― お願いよ!爪術を使って!!
そうしないと、皆失ってしまう!!
(できない、できないわ!ワルターを攻撃するなんて……
私にはできない!!)
― !!
瞬間、凍えるような寒さに包まれた。
何が起こったのかわからない。だけど、その寒さの中でうっすら目を開けると、
ワルターと目が合った。
彼は、私達に悲しそうな視線を向けていた。
そして、何かを呟いた。
「 。」
「なにっ…。聞こえない…ワルターっ……」
ワルター、何故そんな顔をするの?
あなたの望んだ、…お別れ……なんでしょう?
あなたは一体、最後になんて言ったの…?
(この吹雪は何!?)
― わからないわ…。何かしら。でも、助かったことは間違いないわね。
(うん…)
主の…願いを…
(ステラ、何か声が聞こえない?)
この者達を助けたいという…主の…
― ?聞こえないけど…。
(えっ…聞こえないの…?)
「ぐぇっ…
…いった〜い!!ここどこぉ!?」
「ここは……望海祭壇の入口ですね。どうやら、僕たちは助かったみたいです。
皆さん、無事ですか?」
「オウ無事じゃ!セの字も大丈夫そうだな。」
「…ああ。」
「レイナード、無事か?」
「オレは大丈夫だが…が。」
「セの字、はどうなんじゃ?」
「気を失ってるだけだ。」
私、気を失ってるんだ?
こんなにも皆の声はハッキリ聞こえるのに。
それよりも私、皆を守ろうとしなかった。
絶望して、体が動かなかった。
…最低だわ。
それに、ワルターはやっぱりメルネスの親衛隊長だものね。
彼女が覚醒した今、彼にはそれ以外のことは……考えられないわよね。
私はまた、ひとりぼっちになってしまった。
「そうだ!ちゃん背中に怪我してたよね?ブレスかけてあげないと。」
ノーマはそう言ってくれて、私の背中の血で張り付いた服をペラと捲った。
「!?」
そして彼女は息を呑む。
「ウィルっち、見て!!」
「ん、何だ?」
「ちゃんの背中、バッテンだよ!」
「ばってん…?」
今度はウィルが近付いて来る音が聞こえる。
そしてまた彼も息を呑む。
「これは……!!」
他の皆も集まって来て息を呑んだ。
ばってん?……まさか。
「これは…、新しい傷と交差する様に付いた同じような傷……。それもこれは古い傷だな。」
「痛そう…。」
「もう何年も前の傷のようですから、痛いのはこの傷だけでしょうけど?」
「そんなの、あたしだってわかってるよ!
っ…リザレクション!」
「上の傷は、消えたな。」
「ああ。下の傷はそれ程深い傷だったのだろう。
…がクルザンドの前線で戦っていたのは、本当なのだろうな。」
「………。」
聞きたくない。皆が私を蔑む様な会話なんて!!
「……それは、三年前にガドリアとの戦いで付いた傷です。」
声が出た。
私はこの会話を終わらせられたのを嬉しく思った。
「ガドリアとの戦い……。砂漠のか?」
「ええ。」
私は起き上がると、ノーマを見た。
「ありがとうございます、ノーマ。
危うく背中の傷が増えるところでした。」
「全然おっけ〜。無事で良かったよ!」
私は皆を見回した。
会話は私を蔑む様なものだったはずなのに、皆の目はそうではなかった。
優しい目だわ。
それは兄様を討つ前の皆のようだった。
私は戸惑いながらも、皆をもう一回見た。
すると、遠くから歩いて来る見知った人を見つける。
「グリューネ!!」
私が叫ぶと、皆一斉にグリューネの方を見た。
「えっ?グー姉さん!」
「あら?皆空からひらひらと。とーっても楽しそうねぇ。
ひらひら〜。ふわふわ〜。何の遊びかしら?わたくしも混ぜてほしいわぁ。」
グリューネは自分の腕をくねくねさせて、ひらひら感を表現しようとした。
「今の僕たちをみて、よくも遊んでるなんて言えますね。」
ジェイは私の耳に呟くと、じとりとグリューネを見る。
「グリューネさん、どうしてこんなところに?」
「さあ、どうしてだったかしらぁ?」
グリューネと皆が終わりのないような会話をしている中に、ふわふわと白い物が舞っている。
誰も気付かないのかしら?
私はそのふわふわしたものを取ろうと手を伸ばした。
すると、グリューネが私ににこっと笑って話し掛ける。
「ところで、あなたはだあれ?」
「え!?」
私は戸惑うと困った顔でジェイを見た。ジェイは両手を挙げて左右に首を振っている。
「どうしようもないですね。」と言っているみたい。
ああ、私忘れられてしまったのね。
「私は…。」
私が改めて自己紹介をしようとすると、他の声がそれを遮った。
「我が名はセルシウス。主の求めに従いこの地に現れん。」
…セルシウス?確か、どの年代のものか分からないくらい古い文献で読んだような。
失われた、精霊だったかしら…?
何故そのような者がグリューネに?というか、何で私も言葉が聞こえるのかしら…?
「まぁ、セルシウスちゃんて言うの。はじめまして。」
「私をお忘れか、主よ。」
「どうだったかしらねぇ?ちゃん。」
「えっ…あっはい。」
私はグリューネに忘れられてなかったのを少し嬉しく思うと、急いで相槌を打った。
「私の存在を感知できるのは、主とその娘だけです。」
「まあ、わたくしとちゃんだけなの。困ったわねぇ。」
私も「困りましたねぇ。」と呟く。
すると、後ろでノーマが、「ちゃんもおかしくなっちゃったよ。」と言っている。
…うう、こればかりはしょうがないわ。私も見えるんですもの。
「だったらセルシウスちゃん、しばらく休んでいてはどうかしら?」
「お言葉に甘えます。申し訳ありません。」
「おやすみなさい、セルシウスちゃん。
…あら、セルシウスちゃんの種かしら?」
グリューネは落ちている種を拾うと、瓶の中に入れた。
「グリューネ、今のって……?」
「?あらぁ、何だったかしらねぇ?」
「………。」
グリューネに聞こうとするのは無駄だったみたい。
私は諦めると、皆を見た。
カシャッ…。
音がした方向を見ると、人形兵士達がいた。
「あれは!?ワルターの仕業か!?」
その言葉に胸がズキンと痛む。
「くそっ…あれ?」
人形兵士にクロエが爪術を放とうとするが、出てこない。
「あっ…あれあれ?ブレスが出せないよ!」
ノーマも使えないみたい。
「皆、逃げるんだ!!!」
私達はウィルの合図で、街に向かって逃げ出した。
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ヒロイン、セネル達に溶け込めそう?
ワルターのとった態度に、ドギマギしてみたり。
ワルターは一体、何て言ったのだろうか?
そろそろセネル達との旅の始まり…?。
2006/07/03
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