、気をつけろーっ!!」







「大丈夫よ、兄様!」






「油断は禁物だ!」






「もう、兄様ったら!!」














あれれ、これは…随分昔の出来事?













!」








「何ですかーっ?」







「そこにいるか確かめただけだーっ。」







「………。」








ヴァーツラフ兄様は心配性だったわね。




この時も、初めて海に連れて来てくれたのはいいけれど、私の心配ばかり。
一定の時間が経ったら声を掛けてくる徹底ぶり。



あれには私も呆れ返ってしまったものね。













それを抜かしたら、あの海の素晴らしさとか気持ち良さとか…


とても素晴らしかったわ。







まるで初めて触れたものとは思えないほど……。



どこかの国の文献に書いてあったけれど、人が海から生まれたっていうのは否めないわね。







だって、それ程優しくて、懐かしい存在だったのだもの。

































「なぜクルザンドには海がないのかしら。残念だわ。
…でもクルザンドに海があったらずーっと海に入りっ放しで、兄様が心配しすぎて毎日見張ってるかもしれないわね(笑)」










私はスィーっと腕を広げて水を掻いた。
初めてなはずの泳ぎも、難なく出来る。







他の国にはプールというものがあると聞いたことがある。
当然水不足のクルザンドにはそんなものはない。
私は泳ぐこと自体初めてなのよ?











…もしかして才能ある?(笑)


























































「きゃっ…」









いきなり何かが足に絡み付いた。
そして、私をどんどん海の中に引摺って行く。














― やっ…助けて、兄様っ…












まだ兄様が私を呼ぶ一定の時間は経ってない。
その時間が経つまでに、私は海の中で呼吸が出来なくて死んでしまうかもしれない!!


















ゴポゴポッ…















― 兄様っ…













































































『汝、我の恩恵を受ける者…』


















― え?
















『汝、我の意志を知る者…』
















― なに…?


















『我の声を聞け













 我の思いを取れ


 








 過ちを正せ……』























― あなたは一体…





















『この度の事、申し訳ない…』


















その声が聞こえた途端、足に絡み付いたものから開放された。
そして何かに体を掴まれて、水面に引っ張りあげられた。































「…げほっ…………兄様!?」









「大丈夫か!?!!」









私を引っ張りあげてくれたのは兄様だった。
兄様は酷く心配した顔で私を覗いている。












「ええ…大丈夫です。」







「大丈夫ではない!こんなところから早く出るぞ!!」











兄様は私を抱き締めたまま浜辺に向かって泳ぎ出した。











「だめ!だめよ兄様。私、まだここにいたいの。」






「しかし…。」






「大丈夫。もうあんなことはないから…。」






「でもな…」






「では、私の気が済むまで、兄様が私を掴まえていてくださいな。」









私がそう言うと、ヴァーツラフ兄様は前髪をくしゃ、と握り








「しょうがない…。」








と呟いた。





















































― あの声は、誰だったのだろう?






  海の声、なのかな…?





















私はあれ以来、海に入ったことはない。







そしてあの声も、あの時以来聞いてない。






溺れた私の幻惑だったのか。







それも…わからない。















































































「うーんっ。」








唸り声をあげながら寝返りをうつ。



ぽふ、と触れた布からワルターの優しい香りがする。














「!?」













ガバと起き上がると、そこはワルターの部屋。
そして私が寝ているのは、ワルターのベッド。












「ええっ、私何でベッドで寝てるの!?



…もしかしてワルター、運んでくれた…?」








うう、なんたる不覚。

こうなれば、ワルターの眠りを邪魔しないように彼が起きた時に運んでくれた事を祈るしかないわ。











…って、









私、朝寝返りをうったわよね?


それって、朝にはもうベッドにいたって事じゃない!?











「ワルター、どうやって寝たのかしら……?ちゃんと寝てたらいいけど…。」









私は大きな溜息をつくとベッドからおりた。
そしてしっかり靴を履いて背伸びする。









「うーんっ!!




…そういえば、ここから?出るなとか言ってたわね。




どうしてかしら……。でも、




約束しちゃったししょうがない!ここにいましょ。」










それにセネルにばったり会ったりしたら、気まずいしね。






私は時間を潰すためにありとあらゆる知ってる歌を歌った。







ここに来る前、チャバに歌ってあげようとしてたんだっけ……、今度会ったら埋め合わせしなきゃ。




そうそう、兄様の魂を鎮める歌も歌っておきましょ。




あとはーっと……



















「……ワルターいつ帰ってくるのかしら。」





私はポツリと呟くと、天幕の近くに寄った。





「外を見るくらい、いいよね。」





だって、つまらないし。
私は幕を掴むと、顔だけ出した。





















「!?」














…………誰も……いない?















外を見ると誰もいなかった。
昨日ワルターに連れられて入った時はたくさんの人がいたのに!!

















― おかしい。おかしいわよ、これ。






  誰も………いないなんて。















私は部屋の外に出た。

広場から入口まで歩いてみたけれど、誰もいない。








いるのは、水の里に滞在してる商人さんだけ。
私はこの状況を把握しようと、商人さんに話しかけた。












「商人さん、水の民の方々はどこに行かれたのです?」





「さぁ。朝からぞろぞろとそろってどこかに行ったみたいだけど?」





「そう…ですか。」











私は考えをまとめるために、一度ワルターの部屋に戻った。














「これ、どういう事なの?」







水の民の方々がいないなんて………絶対におかしい。







それに、さっきシャーリィの部屋を覗いた時、いつもの服が畳んであった。
他の服を着てどこかに行ったってことよね。











「私、どうすればいいんだろう……。」










そういえば、ワルターは部屋ではなく里から出るなって言っていた気がする…。
ワルターが言ってた通りここで待っていた方がいいのかしら、それとも…。









私は途方に暮れた。
彼らがどこに行ったのかもわからないし、セネル達もいない。









「どうしよう…。」

































































 ― 望海の祭壇よ!!























「えっ…誰?」
















急に声が聞こえたけど、辺りを見回しても誰もいない。




















「?」
























 ― 望海の祭壇に行くの!!
   シャーリィを、助けて!!




























…また聞こえた。










この声、聞き覚えがある。
この声って…まさか、
























 ― お願いよ、!シャーリィを止めて!!


































































「ステラ!?」



















































*************


海辺のヴァーツラフ兄様はどんな格好してるんだか。
ほしのき的には普段着より海水パンツ希望(笑)
クルザンドは水不足なのでヒロインは兄様に連れてってもらったのが初めての海です。
そしてあの声はなんだったのか?それは追々…。


2006/06/22




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