「、心を落ち着けて。」
― うん。
「…聞こえる?」
― え?
「滄我の声。」
『汝、我の恩恵を受ける者…
汝、我の意志を知る者…』
― あ…あの時と同じ。兄様と海に行った時と同じ声。
「やっぱり、はここの滄我の恩恵を受ける者だったのね。」
― どういうこと?
「今は地上の滄我の方が強いし私が受けている恩恵の方が強いから、あなたはこの打ち捨てられた地で爪術が使えなくなってる。」
― でも私、ここに来たのは初めてなのよ?
「地上の滄我とここの滄我は対になるものだけれど、同じ滄我でもあるの。だからあなたがここの滄我の恩恵を受けたものだからといって何も不思議な事はない。…それに、遙か昔のあなた。」
― え…?
「遙か昔のあなたを、ここの滄我は知っているそうだわ。…だから、あなたは最初から聖爪術が使える。」
― 聖爪術…。
「そう。あなたは滄我に認められている陸の民。」
― ……。
ねぇステラ、何であなたはそんなに知っているの?
だって、水の民でも滄我の声が聞けるのはメルネスだけなのでしょう?
「……私は、もう海に還った存在だから。意識だけここの存在する者だから。滄我は、長く遺跡船と同調していたメルネスの姉である私を選んだのよ。」
― 私に、このことを伝えるために?
「そう、昔のあなたを思い起こさせるために。
そしてそれを、メルネスに伝えてもらうために。」
― 昔の私の思いを、メルネスに伝えるためにステラはここにいるの?
「そうよ。それこそが、今私がの中に存在している理由。」
ステラはそう言うと、砂浜に横になった。
「さあ、滄我の声を聞いて。あなたは知らなければならないのだから。」
― …うん。
「、お願い。」
― わかってる。
『汝は変わらぬ。あの時も、今も。』
― 私が変わらない?
『その心、全てを慈しむ心。』
― ……。
『我は汝を信じている。…あの時あの者に伝えられなかったその思い、知るがよい。』
― ……!?
「あなた、ちょっと何故こんなところにいるの!?もう、永遠の別れだと言ってたじゃない。」
「……。」
「またダンマリなの!?……悔しいけれど、こんなところにあなたがいたら殺されてしまうわ。」
(これは…、あの女の子と親衛隊長?真っ暗だけど、夜かしら。)
「貴様、陸の民のくせに何故こんなところにいるのだ?探すのに苦労した。」
「わ…私にだって事情があるのよ!!……でもあなたには見られたくなかったわ、牢に入っているこんな私の姿。
馬鹿にしたくなるでしょう?」
「…貴様、阿呆だな。」
「なんですって!?」
「馬鹿にするわけがないだろう…。それにその格好…貴様この陸の民の国の姫かなにかか?」
「……。」
「ダンマリか。ダンマリは肯定の証だな。」
「あのねぇ!!」
「さあ…逃げるぞ。」
「え…?」
「ここから逃げるのだ。」
「……何……言っているの?」
「光跡翼で、お前を死なせるわけにはいかない。」
「光跡翼……。あの子はそんな事しようとしているの?」
「!!光跡翼を知っているのか!?」
「…ええ。陸の民ですからね。」
「……貴様は、全てを知っているのか?」
「全てかはわからないけど、海が教えてくれたから。」
「!?」
「それに、過去の文献も読み漁ったから少しは知っているつもりよ。」
「貴様は一体…。」
「さあ、行って!あなたはあの子の親衛隊長でしょう?こんなところにいてどうするの!全力であの子を守りなさい!!」
「…オイ!!俺はお前を…。」
「……私、明日死ぬのよ。
死ぬ前に、皆に訴えるわ。
私がどんなにあなた達を愛しているかを。あなた達を守りたいかを。この世界で共存していきたいかを。
だから、ここから逃げることは出来ないの。」
「…っ……俺達を、愛しているだと?」
「ええ。…あなたのことだから信じないでしょうけど。」
「…なっ…俺は!!」
「ふふ……あなたに出会えてよかった。
ありがとう、親衛隊長さん。」
「!!!」
(あっ…場面が変わる…。)
「戦いはいけない。
私達は、共に生きてゆけるのです!
お互いを認めれば、共に生きてゆけるのです!!
私達陸の民は間違っている。自分達のために何かを失くそうとする事は、なんて愚かしい事か。
彼らは私達と同じ人なのです。
私達は一歩ずつゆっくりと、歩み寄っていけばいいのです!!」
(あれは…あの子は…!!)
「姫さんの公開処刑だってさ。あの姫さん化け物達と通じてたらしいぞ。」
「火刑だなんて…あんなお美しいのに。」
「何か叫んでるぞ。」
「…心に沁みる声……あの方が仰っているのは…何?」
「聞くな聞くな!!あいつは魔女なんだぞ!!」
「そうだそうだ!!」
「…しかし!!」
(処刑!?あの女の子が……燃えている…。)
「ゲホッ……私は彼らを愛しています。
…同じくらいに…あなた達陸の民も愛しています……。
うぐ…っ…はあっ…はぁっ…
海は……海はこんなに穏やかなのに…、私達を愛してくれているのに…
…あなた達は私達を受け入れてくれた海を……忘れてしまったというの…?」
(女の子は燃えていく中、ふと空を見上げて笑みを零す。)
「あなた達に逢えて…本当によかった。」
(彼女は消えるような声でそう言うと、ガクと項垂れた。
きっと、命の灯火が消えたのだろう。
そしてその場から逃げるようにして立ち去る大きな鳥のような陰。
あれは…)
「…。」
― …ステラ。
「これが、あなたの遙か昔の姿よ。」
― 私、あんなに強くないわ。
「そんなことない。あなたはあの人と違わない。」
― そうかしら…。
「…続きがあるの。見れる?」
― うん。大丈夫よ。
「これはね、メルネスの記憶…。」
― メルネスの…―?
「我、今こそ光跡翼を用い、滄我とひとつにならん。
忌まわしき大地を、この世から消し去ってくれる!!」
私は…、本当にこれを望んでいるというのか。
「無念だ……。半分も残ってしまうとは……。」
あの娘は生き残っただろうか。
「メルネス!!!」
「……どこへ行っていたというのだ。お前は私を守る存在だというのに。」
「……。」
「大方、あの娘に会いに行ったのであろう。…光跡翼は失敗に終わった。大陸の半分が残ってしまった。」
「……ああ。」
「……あの娘はどうだった?生き残ってピンピンしていたろう?
私が消えた後、お前はあの娘のところに行くがいい。」
「……。」
「…どうしたのだ…?」
「あいつは、死んだ。」
「えっ……?」
「あいつは…」
「…うぐっ……ああっ…!!
……溶け…る。私の意識が溶けて消える…。」
「メルネス!!!!」
私は…こんなこと望んではいなかった。
メルネスとしてではなく、一人の娘として…あの娘と、お前を……。
「覚えて…おれ、陸の民よ。いつの日か必ず…次なるメルネスの手で……。」
本当は…こんな事……私は……。
― そんな……。こんな事って…。
「、ちゃんと受け止めて。」
― だ…大丈夫。ごめん、なさい。
「あなたとメルネスは、行き違ってしまったの。ある事が原因で。」
― ある事?
「……それは、自分でわかってもらうしかないわ。その事に気付いたとき、あなたの本当の思いをメルネスに伝えてあげて。」
― ……。
「、私はあなたを信じてる。だから…」
「さん?」
「!?」
― !?
私達の後ろに、いきなりジェイが現れた。
…今の話、聞いてたのかしら。
「な、何?ジェイ。」
「帰りが遅かったもので。」
「ごめんなさい。」
「いえ…。さあ、戻りましょう。皆待ってますよ。」
「待ってる?」
「ええ。前方の浜辺が光りだしたんです。今からそこに行くところですから。」
「……わかったわ。」
私、いえステラはジェイの後ろについて歩いていった。
…それにしても浜辺に出現した光って何だろう。
「さん、泣いてたんですか?」
「え?」
「目が、腫れてますよ。」
「あら、やだ…。」
ステラはゴシゴシと目を拭いた。
(、泣いたでしょ。)
― え、だって…。悲しかったんだもの。
でも、今はステラが私の体じゃない。私の涙が出るのはおかしいわ。
(本当はの体だから、感情はのものも出てきてしまうの。
それより…さっきに戻るはずだったのに、その前に呼びに来られちゃうなんて…。を演じなきゃいけないわね。)
ステラはそう言うと、溜息をついた。
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もろ過去夢夢。妄想激しい!!(笑)
なんていったって、ここはほしのき作の夢ですから♪
それも悲劇っぽくなってる!!
レジェの話根本から覆してる!!
笑うしかありません。
とりあえず、読んでいただいている方には割り切って読んでいただくしか道は…(汗
▼うんちく。
読んでいただければわかりますが、魔女(異端者)は火刑。ジャンヌ・ダルクですね。
彼女は神の声を聞いたということで戦い、フランスのシャルル七世らを導きました。
しかし色々な説がありますが、彼女の存在が邪魔になったフランスはブルゴーニュを経て
彼女をイングランドに引き渡したわけですね。そして異端者として火刑に処される、と。
簡単に書きましたが、遙か昔のヒロインの前世。
彼女もまた、ヒロインと同じようにそこにいると注目されるような姫でした。
その姫が水の民との共存を訴えだした事に、王は恐れを抱いたわけです。
そして異端者として見せしめに処刑して、このような者が出てこないように民達に圧力をかけたわけです。はい。
以上うんちくでした(笑)
2006/07/18
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