自分の上に横たわる兄を、は沈んだ面持ちで見下ろしていた。










大好きな兄を葬った自分。





……許せない……。









彼女は必死に涙を堪えながら、満足した顔で眠る兄に愛しそうに触れた。

































































「メルネス!無事か!?」







カツと床がなり、そこに降立ったワルターはシャーリィを探した。
しかしその目に映る光景は異様で、彼の足を止どまらせた。





そこには一番の敵だったヴァーツラフが倒れ、その下には銀髪の少女、そしてそれを恐怖の眼差しで見るセネル達がいた。









「…一体……」







ワルターは最初に発した言葉どおりにシャーリィを見ると無事を確認して胸を撫で下ろした。

そして彼はヴァーツラフの下敷きになっている銀髪の少女の元に行くと、彼女を引っ張り上げた。




彼女の手はヴァーツラフの血で真っ赤になり、それは彼女がヴァーツラフを葬ったことを物語っていた。








「貴様が、この男を殺ったのか?」







ワルターが聞くと、はこくんと頷いた。










「…なのに、何故奴等はお前を蔑んだような目で見ているのだ?」







再び問うワルターの言葉にはビクンと反応すると、セネル達を見た。



彼らは一歩も動くこと無くを見ていた。









その視線は、軽蔑に溢れている。








それに耐えられなくなったは顔を逸らすとボソリと呟いた。






























「私はこの人の妹なのに、自ら進んで殺したから…。」





「貴様がこの男の妹!?」











ワルターは驚きに目を見開いて彼女を見た。
はその視線を真っ直ぐ受け止めると、頷く。











「だから、ワルターも…。」










が言いかけたが、ワルターの言葉がそれを遮った。









「…貴様は、間違えたことはしていない。」









そして彼は、の肩を抱くと立ち上がらせた。











「あなたは、私を軽蔑しないの…?」





「言ったはずだ。貴様は、間違えたことはしていないと。」










ワルターは彼女の肩を抱きながら、セネル達の方へと歩いて行った。







































セネル達はから目を逸らして滄我砲の機械を見た。
機械は次第に音を強くし、今にも発射寸前だ。






シャーリィは皆の不安そうな顔と、姉の青白い顔を見て意を決した様に立ち上がった。
そしてワルターに近寄ると、を支えている彼の腕を掴んだ。










「ワルターさん、何か打つ手はないんですか?」





「メルネス……それは……。」





「ワルターさん!知っているなら教えてください!」





「メルネスが船の全てを操れるなら……。あるいは……。」








ワルターは言いにくそうにシャーリィから目を逸らした。
シャーリィは一瞬目を伏せたがセネルに向き直ると、







「お兄ちゃん、わたし、やってみる。」








と言った。セネルはびっくりして問う。







「な、何を?」




「もう一度装置に身体をつないで、制御できるかどうか、試してみる。」




「シャーリィ!」







シャーリィは悲しそうに笑うと祈るように胸に手を当てた。








「わたし……メルネスだから。わたしにしか、できないから。


心配しないで、お兄ちゃん。」









そしてこう言うと、自ら装置に繋がれた。






























































「ワルター、ありがとう。」




「…なにがだ?」




「さっきの言葉、私救われました。」




「そうか。」





「でも私、大切な仲間達に嫌われちゃった…。」






は緩やかに微笑むと、悲しそうに言った。
ワルターはいたたまれない気持ちになり、彼女を見ることができなかった。
彼は彼女を見ない様にと、機械に繋がれているシャーリィを見上げた。





































































ゴウンゴウン…






ゴウン…














装置はシャーリィに反応した。
しかしそれ以上のことは起きず、シャーリィの顔に焦りが見え始めた。













ゴポッ…








「うっ!」





「シャーリィ!」







装置に変化が見え始めると、中のシャーリィが苦しみだした。
そして、








「きゃああっ!」








彼女は大きく体を震わせると、大きく叫んで装置から外れた。







「大丈夫か!?」




「どうして……。どうしてだめなの?どうして止められないの!」




「シャーリィ!」




「私には、やっぱり力がないの?肝心なときに役立たずなの?あのときすべて失ったっていうの!?……どうしてっ!?」












シャーリィは目に涙を溜めると、それを一気に流しながら叫んだ。

何も出来ない自分に、大きな憤りを感じたのだろう。


セネルはそれを優しく包みながら、シャーリィを抱きしめた。































「どうしようっ!もう、間に合わないよ!!」





ノーマの泣き言が部屋に響く。

















彼らはその瞬間を待つように、喉をゴクリと鳴らした。
































































 ― ……








   …、あなたの力、少し借りるね。











の頭の中にステラの声が響く。














「えっ…ステラ、私の力って………!?」








問い返すが、ステラの声は返ってこなかった。



























































ゴオオオォォォッ






滄我砲が発射され、ガドリアに向かって伸びていく。








その時、床に横たわっていたステラの体が輝いたと思うと、彼女から発せられた淡い光が滄我砲の光を追い始めた。





そしてそれは、滄我砲を優しく抱き留めた。














は自分の体から力が少し抜けるのを感じると、ガクリと膝を落とす。
ワルターはそれに驚いて彼女を支えると、「ステラ…。」というの小さな呟きを聞いた。










「…?」








ワルターは訝しげにを見ると、顔を上げて滄我砲の行く末を見た。







滄我砲の光は、ステラの淡い光に抱き留められてガドリアから逸れ上空にいくと、








消滅した。








それが消滅したと同時に、浮き上がっていたステラの体も力無く落ちて行く。




















セネルはシャーリィを離し、ステラの方へと走っていった。
そして彼女の体を抱き留めると、強く抱き締めて叫んだ。











「ステラーーーー!!!」
































































「ステラ・テルメス……大した力だ。長きにわたって遺跡船と同調していただけのことはある。」




ワルターはを抱えたまま呟いた。




「ワルター、今、何て言った?」



「お姉ちゃんが遺跡船と同調……?」





セネルとシャーリィが愕然とした顔でワルターに問う。







「そうだ。ステラはただ、意識を失っていたわけではない。自らの精神を船と直結し、遺跡船そのものとなって、海の上を漂流していたのだ。」



「そんな……!」



「信じられないのか?貴様は何度もステラの光を見ているし、助けられてもいるだろう。今までの事を、思い返してみろ。」







ワルターはそう言うと、憮然として溜息をついた。
















「そう言えば……。前線基地で見た光の柱……。」




「え?」




「あれは、ステラのテルクェスと、同じ色をしていた……。」




セネルは思い出すように言った。
その時、クロエ彼の肩を叩いた。




「あれと同じ色の光を、別の場所でも見たぞ。確か……そう、雪花の遺跡だ!あのときクーリッジを助けたのも、ステラさんだったというのか?私はてっきり、シャーリィだとばかり……。」




「私、知りません。」




クロエの言葉に、シャーリィは困ったように呟いた。







「そ〜言えば、ハッちから聞いた話、思い出したよ。セネセネ、崖から落とされたとき、光に包まれて無事だったんでしょ?」




「そうだったの、お兄ちゃん?」






セネルは頷くと、ワルターの方を向いた。







「俺達が遺跡船に漂着したとき、光の柱が立ち上がったのも……?」




「ステラの意志だ。」




「なら……そもそも一番初め、俺達の前に遺跡船が現れたことも……。」




「偶然のはずがない。」




セネルは両手を震わせて自分の顔に当てた。
シャーリィは心配そうに駆け寄る。





「ステラが……遺跡船そのもの……?ずっと俺のことを、守ってくれてた……?」




「お兄ちゃん……。」




「そんな……ことって……。ステラ……何でそこまで!頼むよ。目をあけてくれよ。礼も言わせてくれないなんて、そんなの、ありかよ!」





ノーマとウィルがハッとしてステラに回復爪術を唱えだした。





「ダメだ……衰弱が激しすぎる。」




「いくらブレスをかけても、流れ出しちゃうよ……。」




「そんな!」






その時、ワルターはを離してシャーリィの胸元を指した。







「そうだ、メルネス!お前が持っているブローチを使え!」




「えっ!?」




「そのブローチの石は、かつてお前の命を救ったもの。今度もうまくいくかもしれない!」







シャーリィはブローチを掴むと、祈るようにステラの胸に当てた。










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滄我砲発射ー。
それが消滅したときの髪留めが外れたステラがとっても美しいですよね。
彼女はすごい力を持っていて、セネル達を助けてくれました。

そんな彼女がいなくなるのは、とても悲しい事です。


2006/06/11



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