「シャーリィ、入っていい?」
シャーリィの部屋の前で立ち止まると、中にいるであろう彼女に声をかけた。
…
でもなんの返答もない。
― おかしいわね…戻っていないのかしら。
「シャーリィ、いないの?」
私が再び声を掛けると、天幕がガサリと開いてフェニモールが顔を出した。
彼女は泣いていたのか目が赤い。
「フェニモール!」
「さん!!…おかえりなさい。」
「ただいま、フェニモール。シャーリィは帰ってる?」
「はい。…でも、今はさんに会いたくないって…。
この前まであんなに会って話ししたがってたのに、なんであの子…。」
「いいのよ。…フェニモールは大丈夫?」
「あっ…はい、私は大丈夫です。でも、シャーリィは…。」
私はフェニモールの口に人差し指を当てると、
「言わなくていいわ。
フェニモール、シャーリィについていてあげてね。」
「はい!あ…さんはどうするんですか?」
「私は…うーん……ワルターの所にでもお世話になるわ。」
「そうですか…じゃあ、また明日。おやすみなさい。」
「ええ、おやすみ、フェニモール。
おやすみ、シャーリィ!」
私は大声でシャーリィにおやすみを言うと、彼女の部屋をあとにした。
「自分の部屋に戻ることがあったら呼んでくれ。」
ワルターがこう言ったのは、こういう事だったのかしら?
もしかして、セネルが言ったことに関係してるとか?
どうなんでしょ?
でも、シャーリィはひどく傷ついたみたい。
それはああ言われれば、誰だって傷つくわよね。
もういない人を想うなんて……わからなくはないけれど。
私は遠い昔に失ったあの人のことを思いだしながら、ワルターの部屋に向かって歩いた。
さっきの突風以来強い風が吹くこともなくて気候もちょうどいい。
そして道は夜虫の鳴き声が響いて、賑やか。
それなのに嫌な感じはしないから落ち着く。
水の里って…本当にいいところ…。
「。」
え…?
心臓がドキンと跳ねる。
「。」
この声……、
ドキドキと鼓動が速まっていく。
「っ!」
「…なんですか……セネル?」
私の名を何度も呼んだのは、セネル。
もう部屋に帰ってたと思ったのに。
…ううん、そんなことどうでもいい。彼は今、私の名前を呼んでくれたんだ。一番私を憎んでもおかしくないだろう彼が。
私はドキドキする胸を押さえ付けながら振り向いた。
「ごめん、いきなり声掛けて。」
「いえ…、何か用ですか?」
彼の顔を見たら、急に体が強張る。
私ったら、何でこんな構えてるのかしら!!これではセネルもいい気分にはならないわ!
でも、セネルはむしろ申し訳なさそうに話し始めた。
「ごめん、俺たちをひどい避け方してるよな。本当は皆、すまないって思ってるんだ。でも、なかなか心がいうこときかない。」
「それが普通です。こんな…、自分の兄の命を奪うような仲間なんて、信じられないでしょう?……私だって、セネル達の立場だったら信じられない。それが普通なのです。」
私がそう言うと、セネルは怒ったように眉を顰めるて歯をギリと噛み締める。
「そんな当たり前のように普通普通って言うなよ!!仲間に普通とかあっていいもんか!!………仲間って、違うだろ?」
「……でも実際、あなた方は私を拒否しています。だから、私だって!!」
「だって…?」
「皆と会うのが怖い、喋るのが怖い……怖いのです!!」
「だからそんな頑なな態度をとるんだな!?」
セネルは無理矢理私の腕を掴んだ。
私はそれを振りほどこうともがく。
「それはっ……セネルだって同じじゃないですか…。」
「違う!」
「違くないです!」
セネルは私から手を離すと、悲しそうに私を見た。
「…は、俺達を信じてないんだな……。」
「!?…それは…」
「あいつは、ワルターは信じてるのか?」
「信じてます!!」
セネルはフと笑うと、私から目を逸らして言った。
「…即答か。……あいつは、のことなんてすぐ裏切るぞ!!あいつが思ってるのは、シャーリィのことだけだ。
ワルターは、信用できない!!」
そして、最後にもう一度、フと笑った。
私はセネルのこのワルターを馬鹿にしたような態度がすごく悔しくて…
パァンッ…
「ワルターのこと、そんな酷く言わないでください!!ワルターは、ワルターは、私にとって大切な人なんです!!!」
私はセネルの頬を思い切りひっぱたいて、茫然としている彼を残してその場を走り去った。
走り去る際、
「なんでワルターなんだよっ…」
というセネルの呟きが聞こえたけど無視した。
なんであんなことを言うの!?
セネルはもっと優しくて仲間を想ってて、あんなこと言うような人じゃなかったのに!!
ステラの死がセネルをあんな風に変えてしまったの?
それとも………私がおかしくなったの?
「もう…やだぁ……。」
私、セネルのこと叩いちゃったよ…
はぁ…。
私、どんどん嫌な子になってく。
とぼとぼあるいていると、ワルターの部屋の前に着いた。
― 呼べって言ってたよね…
「ワルター!」
返事がない。
「ワルター!」
…やっぱり返事がない。勝手に入っちゃってもいいかな?
天幕を開けて中に入ると、ベッドに倒れこんでるワルターを発見。
布団も掛けてない。
私が布団を掛けてあげると、ワルターは「う…。」と言って布団を掴んだ。
ワルターにしては無防備な寝顔。
少しうなされているような感じがするけれど……
―可愛い…。
その寝顔に微笑むと、私は彼の睡眠の邪魔にならないように部屋の隅に座り込んだ。
「はぁ……。私、もうだめなのかな。皆と仲良くなんて、もう無理なのかな…。」
仲間の顔を一人一人思い出す。
あの中にもう一度戻れたら、どんなに幸せだろう。
どうしたら、以前の様になれるだろう…。
どうしたら……?
私はぼーっと考えながら、うとうとと寝てしまった。
ユサユサ…
― ん〜っ?
ユサユサ…
― まだ眠いーっ!
私の体を揺する手を払いのけると、私はごろんと寝返りをうった。
― ん、寝返り?
私…寝返りうてる姿勢で寝てたかしら…?
うっすら目を開けると、目の前にはいつものむすっとしたワルターの顔。
私が状況を良く分からずにニヘラと笑うと、ワルターはクッと笑った。
「俺は…出掛けて来る。、貴様は今日水の里から出るんじゃない。」
「…なんで?」
「なんでもだ。ゆっくり寝てろ。」
「…うん。いってらっしゃい…。」
「ああ。」
ワルターは背を向けると部屋を出て行った。
なんだか、今日のワルターはいつもより…えと…わからないけど、いつもと違う感じ。
あ…でも眠い…
も…ダメ……
私はワルターを見送ると、再び眠りについた。
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とりあえず、ワルターとの絡みは一段落。
そんな彼らに嫉妬するセネルとか、恋するシャーリィとか。
書いててこれからも自分的に楽しめそうです♪
かなりオリジナリティ満載ですがご勘弁を☆
ほしのきはワルターに恋しちゃったよ…(ドキドキ)
2006/06/21
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