― 、!大丈夫!?
(うん…大丈夫。)
私は痛みに耐えながら、ステラの声に応えた。
「さん!」
「大丈夫よ…シャーリィ。…それよりフェニモールを…。」
「…はい。」
「こいつ、邪魔をしおって!!」
ガドリア軍隊長は、二人を庇った私を足蹴にした。
「ううっ…。」
「貴様はここでは殺さん!
クルザンドの者は、我が国民の前で処刑されなければならぬ!それも貴様は、もっとも憎むべきボラド家の者だ!!」
彼はそう言うと、私を掴もうと手を伸ばした。
しかし、
「ぐうっ……なんだ!?」
彼に何かが当たり痛みに手を引っ込めた。
「これは一体……」
空から降りて来るワルター。
ガドリア軍隊長の手に当たったのは、彼のテルクェスだったみたい。
ワルターはここにいる私を見て、心底驚いた風だった。
「…なぜここに……。」
ワルターはそう呟くと、私達の方に来ようとした。
しかしそれは、マウリッツに止められる。
彼らはしばらく小声で話した後、その場で現状を傍観することに決めたようだった。
私は無言でワルターを見つめた。
でも、彼は悲痛な面持ちで私を見るだけで、何もしてはくれない。
…なんで…?そんな辛そうに見るなら、何故助けてくれないの?
そうも思ったけど、彼は来てくれない。
私には……どうすることもできなかった。
私はシャーリィとフェニモールに向き直ると、彼女達を抱き締めた。
「誰も…誰も来てくれない…。」
「シャーリィ…。」
「来てくれたのは、さんだけだよ…。」
「シャーリィ……」
シャーリィは泣きながらフェニモールの肩を抱いた。
「…ごめんね、シャーリィ。ずっと一緒にいるって言ったのに…。」
「フェニモール!!」
フェニモールはうっすらと目を開けてシャーリィに話しかけた。
「フェニモール、こんなの大した傷じゃないよ!すぐ治してあげるからね!」
シャーリィの言葉に、フェニモールはふるふると首を横に振る。
「シャーリィ…耳貸して…、あたしからの、最後の祝福…。」
フェニモールは震える手をシャーリィの頬に添え、にこりと笑う。
「最後だなんて…そんな死んじゃうようなこと、言わないで!!」
「…ほうら、シャーリィ。耳を貸してあげて。」
私は泣きじゃくるシャーリィを促した。
彼女はしぶしぶとフェニモールに耳を貸す。
…きっとそうすることが、彼女の最後を認めてしまうと思ったのね。
…私も認めたくない。でも……
「幸せになりなさい…何がなんでも幸せになりなさい。
全力で…幸せになりなさい……」
フェニモールは最後まで言い切ると、ゆっくりと目を閉じていった。
「フェニモール?……フェニモール!!」
フェニモールの瞳は二度と開くことはない。
「フェニモールまで……。ね、ステラ……。」
― ……。
ステラは何も応えなかった。
「やだよこんなの!ねぇ、行かないで、フェニモールまで行っちゃわないで!私たち、友達でしょ!」
「シャーリィ。」
「さん!フェニモールがぁっ……。」
「うん、うん…」
私はシャーリィを慰めるように背中をぽんぽん叩いた。
「むやみに抵抗するからこうなる。」
静まった祭壇に、ガドリア軍隊長の声が響いた。
「何をっ!?」
私はシャーリィを離して彼に向き合うように立ち上がった。
背中の痛みなんて関係ない。
「こんな…こんな無抵抗な命を取るなんて…。」
「笑わせる。クルザンドも変わらぬだろう?こいつらをどのように扱ったのだ?」
「くっ…。」
兄様がどんなことをしていたのかはわからない。
でも、きっと同じような扱いをしたのかもしれない。
だから私は何も言えなかった。
私が押し黙ると、隣りにいたシャーリィが静かに立ち上がった。
「あなた達は…あなた達はそんなにも私達が憎いのですか……?」
彼女は静かに言った。
「ああ、憎いな。貴様のせいで我が国は存亡の危機に見舞われた。あの時の恐怖、あの時の恨み、決して忘れられるものではない!」
「あくまで私を加害者扱いするつもりなんですね。」
「脅威は取り除かれなければならぬ。貴様達煌髪人は、我々人類の敵だ。」
「敵…あなた方と私達は敵同士……。」
シャーリィは怒りに満ちた悲しそうな顔をすると、目を瞑った。
― 、だめよ!!シャーリィを止めて!!
(え!?)
― あのままじゃ、シャーリィがメルネスになってしまう!!
あれは、あの子が望むものじゃない!!
(ステラ!!どうすればいいの?どうやって止めればいいの!?)
― 何か理由があれば…もしかすると。
(理由!?よしっ…)
「シャーリィだめよ!!戻って!今なら間に合うから……
メルネスは、あなたの望むものじゃない!!
セネルも……あなたを待っているわ。」
私がそう言うと、シャーリィの頬に一筋の涙が流れた。
― ……。
(何……?)
「っ……お兄ちゃんが待ってるのは、私じゃありません。」
シャーリィはそう言うと、瞑想に入る様に口を堅く結んだ。
(……?シャーリィ、どうしたの…?セネルは、あなたを待ってるのに。)
― …それは…。
ステラの声が聞こえた途端、シャーリィの体が眩く光出した。
「…声が、聞こえる。私を呼ぶ声が…。」
「メルネスを呼ぶ声だと!?」
「シャーリィ聞こえるのか、滄我の声が!」
それを待っていたかのようにシャーリィに声をかけるマウリッツ殿。
「聞こえる……滄我の声が聞こえる。」
シャーリィは自分に起こっていることを、不思議そうに呟いた。
「な、何だいつ…?」
ガドリア軍隊長は、シャーリィの変化を目の前にし、恐怖で腰が引けている。
「これが託宣…。
そう…そういうことだったのね。
思い出したよ、フェニモール。どうして私が前に儀式で失敗したか。
あの時、私わかったんだ。託宣の儀式を成功させたらどうなるか。
…だから、拒んだの。自分の意志で儀式をわざと失敗させたの。
だって、儀式を成功させるってことは…、
メルネスとして目覚めるってことは……
お兄ちゃんを、殺すってことだから…!」
シャーリィの呟きに私は驚愕した。
シャーリィがセネルを殺す?
…そんなこと、ありえないはずなのに。
でも、
今のシャーリィを目の前にして、私にはそれがありえないことだとは思えなくなっていた。
シャーリィは、今までのシャーリィではなく、それは…それは多大なる威圧感を放っていて……
私は、彼女を見る事ができないくらいだった。
***********
託宣の儀式場面。シャーリィの悲しみと怒り。
ヒロインの不甲斐なさ。
全部が合わさって、シャーリィはメルネスになってしまいました。
2006/06/30
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