「ワルター、何かあったの?」
なんだか彼が急いでいるような気がして、私は小走りしながら話しかけた。
でもワルターは答えずにグイグイと私を引き摺っていく。
「?」
― もう、よくわからないわっ。
それに不満を覚えながらも、私は無言で彼に任せて連れてかれた。
しばらく歩いていくと広場に出た。
ワルターは何故かその広場ではなく、広場の横の草むらの中に入って行く。
私は仕方なく彼について行くと案の定、
「いたっ…」
鋭い葉っぱに当たって、足を怪我した。
こういう傷って、あとからヒリヒリしちゃうのよね。
「大丈夫か?」
こんな所まで一緒に走ってきながら、初めてワルターが私に話しかけた。
よっぽどこの先に気にかかることがあるのかしら?
「うん、大丈夫。」
「そうか。」
彼は今度、ゆっくりと歩き出した。
― 気を遣ってくれてるのね。
ぎこちなさがワルターらしくて、その微笑ましい行動にくすりと笑ってしまう。
「なんだ?」
「ううん、なんでもないわ。ふふ。」
「……?」
草を掻分けながら(ほとんどワルターが掻分けて踏みならしてくれたんだけど。)進んで行くと、少し遠くの泉のほとりに人影が見えた。
「ちょっ…あれって!!」
「大声を出すな!」
私は目の前の光景を目の当たりにして大声を出しそうになった。(ううん、出したの。それくらいびっくりしたのだから。でもすぐワルターの手に封じられたわ。)
私達の目の前には、もじもじしたシャーリィと気まずそうなセネル。
― これって…覗きじゃないの!?
「ワルター、これはどういうこと!?」
「これは職務だ。メルネスを不審な輩から守らなくてはいけない。」
…どんな理由よ!!
「職権乱用…。」
「何か言ったか?」
「いいえ、何も。」
私は溜め息をついて、シャーリィとセネルを見た。
「邪魔しにはいかないの?」
「その時がくれば行く。」
「…その時?」
よくわからないけど、覗こうとするワルターの気持ちはわかる気がする。
実は私も、少し気になってたから。
…あ、でもこんな覗きなんていけないわよね!!
「なんで私を共犯者にしたのよ?」
「一番一緒にいても不自然ではないからだ。」
「一人でも良いじゃない。」
「一人だと、見つかった時にメルネスへの言い訳が微妙になる。」
「そう。何もかもシャーリィのためね。」
私が頬杖をつくと、ワルターは唇を少しつり上げて言った。
「怒ったのか?」
「なんで私が怒るのっ?」
「フ…。」
「フ…、じゃないわ!!」
― はぁ〜っ。
「お兄ちゃん、久しぶり。」
「久しぶり、シャーリィ。元気だったか?」
彼らはぎこちなく会話を進めていく。なんだかもどかしくてもどかしくて、やきもきしちゃう。
「俺より気にしてるな。」
「そんなことないわよ。」
「水の里の皆も、私に優しくしてるから。…お兄ちゃんこそ、大丈夫?」
「ああ。シャーリィが元気にしてるなら、俺も元気でいられる。
…それより、何かあったら俺に言うんだぞ?」
「うん。」
「ミュゼットさんていう人に言われたんだ。妹が困ってる時に助けにかけつけるのが、兄ってものなんだって。
シャーリィは俺の、大事な妹だから。」
「…妹だって。」
「そうだな。」
「シャーリィ…可哀相…」
「ほら、ちゃんと聞け。」
「…うん。」
この後の展開、わかったような気がする。
セネルはあくまでも、シャーリィを妹扱いするつもりなんだ。
「この続き、見たくないな。」
「そう言うな。」
私がそう言って目を伏せると、ワルターはぽんぽんと頭を撫でてくれた。
「お兄ちゃん、私ね!…お兄ちゃんに言いたいことがあるの!!」
「シャーリィ…。」
「私…私ね!お兄ちゃんのことっ…!!」
「ダメだシャーリィ!!」
「なんで!?なんでダメなの?お兄ちゃん!!」
「…俺は…ステラのそばにいてやらないと…。」
「あ……。」
…ステラのそばにいてやらないと?もういないステラのそばに?
急に怒りがふつふつと込み上げてきてしまった。
いつもはそんなこと…ないのに。
思わず飛び出そうとしてしまって、ワルターに引き戻される。
「貴様が出て行ってどうするんだ!」
「っ…!!」
どうしてもやりきれなくて涙が出て来た。
― どうして?どうしてなの、セネル!?シャーリィはこんなにそばにいるのに…ステラはもう、いないのに!!
「…泣くな。」
「…泣くわよっ…」
「知ってた?お姉ちゃん、お兄ちゃんのこと好きだったんだよ?お姉ちゃんたらずっとお兄ちゃんの事見てた。私にはわかるもん…。」
「シャーリィ…。」
「私だって……。」
「シャーリィ…、……俺、ステラの事だけじゃないんだ。」
ザアァ…
突然強い風が吹いた。
すると、二人の声がよく聞き取れなくなる。
良かった。
セネルが何か言おうとしてたのを、これ以上聞かなくてすむもの。
でもワルターは、聞こえなくて不機嫌になると、どうにか聞こうと体を動かした。
「…聞こえん。」
「もういいじゃない聞かなくても。」
「そういうわけにはいかん!!こうなったら、口の動きから読むか。」
「ええ!?ワルター、読唇術出来るの!?」
「静かにしろ!!
………俺は…気になって……
……いんだ……………………!?」
ワルターはセネルの唇の動きを言うのを途中でやめる。
そして何故か私の肩に手を回すと、私を抱き寄せた。
「何?なんていったの?」
「聞かないんじゃないのか?」
「そうだけど…。」
「では言わん。ほら……メルネスが顔を背けて走って行くぞ。」
「えっ…シャーリィが!?ワルターは追わなくていいの!?」
「俺が追ってもなんにもならんからな。」
「…そう…。」
私はシャーリィの背中を見ると、セネルに目線を移した。
彼はとぼとぼとシャーリィの後に追いつかないようにゆっくりと歩いている。
「私もシャーリィの所に戻るわ。」
「今は行かない方が…………
いや、俺の部屋に戻ることがあったら声をかけてくれ。」
「…うん。」
私は来た道を戻り出す。ワルターも何か考え事をしながら私の後ろをついてくる。
― シャーリィ、……大丈夫…かな…。
私は心配しながら、彼女の部屋へと向かった。
*************
覗き見ヒロインとワルター。
覗き犯のワルターよりヒロインのが楽しんでる模様(笑)
勇気を奮って告白したシャーリィはすごいと思います!
だって、ずっとお兄ちゃんだったのに。
だからセネルからみれば、シャーリィは妹でしかないのかしら…。
(ほしのきは最近、ワルターとヒロインの微妙な絡みが癖らしい…。)
ついでにワルター絡みはまだ続きます(笑)
2006/06/20
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