「セネル、正直お前達がここまで来るとは思ってもみなかったぞ。」








ヴァーツラフは腕を下ろした。










「 ………さあ、見るがよい。これが、滄我砲の力だ!!!」













「!?兄様、だめぇっ!!!!」










が叫ぶのを見ると、ヴァーツラフはニヤリと笑った。
そして、ステラとシャーリィの近くにいる兵士達に合図を出す。



























瞬間、









艦橋の塔から青白い光が発せられ、ガドリアに向かって伸びていく。








とセネル達はそれに目をとられ、その威力に目を見開かずにはいられなかった。
















































ドゴオオォォン!!!













































その光はガドリアの空割山に当たると、凄まじい音を立てて爆発した。









「空割山が……消えた……。」









クロエは祖国の山が一瞬にして消え去るのを見ると、信じられないというような声で呟いた。








「フン。王都を狙ったのに、後ろの山に当たるとはな。」








ヴァーツラフは残念がると、ステラとシャーリィを見た。
彼女達は項垂れたまま、動く事はない。彼は舌打ちすると、セネル達に向き直った。









「何と凄まじい威力なのだ……。」




「信じられん……。」




「これが、滄我砲ですか……。」




「そんな……。ここまで来たってのに……。」








ウィルやモーゼス、ジェイ、クロエが呟くと、ヴァーツラフはカラカラと笑った。










「ククク……。」



「ウソだろ、おい!返事してくれよ!ステラ!シャーリィ!」










セネルは二人の少女の方を向くと、彼女達に叫び続ける。
すると、彼女達の体がピクリと反応した。









「娘二人から、生体反応!まだ生きています!」



「ほう、さすがメルネスの娘と、その姉だ。しぶとさも相当だな。もう一発だ。次こそ王都に当ててやる。滄我砲第二破、発射準備!」








ヴァーツラフは兵士達に合図する。











「そんなこと、させません!!!」










は矢筒から矢を取ると、キリキリと弦を引いた。








「ほう、私がくれてやった弓で私を討つのか?」




「ッ……。」




「お前に、私を討つことができるのか?」












ヴァーツラフは歯を出してニヤリと笑うと、拳を構えて向かってきた。






















「闘神力爆投!!!!」







ヴァーツラフの最初の攻撃で、セネルが後ろに吹っ飛ばされた。
クロエはその攻撃を剣で防御すると、思い切り床を蹴って切りかかった。







「驟雨魔神剣!!!」







クロエの剣から光が発せられ、ヴァーツラフに向かっていく。
しかし、










「ムンッ!」










ヴァーツラフは後ずさって腕を組むと、気合でそれを散開させた。









「くそっ…」









クロエはギリと歯を食いしばると、ヴァーツラフに深く向かって行く。










「クロエ、前に出すぎです!!!」










が叫ぶが、クロエは聞こえていないのかそのままヴァーツラフの懐に入ると、切り上げようとした。









「甘い。」









ヴァーツラフはそう言うと、クロエを蹴り上げた。










「ぐわぁっ!!」










クロエはセネルと同じように吹っ飛ばされた。
ヴァーツラフはマントを手で後ろに靡かせると、「仲間の言うことはちゃんと聞くものだ。」と吐き捨てた。
途端、の顔が赤くなる。











― 兄様……。私は兄様の敵ですのね……。










は深呼吸すると、素早く矢を放った。
何本も何本も放つが、兄はその矢を軽々と手甲で逸らしていく。












、私にはこんな矢、痛くも痒くもないぞ!」










そして、兄はに向かってきた。













バシン!!












ヴァーツラフはを横に退けると、セネル達の中心へと走る。
は退けられた勢いで壁に体を打ちつけた。






倒れているセネルとクロエ、爪術を放とうとしているウィルとノーマ、彼らを守ろうと必死に応戦しようとしているジェイとモーゼス。
全ての仲間がそこに纏まっている。

















― 冥界掌だわ!!















は兄の次の行動を予測すると、体を起こして叫んだ。











「皆、散って下さい!!!!」











しかし、その声は仲間に届くことなく消え去る。
なぜならば、ヴァーツラフが大声でジェイとモーゼスに武帝煉殺拳を放ったのだ。


この技は連続パンチから冥界掌に繋ぐ技。
そのパンチをモーゼスが受けて、セネルとクロエの元に吹っ飛んだ。

ジェイは素早くかわすとヴァーツラフの腕に小刀で切りつけた。













「グウッ…!!!」











相当深く切りつけたのか、ヴァーツラフは低く唸るとジェイを殴り飛ばした。
ジェイは殴られながらもフと笑みを浮かべる。はそれに気付くと目を細めて彼を見た。
彼は痛そうに顔を歪めながら、に優しい目線を送る。
しかしこれが何を意味しているかはには分からず、彼女は困惑する。



















ヴァーツラフはセネル達の前で屈むと、多大なる殺気を放出しだした。










「オオオォォォォォォ…!!」










「あぁっ!!やめて、兄様!!!」











その声を聞いては叫ぶ。
しかし、叫びも虚しくその技は放たれた。

















































「冥界掌!!!!」



















































ドクン







床が脈打った。
ヴァーツラフから強い力の風が発生し、地面にぶつかる。














































ドウンッ…













この音を機に風は舞い上がり、周りにいる者達を巻き込んで持ち上げた。
その中では嵐が起こった様に荒れ狂い、持ち上げられている者達を傷付ける。


やがて風は治まると、持ち上げたセネル達を一気に床に落とした。










「うがぁっ!!」




「ぐぅっ!!」




「きゃぁっ…」








彼らが床に落ちる鈍い音と叫び声が部屋に鳴り響いた。
はその光景を目の当りにして、見ないようにと手で顔を覆い隠した。














「なんていうことを…。」














そしてこう呟くと、肩を震わせた。





























































「どうした、。お前は私と戦わないのか?」







ヴァーツラフは倒れたセネル達を背にして、を見据えた。







「私はっ…。」






は目を上げると兄を見る。
彼はニヤリと笑って彼女を見た。





































「そうか。お前は、お前の夫の時のように、こいつらを盾にして生き残るつもりなのだな。」













































その時、兄の言葉とは思えないものが、兄の口から発せられた。









「夫……?」



仲間の誰かが呟いた気がした。しかし、今はそれどころではない。



























― 兄様が、サジェと私の関係を…冒涜した?















は兄を睨むと、立ち上がる。










「兄様といえど、サジェと私の関係を冒涜するなど許せません!!!!」




「冒涜?何を言っているのだ、本当の事だろう?あいつは、お前を守って死んだが馬鹿馬鹿しい。ただの盾だったではないか。」




「ヴァーツラフ兄様!!!私は、サジェを愛していましたし、サジェも愛してくれていました。彼の行動は、一点の曇りもない愛の証です。」




「お前はそれを利用したのだ。そして、生き残った。」




「そんなこと…結果的にはそうなってしまったかもしれないけれど……私は…、違います!!!」




「違わん!!!」









ヴァーツラフは怒声を響かせると、に向かって拳を繰り出した。





























は固く目を瞑って、顔を守る様に腕を構えた。
しかし、いつまでたっても兄からの攻撃はなく不思議に思う。
でも、恐くて目を開けることはできなかった。































「…ぐうぅっ……!?」









ヴァーツラフは妹に繰り出そうとした拳を、苦しそうに止めていた。


いや、実際は止めざるを得なかったのだ。











「ぐっ………なんだ……これはっ…」










彼はその腕を、もう片方の手で支えると強く握り締めた。
強く握り締めているにも関わらず、その腕の感覚は無いに等しい。











恐怖に慄いていたは、瞑っていた目を恐る恐る開いた。




そこには、腕を押さえながら苦痛に満ちた顔で自分を見る兄の顔があった。











「に…兄様…?」










は彼に手を伸ばそうとしたが、それはヴァーツラフ自身によって軽くはたかれた。










「…くぅっ……手が…動かん……」



ヴァーツラフは床に膝をつくと、苦しそうに呟いた。

















































「…先程、僕が切りつけた際に痺れ薬を仕込ませてもらいました。」









ヴァーツラフの後方からジェイの声が聞こえた。


彼は痛そうに頭を擦りながら、壁に手を付いて立ち上がるところだった。
彼の服はぼろぼろで、白い肌には無数の傷がつき、血が滲んでいる。











「ジェイ!!」










はほっとした声で叫ぶと、彼を見た。
ジェイは微かに微笑むと、ヴァーツラフに言う。











「あなたは僕達に殺されるより生きたままレクサリアに拘束された方が、屈辱的でしょう?



それに…」










彼はチラリとを見た。
















「その方が、さんも救われるでしょうから……。」
















**********************


本編でクルザンド記を出してしまっていいのか悩みましたが、
この話でのヴァーツラフの気持ちとか考えると、避けて通れな
い道だったのです。

…ああ、ジェイ贔屓気味(笑)


ヴァーツラフの想いは、どうやったら救われるだろうか。


2006/06/04




36へ