「ここは…?」
ワルターがつれてきてくれたのは、ベッドがぽつんとある質素なお部屋。
必要最低限のものしか置いてなくて、なんだか兄様の部屋を思い出しちゃう。
「俺の部屋だ。」
「…ワルターの部屋!?」
私はびっくりして大きな声を出してしまったので、急いで手で口を覆った。
「何故驚くんだ?」
「…えへ、何でかしら?」
私は誤魔化すように笑うと、部屋の中に入った。
「腰掛けるのはここしかないんでな、ここに座れ。」
ワルターはベッドに座ると、私を呼ぶ。
「うん。」
私は彼の隣りに行くと、そこに座った。
「大丈夫か?」
「うん、大丈夫。ワルターがいなかったら、どうなってたかわからないけど。」
「そうか。無理やり連れて来られたんだろう?」
「無理矢理ではないけど、有無を言わせずって感じかしら。」
「それが無理矢理と言うんだ。」
ワルターは怒ったようにベッドを殴った。
「何で私を連れて来たんだろうね?」
「…それは、メルネスが貴様に会いたがってるからだろう。
大方フェニモールがそれを伝えたに違いない。あいつは事情を知らんからな。」
「…シャーリィが私に会いたいって?」
「…ああ、俺も何度か言われた。しかし、滅多に連れて来るわけにもいかないからな。」
「あら、先を越されたわ。「なんで連れて来てくれなかったの?」ってワルターを責めるつもりだったのに。」
「…やはりな。」
「やはりな。って何…?」
「そのままだ。」
「…ふうん…さすがワルター、私の事わかってらっしゃる♪」
「…馬鹿にしてるのか?」
「いいえ、全然☆」
私はくすくす笑いながら立ち上がった。そして部屋を見回して背伸びする。
「…うーんっ!
…ワルターの部屋って、質素ね。」
「部屋なぞ、寝る以外に使わんからな。」
「そうね。ワルターは忙しいものね。」
「そうだ。メルネスの護衛と、どっかのめそめそした女のお守りがあるからな。」
ワルターはニヤリと笑うと、私を見た。
「…さっきのお返しかしら?」
「さあな。」
「、あとでメルネスの所にいってくれないか?」
「もちろん!シャーリィに会うの楽しみだわ。」
私がそう言うと、ワルターは満足したように腕を組んだ。そして小さく溜め息をつくと、呟く。
「メルネスは姉に会いたいと言うんだ。」
「え…?」
「二番目の姉に会いたいってな。」
「…シャーリィ!!」
その言葉は、飛び上がるくらい嬉しかった。
「…良かったな、。」
「うん!ワルター、ありがとうね!」
「?何で俺なんだ?」
「ワルターのお蔭だからよっ♪」
私はとっても嬉しい気分になって、彼の部屋をピョンピョン跳ねた。
ワルターの部屋を出て、私達はシャーリィの部屋に向かって歩いていた。
水の里の夜は涼しくて静かで、とても心地良い。
「ねえワルター、私に会いに来てくれてた時、どうやってシャーリィ守ってたの?」
「ん?ああ、テルクェスを使っていたんだ。」
「あのガストにも羽にもなるやつ?」
「そうだ。……着いたぞ、ここだ。
メルネス!」
ワルターが呼び掛けると、中からフェニモールの声が聞こえた。
「何ですか?」
「希望の人物を連れて来た。」
中からごにょごにょと喋り声が聞こえたかと思うと、サッと天幕が開いてフェニモールの顔が現れた。
「やっぱりさんだ!入って入って。」
フェニモールはそう言って私の腕を掴むと、グイグイと引っ張った。
「何かあったら呼んでくれ。部屋にいる。」
ワルターはそう言って来た道を戻って行ったので、私は遠慮なく彼女に引っ張られて部屋に入った。
「シャーリィ、元気?」
「さん!!会いに来てくれたんですか!」
「ええ!良かった…一応元気そうね。」
私がそう言うと、フェニモールが「全然なんですよ!」とぷりぷりしながら言った。
「違うよーっ!もー、フェニモールは大袈裟なんだから!!」
「嘘なんです!この子ったら、自分の本当の気持ちを話してくれなくて…。」
「本当の気持ち?」
「はい。…さあシャーリィ、さんには話せるでしょ?」
「えっ…う、うん…。」
シャーリィはもじもじすると、急に悲しそうな顔になった。
「シャーリィ…?」
「…さん、お兄ちゃんは…お姉ちゃんを選んだんですよね。」
…
…セネルが、ステラを選んだ…?
「やっと本当の気持ちを話したわね。」
本当の気持ち…?もしかして…
「シャーリィは、セネルが好きなの?」
「ええっ!!」
私が思わず口に出してしまうと、シャーリィは真っ赤になって顔を覆った。
「さんたら、率直すぎ。」
「あ、ごめんなさい。」
シャーリィはふるふると首を横に振ると、深く頷いた。
「でも私、メルネスだから…」
「…そうやって、メルネスを演じるつもりなの?」
「う…それは…皆を幸せにするために…。」
「自分一人幸せに出来ない子が、皆を幸せにできるっていうの?」
「それは…。」
シャーリィは、ステラに敵わないって思っているのかしら?
…彼女は、もういないのに。
シャーリィはこんなにも元気にセネルのそばにいれるのに。
ステラの分まで、生きられるのに。
この子は…もう…。
シャーリィの気持ちが可愛くてしょうがない。
私には真似できないような女の子女の子な恋心。
私はくすりと笑うと、彼女の横に座った。
ベッドがギシと鳴って、三人の重さに悲鳴をあげる。
それを無視して、私はシャーリィを抱き締めた。
「シャーリィ、あなたが幸せにならないでどうするの?
ステラは、そう願っているのだから。
あなたが幸せになった上で、皆を幸せになさい。」
シャーリィは戸惑うように私を見る。
「お姉ちゃんが…?」
「ええ。そう願ってる。そして、私も!!」
もう一回強く抱きしめるとシャーリィはゆっくりと頷いた。
「…はい。私、やってみます。」
シャーリィは何とかやる気になってくれたみたい。
良かった。
そう思ってフェニモールを見ると、フェニモールはニコニコ顔で私を見ていた。
「フェニモール?」
「…シャーリィは一段落したとして、さんの方はどうなんですか?」
…え?
「私!?」
私がびっくりして大声出すと、フェニモールは面白がって話を進めてくる。
「昼間の、「!?」「ワルター!!」っていうのは、感動的過ぎて驚いてしまいました。」
「えッ…あれは……その…」
「なになに?フェニモール、私にも教えて!!」
「それに最近、ワルターさんが水の里にいなかったのはさんに会いに行くためだったりするんじゃないかと思って。」
「あ…………。」
「ちょっと、フェニモールー!私にも私にも!」
聞きたがるシャーリィを抑えながら、フェニモールは確信を突いてきた。
― イタイ。イタすぎるわね。
本当の事だっていうのがなんていうか、その。
「どうなんですか、さん?」
「……
…ワルターは優しいから、だからね…。」
「…だから好きなんですか?」
フェニモールはニヤリと笑うとシャーリィを盾にした。
私は顔が真っ赤になるのに気付くと、
「違います!!!!!」
と言ってフェニモールを追いかけた。
「お姉さんをからかわないの!!!」
「ふふふっ…!シャーリィ、私お兄さんに手紙届けてくるから!!さんを宥めるの宜しくね!」
「あ、ちょっとフェニモール!!」
「こらーっ待ちなさい、フェニモール!!!」
フェニモールを追いかけようとする私を、シャーリィは必死に止めた。
*
「シャーリィ、お兄さん待ってるよ?」
「うん…。」
「大丈夫?シャーリィ。」
「はい、大丈夫です。」
シャーリィはすっくとベッドから立ち上がると、一歩一歩踏みしめて入り口に歩いていく。
私は彼女の背中をぽんぽんと叩きながら「頑張れ。」と囁いた。
「シャーリィ!!!あんたなら大丈夫!
あんたはかわいい。
誰もあんたにはかなわない。
何よりも、この私が言ってるんだからね!」
フェニモールはそう言うとガッツポーズを決めた。
シャーリィは「え?」という顔で彼女を見る。
「私の誠名を知ってるでしょ?」
「……祝福……。」
「そう。その私が言うんだから大丈夫よ!!」
私は抱きしめた手を離すと、シャーリィの肩を掴んで目を見た。
彼女の目は怯えているようで、震えていた。
無理もないよね。自分の気持ちを告白するのって、凄く勇気のいる事だから。
その相手が、好きな男の子だったりするとなおさら。
「シャーリィ、セネルに真正面からぶつかってきなさい!」
私が力強く肩を掴むと、シャーリィもそれに応えて強く頷いた。
「はい!」
シャーリィは天幕をガサッと開けると、外に歩いていった。
「いきましたね。」
「ええ。ほんと。」
フェニモールと私が、彼女の後姿を見送った直後、突然天幕が開いてワルターが現れた。
「!!!」
「ワルター、どうしたの?」
「どうしたんですか?ワルターさん!!」
私とフェニモールは同時にそう言った。
「フェニモール、を借りる!!!!!」
しかしワルターはそう言って私の手を握ると、天幕の外へと引き摺って行った。
フェニモールはニヤニヤしながら手を振ると、
「ごゆっくりー♪」
と言ってご機嫌そうに手を振っていた。
……ああ、またからかわれるのかしら……。
先が思いやられるわ……。
******************
女の子達、恋の会話をするの巻(笑)
レジェではワルターの部屋はないけど、
質素で必要最低限のものしかおいてないんじゃないかしら?
→(ほしのきがそんな気がしただけ。)
注:ヒロインとワルターは恋人ではありませんー。
2006/06/19
45へ