「ねぇ、ジェイ。みんなに見せたいものって何?」
「ああそれは…、昇降装置まで行けばわかりますよ。」
ジェイはにっこり笑うと、私を置いて先に行ってしまった。
…勿体振ってるわ〜!勿体振られると余計に聞きたくなっちゃうのよね。
私はジェイを追いかけると、彼が左側に束ねている髪の毛を引っ張った。
「さん、あなたもしつこい人ですねぇ。」
「私も?」
「はい。僕の右隣りには誰がいますか?」
「…ノーマ?」
「デヘヘ。」
「この人もさっきからしつこいんですよ。」
「……。」
私はノーマと同じなんだわ。
「あ、ノーマさんと同じにされてショックでしたか?」
「えっ……そんなことは…」
「ちゃん素直ー。」
「ノーマ、ちが…!!」
「グー姉さん、聞いてよ〜。」
「何かしらぁ。」
「ノーマ!!」
ジェイがシャーリィの所に行けるものを見つけたということで、昇降装置に向かっているんだけれども、その見つけた何かの正体を教えてくれなくて私はヤキモキしていたの。
ジェイも教えてくれなそうだし、その正体を聞くのを諦めるととぼとぼと後ろについて歩く。
一体何なのだろう?
私は腕を組んで考え続けた。
「さて皆さん、少し右に寄って立っていてくださいね。あ、モーゼスさんはそこでもいいですよ。」
「ワシも右に寄るわ。」
「素直じゃないですねー。」
「素直なんじゃ!!」
私達は二人のやり取りを見てくすくす笑うと、言われた通り右に寄った。
「えーとここを押してと…。」
ジェイが機械のボタンを押すと、昇降装置がガコンッと鳴った。
そしてグワンクワンといいながら扉みたいなものが開く。
私達はそれだけでもびっくりなのにその扉の中から機械音を立てて出てくるものにも驚いた。
「キューッ」
「キューッ」
「キューッ」
「キュキューッ!!」
それが出てくる瞬間を盛り上げようとするキュッポ達の声が聞こえてきた。
…可愛い。
ウイィィン…
その機械は私達の目の前で停まると、ドアを開けた。
「皆さん元気かキュ?」
中から出て来たのはキュッポ達。
彼らは自分達の登場に満足そうだった。
「これって…機関車!?」
「すごーいっ!」
私達は驚いて機関車をぺたぺた触る。
「すごいでしょう、キュッポ達が見つけたんですよ!!」
ジェイは見つけた彼らを誇らしげにしながら、嬉しそうに言った。
「なんとこれでシャーリィさんの元に行けるんです。」
「本当か!?」
「ええ。」
ジェイは線路を指すとにっこり笑う。
「この線路がモフモフ族の前の村の近くで見つかっています。それに、他の地下通路にもあることがわかっているんです。」
…それってつまり?
「蜃気楼の宮殿にも繋がっているということです。」
『おおーっ!!』
皆で歓喜すると、手を叩いて喜ぶ。
するとウィルが皆を宥めるように手を上下させる。私達はそれに気付くと、歓喜するのを止めて彼を見た。
彼はひとつ、コホンと咳をすると皆を見回した。
「困難な道程だが俺達ならやれる。このまま最後まで行くぞ!」
私達はウィルの言葉に再び歓喜すると、
『おおーーーっ!!』
と気合いを入れて拳を天へと繰り出した。
「なあ、。」
「どうしたの?セネル。」
機関車の中で座っているとセネルに声を掛けられた。私はにっこり微笑んで隣に座るように促す。
セネルは戸惑いながらも私の横に座ると、まっすぐな視線を送ってきた。
「セネル?」
「あ…いや、なんでもない。」
彼は視線を外すと、ところどころで寛いでいる他の仲間を見た。
一体どうしたのかしら…。
「セネル、一体どうしたの?」
「あ…ああ。」
何だか煮え切らないわねぇ。
「セネル、言わないと怒っちゃうんだから!!」
「!!………ごめん。言うよ。」
セネルは溜息をつきながら言った。
「俺もさ、シャーリィを一緒に説得したい。」
セネルはそう言うと私の目を真っ直ぐ見た。
曇りのない綺麗な目。
エメラルドのような緑の瞳が、きらきらと光っている。
セネルが持っている瞳は、他の誰とも違う。
セネルだけが持っている、輝かしい希望の光りだ。
私はそう思うとハッとした。
長い間何も答えずに視線を交わしていただけだということにに気付いたの。
「あっ…ごめんね。」
「いや…。」
セネルは大きな溜息をつくと、自分の膝に肘をついて顎を乗せた。
せっかく意を決して言ったにも関わらずスルーされて萎えた感じ(笑)
その通りのことしちゃったんだけどね。
私はセネルの膨れた頬をつつくと笑った。
「…なんだよ。」
完全にふて腐れちゃってる。まだまだお子様ねぇ、ふふ。
「ごめんね、セネル。」
「……。」
「ごめんねってば?」
「しょうがないなー。」
― には甘い…。
…あれ?今、ステラの声が聞こえたような。
「どうしたんだ、?」
「あ、うん。今ステラが『には甘い…。』って言ったからなんのことかしらって。」
セネルはびっくりして後ずさると、辺りを見回した。
「どうしたの?」
「…ステラに睨まれてる気が………いや。
それって、俺の事だよ。」
「何が?」
「に甘いってこと。」
「何で?」
「///////もういいよ。」
「?」
セネルはまた溜息をついた。もー、溜息ばっかだわねぇ。
「溜息つくと、幸せ逃げるわよ?」
「…もう逃げてる。」
「ええっ!?」
セネルは私の驚きを見て、少し不満そうだった。
…なんでだろう?
「それよりも、俺の話聞いてたか?」
「うん。」
「本当に聞いてたのかよ…。」
私は大きく頷いてにっこり笑ってみた。
途端、セネルが私を疑っているような顔付きになる。
…あらら、聞いてないって思ってる〜。
しょうがないわねぇ。
「私ね、シャーリィの説得はセネルにしてもらおうと思ってるの。
…ううん、セネルとステラに。」
「俺とステラに?」
「うん。
その代わりね、メルネスの説得は私がする。」
私はそう言うと、操縦席の方を見た。
そこには真面目な顔で操縦するジェイと慌てふためきながらお手伝いをするキュッポ達。お互い何かを言い合って励まし合ってる。
「遥か昔の私の気持ち、彼女に伝えたいの。」
「…じゃあ、メルネスの説得はに任せた。メルネスの気持ちは俺にはわかんないしな。
シャーリィは俺達に任せてくれ!!」
― 任せて!!
「ふふ、ステラが任せて!だって。」
セネルは目をちょっと丸くすると、極上の笑みで
「頑張ろうな、ステラ!!」
と言った。
― うん!頑張ろうね、セネル。
心がドキンと跳ねる。そして胸が苦しくなる。
セネルが愛おしくてしょうがなく…涙が出そうになる。
ハルカトオクニイルアナタヲオモフ
これは何?誰の想い?
ケシテトドカナイコノオモイ
ステラ?
メルネス?
それともあの子……?
「?大丈夫か?」
「う、うん。誰かの想いが横切ったの。」
「…。」
セネルを愛おしく思ったのは事実だけど、あれは本当にセネルにあてられたものだったのかしら……。
「…ん。大丈夫よ。」
「あ…ああ。」
セネルは複雑な顔をすると、私の頭に手を置いた。そしてぽんぽんと叩く。
「頑張ろうな!。」
「うん。」
ガコンッ…
機関車は大きく揺れると、その力を弱めていった。きっと停まるんだわ。
小さな揺れも修まって、一度また大きく揺れて停まった。
「皆さん、着きましたよ。」
ジェイは軽々と操縦席から降りてきて私の前で立ち止まった。
そして手を出す。
「?」
「どうぞお姫様。」
「…ジェイったらもう。」
私はその手に自分の手を重ねて立ち上がった。
ひんやりと冷たい手。
色々考えすぎてる私には、ちょうどいい温度だ。
「ありがと。」
そう言いながらセネルを見ると、先程より複雑そうな顔。
「セネルもやる?」
私が手を出すと、「いいよ。」と言って一人で行ってしまう。
「セネルさんはつれないですねぇ。」
「…うん…。」
なんだかセネル、悩んでる感じがする。大丈夫かしら?
「…行きましょうか、ジェイ。」
「はい。」
**************
微妙なところで一旦くぎり。今回はなんかセネルの憂鬱みたいになってしまいましたー。
次回から蜃気楼の宮殿突入です!!!
2006/07/25
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