
また、モーゼスがいつもより近くに寄っての肩を抱きながら教えようとすると、どこからか苦無が飛んで来て危うく死にかけたという話もある。
― 。
「…誰か私を呼びました?」
部屋を移動中に突然名前を呼ばれてびっくりしたは、誰に呼ばれたのか分からず仲間に声をかけた。
しかし仲間達は横に首を振ると、彼女を気にしつつ歩を進めた。
― 。
「……もしかして、ステラ?」
― 当たりよ。
の頭に話しかけて来たのは捕らわれているステラだった。
彼女に近付いている証拠か、前聞いた声より澄んで良く聞こえる。
― とうとうここまで来てくれたのね。
「ええ。遅くなってごめんなさい。」
― いいのよ。まだ、シャーリィは無事だから。
「私達は、あなたも助けに来たのよ?」
― そうね…
ステラの声は一度途切れると、吐息を洩らした。
― 私は無理なの、助からないのよ。…だからあなたに来てもらったの。
そしてこう言うと、ステラは悲しそうに笑った。
は実際、ステラを見たことはない。
しかし、彼女が悲しそうに笑ったのは分かった。
何故分かるのかは理解出来なかったが。
― 私にはあなたが必要なの、。
「分かったわ。大丈夫、必ず行く。」
ステラが何のために自分を必要としているのかは分からない。
しかし友達の兄が自分を捕らえているというのに、その友達をこんなに必要にしてくれる。
はどんな困難に代えても、絶対ステラの元へ行くと心の中で誓った。
― 私達は似てると思わない?」
ステラが言った。
― 波長とか、何かが…。私はをこんなにも近くに感じるのよ。
「私もよ、ステラ。」
がそう答えると、ステラは嬉しそうに笑った。
― そうよね!!……ありがとう、。
……そして、ごめんなさい。
「ステラ、なぜ謝るの?」
はステラが謝る意味が分からず、聞き返してしまう。
しかし、ステラは悲しそうに笑うと、「なんでもない。」と言った。
「ステラ、必ず行くから。」
― えぇ、信じてるわ、。
…大好きよ。
「私もっ…」
― 。
ステラは最後に何かを呟くと、の頭の中から消えて行った。
「スティングル!!!」
セネルとクロエの声で、はハッと現実に戻った。
目の前の段を登った向こう側にスティングルはいた。
彼はセネル達を見回すと、「奥で待つ。」と言って踵を返した。
「待て!!」
クロエが今にも飛び付きそうな勢いでスティングルの背中に叫んだ。
しかし彼は振り返る事なく円形のエレベータに乗って行ってしまった。
「クロエ、ちょっと…。」
セネルはクロエに声を掛けると、部屋の隅に呼び寄せた。
「どうした?クーリッジ。私なら大丈夫だぞ。冷静だ。……今のところは。」
クロエは緊張した面持ちでセネルに語った。
は彼らが話しているのを横目で見やると上を見上げた。
最上階が見えないほど続く階段。
ステラとシャーリィを助けるために、兄に会うために、あとどのくらいの時間がかかるのか。
彼女は階段を先へ先へと目で追って行った。
するとそこへ、先程スティングルが乗って行ったエレベータが降りて来るではないか。
は目を見張ると、エレベータを見つめる。
エレベータは何の音も立てずに静かに降り立った。
はしばらくそれを見ていたが、動く気配がないのを察知すると階段を登って近寄った。
そろそろと足を掛け、体全体を乗せた。
しかしエレベータは動く気配がない。
は「残念。」と呟くと降りようとした。
ガクン
「えっ!?」
エレベータは、降りようとしたを乗せたまま勢い良く昇り始めた。
「あっえっ?」
は慌てて降りようともがいたが、既に地面は遠く降りられる高さではない。
「あのっ皆…」
はできるだけ聞こえるだろう声で仲間を呼んだ。
彼らはに気付いて目が飛び出さん限り驚いた。
「、何やっとるんじゃ!!降りて来い!!」
「バカ山賊!あんな高さから降りられるわけないでしょう!!」
「なら、受け止めちゃる!!」
「あなた、本当にバカですねっ!!」
ジェイはモーゼスにぷりぷり怒るとを見た。
もうどうしようもない高さまで上がっている。
「私、先に行ってますから!!」
はそう行って上を見た。
「ちょっ…さんあなたっ……!!」
ジェイは何か言おうとしたが、言う前に彼女の姿は消えてしまった。
「さんを早く追わなければ!!」
ジェイは焦ると、皆を促した。
ノーマはそれを不思議そうに見て疑問に思ったことを聞いた。
「ジェージェー、何でそんなに焦ってんの?いくらちゃんでも着いたとこであたし達を待つでしょ?」
すると、ジェイは地面を強く踏んだ。
「あの人は先に行く、と言いました。さんの事だから、待つ時は待つと言うでしょう。でも、今回は言わなかった。
…それは、あの人はヴァーツラフのところまで一人で行くという事ですよ。」
「まさかっ!?」
「!!!」
他の皆が慌てる中、ジェイは舌打ちすると、唇の端が切れるほどギリと噛んだ。
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よく読むと、ステラとキャラが少し被ってる気がします。
うーん、波長が合うならしょうがないかしら(笑)
次回はスティングル編?ですね〜。
2006/06/01
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