私はシートの上でもそもそと動いた。
さっきたくさん寝てしまって、あんまり眠くない。ちゃんと寝なければいけないと思うほどいろいろ考えてしまって眠れなかった。







「うーっ…。」






あまりにも寝付けないので、ガバと起き上がる。
周囲を見回すと皆横になってはいるけれど、寝てはいなかった。私と同じようにごろごろ寝返りをうっている。
皆、さっき寝てしまったせいで眠くないのね。









ちゃん、寝れないのぉ?」


「はい。グリューネもですか?」


「お姉さんはいつでも寝れるわよぉ。

 …すー。」





グリューネは私に声を掛けたかと思うと、凄い早さで寝入ってしまった。





…もしかして最初から寝ていたのかもしれない。








「グー姉さん、すごいねーっ。」

「ノーマ。」








ノーマは私と同じように起き上がると、てへへと笑った。









「あたしも寝れなくてさーっ。」

「珍しいですね。」

「うわっ、何ソレ嫌味?(笑)」

「当たり前じゃないですか。」

「おーっ!ちゃんも砕けて来たねぇ。」

「砕けて?」

「うんっ。まーいーやっ、ちょっと話そうよ。」









ノーマはそう言うと、私と背中を合わせに座った。









「あたし、ちゃんに聞きたい事あるんだー。」

「なんですか?」

「いろいろ。あたしが嫌な事聞いたら答えなくていいからさ、質問していい?」

「?いいですよ。」








ノーマは私の背中を押しながらグイーっと背伸びした。








ちゃんてさ、本当にあのヴァーツラフの妹なんだよね?」

「えぇそうですよ。」

「似てないねぇ(笑)」

「ふふ、兄様は父様似なのです。私は母様似。私達二人はどちらかに偏って似てますが、あと二人の兄は父様と母様を二で割って足したような感じです。」

「へーっ!そーなんだ。父さんに似なくてよかったね。」

「え、あ、はい。」








私が返事をすると、ノーマは聞きずらそうに次の質問をしてきた。






「あのさ、ヴァーツラフの事、好きだった?」

「…はい。ノーマには考えられないかもしれませんが、私は一番ヴァーツラフ兄様と仲良かったのですよ。いつでもどこでも一緒でした。」

「じゃあなんで、なんで自分の…」













「ノーマ!早く寝ろ!!」












ノーマの質問の途中にウィルの怒声が響いた。









「…はーい。」

「…ごめんなさい。」

「何でちゃんが謝るの?怒られちったし、もー寝よ!」

「…はい。」








中途半端なところで話が終わってしまった。どうせなら、最後まで言いたかったのに…。

私は少し不満を感じながら横になった。























































「ファイヤーボール!!」





最後の一匹の魔物を倒し終わると、私達は目の前にある建物を見た。
昨日入った所と同じモニュメント。

私達は入口に道を渡す機械のところまで歩いていく。






すると、ふと後ろを向いたノーマが「あーっ!」と大きな声を出した。
それに気付いて振返ると、どこからか飛んで来たワルターが目の前に降り立った。








「セネル、ここにいたのか。」

「ワルター!」

「打ち捨てられた地に逃げ込むとはな。だがムダだ!覚悟するがいい!!」











ワルターは腕をスッとあげた。









「やめて、ワルター!」

!?」








私がセネルとワルターの間に飛び出ると、彼は後ずさる。











「貴様がどうしてこいつらと………。







 …そうか、元に戻ったのだな。」



「えぇ。でも私…。」





「うるさい!!それならそれでいいのだ。


 覚悟するがいい!滄翼天翔!!」










ワルターはそう言うと私に技を放った。
爪術を使えない私は、自分を守る術も無く目を瞑って腕を構え、それから身を守ろうとした。










































「ひゃっ………?」












パシュンッ…









私は誰かに抱かれるように地面に倒れこんだ。


その途端に響く、奇妙な音。


私が恐る恐る目を開けると、目の前には堅く目を瞑ったセネルの顔があった。











「セネル!?」








セネルは私を守ってワルターの攻撃を受けたようだった。
私が呼ぶと、ゆっくり目を開ける。









「大丈夫ですか!?セネル!!」

「…あぁ。

 というか、あいつの攻撃が全然痛くない。」








セネルはそう言ってにやりと笑った。















「ワルター!お前なんかの攻撃は全然効かないぞ!」






セネルが私を抱き留めながら軽々と立ち上がったのを見て、ワルターは眉間に皺を寄せた。









「!?そんなはずは……。」


「チャーンス!!今のあたし達なら軽々とワルちんに勝てそうだよ!」







ノーマの爪が光る。







「本当だな。」






セネルの爪も光り出す。









どうしよう、こんなのダメよ!
どうすればいいの!?









 ― 大丈夫よ、





(ステラ!?)









ステラの声が聞こえたと同時に、セネルが飛び出した。














「あっ、セネル!」







パァンッ!!

















「うわっ……!」





飛び出したセネルをワルターの前で阻んだ青白い光。



それは、シャーリィのテルクェス。
彼女の翼と同じ色…。



その光はセネルを撥ね除けた後、ワルターを守るように彼を丸く囲んだ。
そして、ゆっくりと宙に浮き上がる。









「メルネス、何をする!離せ、メルネス!!!」








彼は薄い膜をドンドンと叩きながら叫んだ。しかしそれは破れることなく段々高く上がっていく。






「シャーリィ、どうか私にワルターと話をさせて!



 シャーリィ!」









私の声は聞き入れられない。







「ワルター!聞いて、私…!!」





「…くっ…。」






私の声を聞かぬようにと顔を逸らすワルター。口元が悔しそうに歪んでいる。















「…お願い、私の話を聞いて!シャーリィ!!お願いよ!!」













私の叫びも空しく、ワルターは遥か遠くに行ってしまった。

















「…シャーリィ、ワルターを守ったのね(か)。」




私の呟きに、セネルの声も重なる。
私達は顔を見合わせるとお互い微かに笑み、溜め息をついた。


















は、まだワルターを信じてるんだな。」

「…はい。」






セネルは私に手を出してニカッと微笑む。







「…その方が、らしいな。


 この前はすまない、あんなことを言って。


 …なあ、


 シャーリィと一緒に、なんとかワルターも助けよう。な?」





「セネル!!」







私はセネルの言葉に嬉しくなって、彼の手を通り越して彼の首に腕を巻き付けた。







「わっ…!!」


「ありがとう、セネル。ありがとう!!!」



「いいよ、


 はさ、皆が生きる道を願ってるだろ?


 それは俺が絶対叶えてやる!だから、安心しろ。」



「セネル!!」









私は彼を強く抱き締めると、頬に軽くキスをした。







「…対決は、それからだな。」

「…え?」

「いや、こっちの話だよ。」






































































モニュメントの中に入ると、そこは…






「中めっちゃ寒!!」





とっても寒かった。




暑い所出身の私には、すごく堪える。








「さ…ささ寒いですね。」

「大丈夫か?。」

「はい〜。」

「だめそうだな。」

「はい〜。」

「…ちゃんおかしくなっちゃったよ。」

「はい〜。」







私はあまりの寒さに思考回路が止まってしまいました。







「よっしゃ!ワイが暖めちゃる!」

「……。」

「なんで答えないんじゃ!?」

「モーゼスさんには暖められたくないようですね。では、僕の上着でも着ますか?」






ジェイは自分の上着を脱いで私に渡してくれた。






「でも…、ジェイは細くて寒そうだからいいです。」





私はそれを突き返すと、丁重にお断りした。






「我慢しなくていいのに…。」






ジェイの声が聞こえたけれど、私は頑として首を縦に振らなかった。





…だって、ジェイは皮下脂肪たるものが無いでしょう?こんなところで服を脱いでしまったら、絶対死んでしまいます!!





そのぐらい寒いのですもの!




































「ありましたよ、光る物体です。」




しばらく進むと、前と同じ菱形の光る物体があった。
セネルとクロエがそっと触れる。






「…白くて四角い物体が、陸地に横付けされてたな。」


「ああ。何なんだろうか…。

 さぁ、次に進もう。」







二つ目の菱形の光る物体。






「…白くて四角い物体が、出航しているところか?」

「そうみたいですね。」





私達はますますわからなくなった。
それはいつも一瞬のイメージで、私達に何を語りたいのかよくわからない。






「さあ、行きましょう。」





私は皆を促すと、三つ目の菱形の光る物体を捜しに行った。





「ありました!セネル、クロエ。」


セネルとクロエは頷くと物体に触れた。









「陸地だけだな。…なんだか、妙に寂れている。」

「ええ。…これになんの意図を示しているのか。

 昨日のところと同じなら、次で最後です。進みましょう。」







私達は更に奥へと進んだ。
途中で氷が突き出てくるところもあって、モーゼスが危うくジェイに騙されて突き刺されそうになっていたけれど、なんとか気合いで避けている格好がとても面白かった。









































「……。」




突然、私の隣りを歩いていたノーマがセネルの背中に抱き付いた。
私が不思議そうに見ていると、セネルが振返ってノーマを呆れ顔で見た。







「俺で暖を取るな!」

「あ、バレた?」

「当たり前だ。」





彼らから視線を外すと、少し離れたところにいるクロエが目に付いた。
クロエは今にも噴火しそうに顔が赤い。






「ノーマ、何をやっている!」

「…なんでお前が怒るんだよ。」

「…ははーん。」





クロエがノーマを怒ると、ノーマは楽しそうな顔になって彼女に近付いていった。そしてコソコソと耳打ちしている。




何だか二人とも楽しそう…。







「…二人とも楽しそうだな。」






セネルはこう言うとその場を後にした。ウィルもモーゼスもジェイもその後についていく。






「さ、いきましょうね。」





私もそう言って彼らの後をついて行った。
彼女達は、しばらくそこで何か話したのか、後から走ってついて来た。







「何を話していたのです?」

「…。」

「内緒だよ☆」

「そう…ですか。」






なんだか気持ち…クロエが私によそよそしい気がする。今では皆、私に普通に話しかけてくれるけれど、クロエだけは違かった。
やっぱり、私がクルザンド出身だからかもしれないけれど…、目を合わせて話してくれない。


すごく寂しいことだけれど……、クロエの心が溶けるまで、これだけは待つしかないと思う。
しょうがないわよね。

















































「最後ですね。」




私達は最後の部屋に辿り着いた。そこには同じ、菱形の光る物体。





「クロエ。」

「うん。」




セネル達が触れてその場が白く光った瞬間、私達が飛ばされたのはどこかの地。











そしてここは間違いなく戦場…。














「何これ…ひどい…。」

ノーマは口元を押さえている。
私は倒れている水の民に近寄ると、息を確かめた。



息は……もうない。



そして周りを見回すと、そこら中に死体が転がっている。
水の民と陸の民…、でもほとんど水の民の女子供だった。




「これ…水の民は殆ど女子供じゃないか!」



クロエは悔しそうに膝に手を打ち付けた。





「あっシャーリィ!!」


セネルの声が響く。シャーリィの姿が見えた方に走ると、またシャーリィは消えてしまった。






「ここはどこなんじゃ?」

「ここは遺跡船ではなく、大陸のどこかでしょう。

 そしてこれは、水の民と人類の戦争…。これから僕達の世界で起ころうとしていることと同じですね。」

「あっ…シャーリィ!!」





クロエはシャーリィを見つけて走っていく。私達はそれを追った。






「あっ…また消えた。」





シャーリィはある所まで来ると、また消えてしまった。
しかしその少し先には水の民達が集まっている。






私達は恐る恐るそれに近付いた。


















よく見ると、集団の中心にいるのはシャーリィと同じ格好をした女の人。
そして彼女の隣りには、彼女を守るように立つ男の人がいる。












私の心は、何故か彼らを見て締め付けられた。

よくわからないけど、すごく悲しい…。




















途端、また体中を走る電撃に見舞われた。













「うっ…。」











胸に手を当てるけれど、苦しくて気が遠くなる。


また倒れてしまうのかしら…







































































「あなたはどなた?」


「お前は何者だ?


 …陸の民か。私に近付くな。」


「あら、そんな怖い事言わないで。あなたはそんなに可愛いのに。」


「私がか?変なことを言う陸の民もいたものだ。…私達がお前達になんと呼ばれる種族か知らないのか?」


「ふふ、知らないわ。それにしても綺麗な金髪ね。」


「…無知な娘だ。」


「私は無知よ。あなたは何でも知っているというの?」


「少なくてもお前よりは知っているだろう。」


「そう、じゃあ私に色々教えてくれる?」


「何故私が。」


「私、明日もあなたに会いにここに来るわ。」


「……。」


「また明日ね、金髪の可愛い娘さん。」










































「あ、こんにちは。」


「……。」


「やっぱり来てくれたのね。さぁ、頭の用意は出来てるわ。何でも教えて。」


「ふふ…本当におかしな娘だ。」


「あ、笑った!

 あなた、笑ったほうが可愛いわよ。」


「…なっ…。」


「ふふ…。」


「…ふ…。」














(…あれ?周りの雰囲気が変わった…?)













「陸の民どもめ、お前達が来なければ…。


水の民よ、今こそ皆を箱舟に乗せて送りだそう。


幾万の同胞の血を吸った忌まわしき大地と決別するのだ。


陸の民の頸城を逃れ、今こそ新たなる始まりを。」












(これは、メルネスの言葉?)










―私は、信じていた。









(これは…メルネスの心…?)









―私は…



























































!」





今日はウィルの声だ。
私は彼の声で目を覚ますと、にっこり微笑んだ。





「大丈夫です。」

「何が大丈夫なんだ、二回も続けて倒れて…。

とりあえず、ゲートが現れたのだ。戦えるか?」

「ええ、もちろん!」





私は彼の肩に掴まって立ち上がると、矢の届く位置まで走って行った。

















































「今日も本当に大変な一日でした。」







私達はゲートを倒すと、再び疲労感と共にモニュメントの入り口に飛ばされていた。
とりあえずテントまで帰ると、前と同じように砂浜に横になって疲れをとった。


そして夜になると皆むくむくと起き出して自然と鍋の周りに集まる。








さん、本当に大丈夫なんですか?」

「大丈夫です。」

「何故、あの時になると倒れるのだ?」

「私だってわかりません。」

「それに、俺達の見ているイメージは見ていないと言うし…。」

「ええ。」

「…では。今回もまとめといきますか。」








ジェイはそう言うと、私達を見回した。








「水の民が故郷を捨てた理由、それは戦争が原因のようですね。」

「人類に敗れて故郷を追われたのか…。戦争とは、人類の罪なのだな。」

「しかし、ワイらと嬢ちゃんはそんな仲じゃなかったはずじゃ!」

「シャーリィさんと僕達は、でしょう?種族闘争は厄介なんですよ。」

「だけど、お互い歩み寄ろうとすれば、水の民と陸の民だって…!!」

「歩み寄ろうとすれば…ですか。

 今になっては難しい話過ぎますよ、セネルさん。」

「!!」
















水の民と陸の民が歩み寄る…。

もしかして、さっき聞こえた二人の女の子の声。あれって遙か昔の水の民と陸の民の歩み寄り…?

彼女達は実際、歩み寄った?














 ― そう。歩み寄ったの。






(ステラ!)






 ― でも、彼らは行き違った。だから…





(だから…?





 ……ステラ?)






 ステラの声は聞こえない。

 また、その先は次で知れ、なの?








水の民と陸の民の女の子達…。あの子達はどうなったのかしら…?












































「誰かの正体、僕はなんとなく分かった気がします。」






…深く考えすぎていたら皆の話が分からないところまで進んでいた。
私が首を傾げると、ジェイはにっこり笑って言う。







「それは…今は言わないでおきましょう。我ながら信じ難いので。確証が持てたらお話しますよ。」











誰かの正体…?あ、私達にこのイメージを見せている者のことね。
それって……、あ…。

















(それって、滄我?)












 ― そうよ、










(ステラ…。)













 ― 滄我はいつもあなたに語りかけている。耳を、貸してあげてね。


   あなたが担う運命…それを全うするために。





























(私の運命……?)

























*****************

メッチャ長!!!
普通の2倍でしたよー(笑)詰め込み過ぎでした?
これからどんどんオリジになっていきます。
そして、かなり端折っていて申し訳ないです。

真実に、近づいていく。


前代のメルネスの時に、何が起こったのか。


2006/07/08




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