「奥深いわね、ここ。」
― ええ。儀式をやるような場所だからしょうがないわ。
…、見て!!
ステラの言葉にハッとすると、前方を見た。
「入口を探せ!!なんとしてもメルネスを捕らえるのだ!各隊前へ!」
そこには、ガドリア軍隊の小部隊がいくつか整列していた。
「ガドリア軍だわ…。」
― 先にいく入口を探してるようね。
…、こっちよ。
「うん。」
ステラはそう言うと、私を導いてくれた。
それは、人一人通れるくらいの小さな穴。
「ステラ、ここに来た事あるの?」
―ないけど、だてに遺跡船と同調していたわけじゃないのよ。
でも、本当の入口は別にあるの。
それを見つけられてしまうのは、時間の問題よ。
「ええ。急がなきゃね。」
私は穴を這い出ると立ち上がった。
― あっちよ、。
ステラは右方向を指す。
私は何があってもいいように弓を構えた。
― 、あそこを登って行って。
「う、うん。」
ドゴーン!!!
その時、後ろから岩を殴る様な音が聞こえた。
「入口を見つけたようね。」
― ………あ、隠れて!!
私は素早く身を隠すと、ステラが警戒した方を見た。
そこには、水の民の方々。
「メルネス様はどうしている!?」
「今だ反応なしだ。大丈夫なのだろうか。」
「今は、反応を待つしかないな。それより、全力でここを守らなければ。メルネス様にこの事は気付かれていないよな。」
「ああ。」
「さあ、行くぞ!!」
彼らは武器を構えて、今にも突破されそうな入口に向かった。
「これが、そうががステラに言った何か起こることなの?」
― …わからないけど。早く、。
「うん。」
私は軽快に階段を登った。
階段を登り終えると、そこは日の光が当たる地上だった。
古びた岩には苔やその他の草が生え、誰にも犯されたことがない様な神秘さがあった。
目線をずらして先を見ると、数人の水の民とフェニモールとマウリッツ殿に囲まれて立つ水の民の服を着たシャーリィ。
…金色の髪の毛が淡い水色に輝き、きれい。
「シャーリィ!!!」
私は彼女の名を呼ぶと走った。
「さん!?」
シャーリィはゆっくりと後ろを向いて私の名を呼ぶ。
彼女の顔は悲痛に満ちて、苦しそうだった。
「シャーリィ!!」
「さん!!」
私がシャーリィに近寄ろうとすると、フェニモールに止められた。
「フェニモール、離して!」
「だめです、さん!!シャーリィは託宣の儀式の最中なんですから!」
「託宣の儀式?」
― メルネスになる儀式よ。
「………。」
「何故君がここにいるのだね。ワルターに聞いたのか?」
「違います!!ワルターは私に何も言っていません。私は自力でここを探し当てたのです!」
― ちょっとむちゃくちゃな言い訳じゃない?
(…いいのよっ。)
「ほぉ、そうか。流石はヴァーツラフ軍の生き残りだ。我らの事をよく知っている。」
「!?」
今までのマウリッツ殿からは想像できない様な言葉が出た。
私は目を見開くと彼を見つめる。
周囲の水の民達は私を見てひそひそと話し始めた。
「長、なんて事を言うんですか!あいつらの生き残りだなんて!!」
フェニモールは私を庇う様にマウリッツ殿に言った。
「いいの!フェニモール!!…本当の事だから……。」
「……え…!?…うそ……。」
私はマウリッツ殿に向かい合うと、静かに深呼吸をした。
「確かに、ヴァーツラフ兄様は知っていたかもしれません。それもあの人が私の兄である限り、私はあなた方に敵視されてもしょうがないとは思います。
しかし私は、自力でここまで来たのです。兄様とは関係ありません。」
「まあ、どちらでもいい…。その娘を押さえておけ。」
マウリッツ殿がそう言うと、水の民の男達は私を拘束した。
「さあ、君はここに何をしに来たのかね?」
私が拘束されたのを確かめると、マウリッツ殿はいつも通りの優しい声で私に語りかけた。
「私は、シャーリィを止めるためにきたのです。
シャーリィ、本当にメルネスになるつもりなの?」
「……はい。」
― あなたはメルネスになるということをわかっているはずよ、と言って。
「…あなたはメルネスになるということをわかっているはずよ。」
私がそう言うと、マウリッツが過敏に反応した。
「殿、君は何を言っているのだ?陸の民の君に、メルネスになることがどんな事かもわからないだろう!?」
マウリッツはそうやって叫ぶと、男達に私の口を塞がせた。
「……。」
― 万事休すね。
…あ、軍の人が来るわ。
(え…?)
その時、さきほどの入口をやぶったのかガドリア軍の小部隊が目の前に現れた。
「お前が、メルネスことシャーリィか。」
ガドリア軍隊長はシャーリィに近付きながら言った。
彼の出現により私を拘束している手は緩み、自由になる。
私は逃げず、静かにこの状況を見守ることにした。
「だ、誰ですか、あなた達…?」
シャーリィは怯えた目で彼らを見た。
「我々水の民の神聖なる儀式を、土足で踏みにじるとは。これが陸の民のやり方か?」
マウリッツ殿がこういうと、ガドリア軍隊長は鼻で笑った。
「相手が人ならば礼を尽くそうが、貴様らはそうではなかろう。
メルネスことシャーリィ、クルザンド王統国と結託し我が国に敵対した罪により逮捕する。」
ガドリア軍隊長の鼻持ちならない言い方が気に食わなくて、私は思わず口を出してしまった。
「水の民の人々は、同じ人間よ!あなた、無礼にも程があるわ!!」
「何だと!?」
ガドリア軍隊長は私の方に振り返った。
「なんだ小娘、口だしするなら人間だとしても斬るぞ!」
「何を言うの!一国の軍隊を担う隊長という者が、そう横柄な態度で接するとは!!」
「聞いていれば小娘!!
………ん?
お前……、長い銀髪に弓………。
もしかしてクルザンド王統国の・ボラドか!?」
ガドリア軍隊長は私の容姿を見て、私の正体を言い当てた。
ガドリアにとって、私は敵対国の者。容姿がバレていたとしても少しもおかしくないわね。
「………。」
「やはりそうか。今日は素晴らしい日だ。我が国にとって脅威の存在を二人も捕らえられるとは。
ふっ…それに、この場を目撃した御蔭でクルザンド王統国と水の民の結託も証明できた。」
彼は大いに笑うと、シャーリィに向き合った。
「さあ、大人しく逮捕されるのだ。」
「……シャーリィを逮捕するですって…?」
フェニモールがぽつりと呟いた。それを問いと感じたのか隊長は答え出す。
「シャーリィとその姉が、例のそうがほうを操っていたとの証拠を、当方はつかんでいる。」
「操るだなんて、シャーリィは被害者なのに!」
「申し開きは我が国の法廷でするがいい。」
ガドリア軍隊長がさらにシャーリィに近付こうとすると、周囲にいた水の民の者達が彼女を庇う様に立ちはだかった。
しかし、ガドリア軍隊長の不敵な笑いのもと、一瞬にして斬り伏せられる。
「あぁっ…!!」
「…なんてことを!!!」
そして最後に残った水の民の女性を斬ろうとするガドリア軍隊長の前にシャーリィが躍り出る。
「やめてっ!殺さないでっ!」
「ばかっシャーリィ!!」
しかしそれを庇うかの様に、フェニモールが彼女の前に出た。
フェニモールが斬られる…!!
…私はその時、あっけにとられたように体が動かなかった…。
「……えっ…?フェニモール……」
「シャーリィ……」
フェニモールはシャーリィに寄り掛かる様になり、シャーリィはそれを支えながら崩れ落ちた。
「うそ…。フェニモール!?フェニモール!!しっかりしてフェニモール、しっかりして!
どうしてこんなこと…!」
「…つい、あんたの真似しちゃったよ…こんなの、あたしらしくないなぁ…。」
「フェニモール!!」
ガドリア軍隊長は不敵な笑みをしたかと思うと、再び剣を翳した。
― 本当はシャーリィも殺すつもりなんだわ!!なんて男なの!?
ステラの悲痛な叫びが聞こえる。
私はすかさず走ると、シャーリィとフェニモールを庇う様に抱き寄せた。
「ぐうっ…。」
背中に走る痛み。
…熱い。
あの時を思い出す。あの時もこうやって、ガドリアの将軍に背中を斬られた。
あの時と同じ……。
…違うのは、目の前に守る者があるということ。
私は、力一杯シャーリィとフェニモールを抱き締めた。
「守るから……。」
「さん!!」
― !!
耳元で、シャーリィとステラの同時に私を呼ぶ声が聞こえた。
********************
フェニモールがッ!!
フェモちゃんは本当に良い子ですよー。
すごい悲しい場面なはずなのに、
展開が早い…。
というか、レジェ自体もここ展開早い気がする。
ヒロインも斬られたーッ!!
2006/06/26
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