(何…これ。私、なんでこんなところにいるの!?
これって…私?)
「あなたは小さい頃から親衛隊長なの?」
「………。」
「答えてくれてもいいじゃない。」
「…そうだ。」
「もしかして、産まれた時から?」
「そうだ。」
「あの子と幼馴染みだったりする?」
「そうだ。」
「さっきから「そうだ。」しか言わないわね。」
「陸の民などと話したくないからな。」
「ふーん、じゃあ、帰っちゃおうかしら。」
「何!?」
(この親衛隊長、ワルターみたい。見た目似てないけど。さしずめ、陸の民と話したくないけど、帰られるとメルネスの命令が守れなくなるからって、葛藤してる感じ。)
「…帰られると困る。」
「じゃあ、何かお話ししましょうよ。」
「陸の民などと話したくない。」
「…あのねぇ、あなた矛盾してるわよ。
喋ってくれないと、私は帰るって言ってるでしょう?」
「それは…。」
「それにね、私もあなたも同じ人間でしょ?
私はあなたという人とお話ししたいの。
陸の民だのなんて、くそくらぇだわ。」
「!?」
「…あら、たまらず下品な言葉を遣ってしまったじゃない。
…あなたのせいですからね。」
「…ふ…無茶苦茶な女だな。」
「やだ、あなたもあの子と同じような反応。
あなた達は人を試してから仲良くなるわけ?
それに…あなただって、笑ったらかっこいいのに。」
「なっ?」
「…ったく、どこまで同じ反応なの…。」
(この女の子、すごいなぁ。誰とでも一発で仲良くなってしまうのね。)
「あなたとあの子、本当に似た者同士ね。」
「メルネスと俺が似てる?」
「本当に仲良くしてるの?水舞の儀式はもうしたの?」
「ばっ……!!貴様、何を言ってるかわかっているのか!?」
「?…何で?」
「なぜメルネスと俺なんだ!!」
「あらら、違うの?一緒にいるなら絶対そうだと思ったのに。」
「あのな…。」
(なんだか楽しそうにな会話…。私もワルターとこんな感じなのかしら?
…あれ、場面が変わった。)
「あら、またあなた?」
「俺で悪かったな。メルネスは忙しくて来れない。
帰るなら今のうちだぞ。」
「またいつもと同じセリフ。
大体、今のうちって何よ?
どうせ、また私の相手をしてくれるのでしょう?」
「…メルネスの命令だからな。」
「また同じセリフ。ふふ…。」
(この女の子、なんて社交的なんだろう。いつのまにか、この男の人も心を許してる…)
私は、この出会いに感謝してる。
あの子も、この人も、
皆大好きよ。
「ちゃん…。
ちゃん!!!」
目を開けるとそこは、浜辺のテントだった。
私の傍らにはノーマとクロエとグリューネがいて、少し後ろに他の皆が座っていた。
あれ…ゲートは…?
「良かったぁ、もう起きないかと思っちゃったよ!!」
ノーマの抱き付きを受け、彼女の肩越しにクロエを見た。
「本当にそう思った。ずっと苦しそうに唸っていて私達には何もできないし…。
モニュメントに向かうあの時…私がちゃんと気付いていれば!私のせいだ。」
クロエは顔を歪めると、手で覆った。
「違います、私が皆に言わないで我慢してしまったのだから……!!」
私はそう叫ぶとノーマを押し退けて起き上がった。そしてクロエを抱き締める。
「ごめんね、クロエ、ノーマ。」
「僕たちにも謝って欲しいですね。」
「あっ…。」
「あなたが倒れたお蔭で、ゲートと戦う時苦労したんですよ。
あなたを守る人とゲートと戦う人に分けなければならなかった。
これがどんなに大変で迷惑なことか、あなたにはわかりますよね?」
ジェイはそう言うと、立ち上がって私の横に歩いて来た。
「さん、あなたはっきり言って、僕たちの足手まといなんですよ。」
「ジェイ!言い過ぎだぞ!」
「クロエ。」
クロエが私を庇おうと、ジェイに食いついた。しかし私はそれを止めると、立ち上がる。
ちょっとフラっとしたけど、私は地面を踏み締めてしっかりと立ち上がった。
だって、座っている私と、立って私を見下ろすジェイじゃ対等に話せないでしょ?
今回の事は私が悪いけれど、ここで皆に置いて行かれるわけにはいかないから。
私だって、全てを知らなければならない。
「今回の事は言わなかった私が悪いわ。本当に申し訳けありませんでした。
でも始めに言った通り、私は最後までついて行くわ。」
「またこんな事が起こったらじゃ遅いんですよ。それをあなたはわかっていない。」
「そうですね。ではそのような事が無い様、具合が悪かったら一人で引き返すことを誓います。」
「チッ…それでは…!!」
「ジェイ、もういいだろ。」
私達の言い合いに、セネルが仲裁に入った。
「は頑固だからついてくるし、誓ったことはちゃんと守るはずだ。」
「…セネルさんは甘いんですよ。」
「そうかもな。
…でも、ジェイもだよな。」
「っ…何で僕が!」
「ジェー坊、顔が赤いのぅ。」
「うっ…うるさい馬鹿山賊!」
「何じゃとォ!?」
セネルは話を纏めると、私の耳に呟いた。
「、ジェイはゲートを倒す時に一人でを守ってたんだ。」
「まぁ、そうなの!?」
私はジェイに手を伸ばしてぎゅっと抱き締める。
「なっ…ななな何をするんです!?」
「ありがとう、ジェイ。」
私は彼を強く抱き締めた。
「…さて、僕はさんに一つ聞きたいのですが、宜しいですか?」
「ええ、なんでもどうぞ。」
ジェイは私から少し離れたところに音も無く座ると、私を見上げた。
「なぜさんはいつも倒れるんですか?」
「それは…たぶん疲労です。」
…こう答えるしかないわよね。
「…じゃあ質問を変えますが、さんは僕たちと違って、一人だけここで爪術を使えない。そして同じイメージを見ない。そうですね。」
「ええ。」
「なぜですか?」
(ステラっ!)
― まだだめよ。爪術に関しては喋らないで!私の存在がわかってしまうから!
(わかったわ。)
「爪術については、ちゃんとした事は言えないわ。イメージに関しては…。」
私が続けようとすると、ジェイはふうっと溜め息をついた。そして…。
「僕の考えでは、あなたは僕たちとは違うイメージを見ているはずだ。特にゲートと戦う直前ですが。」
「!!」
びっくりした。ジェイは本当に鋭い。
「そうなんじゃありませんか、さん。」
ジェイは静かな目線を私に向けた。私は深呼吸すると口を開く。
「……確かに。私が見ているのはみんなのイメージと違うわ。」
「そうなのか!?」
私の言葉に、セネルとウィルが反応した。
「話してくださいませんか?」
「……。」
これはきっと、話しても大丈夫よね。
「さん、僕たちには一つでも多くの情報が必要なんですよ。あなたの見ているものは僕たちにとっても、必要なんです。ですから、話してください。」
「…わかったわ。」
私はそう言って座った。皆は私の話を聞こうと近くに寄ってくる。
「私が見ているのは、戦争が起こる前の、遥か昔のメルネスとその親衛隊長と、彼らと仲良くなった一人の女の子。」
「女の子?」
「そう、陸の民の女の子。」
「陸の民!?」
私は頷くと、ジェイを見た。
「彼らが仲良くなって他愛も無い話をしている場面が多いの。それにどんな重要性があるのかはわからないんだけど…。」
「そうですか。
…よくわかりませんが、大昔にもそんな人がいたんですね。」
「ああ、俺達だけじゃない。水の民と仲良くなることは、不可能なことじゃないんだ!」
セネルは嬉しそうに笑った。
「…さん、あなたは僕たちとは違う情報を手に入れる事が出来る。
…あなたを足手まといだと言ったこと、取り消させてもらいますよ。」
ジェイはフと微笑んだ。
結局、ジェイは優しい。
私の居場所をこうやって理由付けてつくってくれる。
「ありがとう、ジェイ!!」
私は再びジェイを抱き締めようと近付いたけれど、まんまと逃げられてしまった。
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実は、57話はこれで半分です。
次のの訂正が間に合わなかったのと、この二倍の
長さになってしまったため、二つに分けました。
2006/07/12
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