不思議な空間。
ここがシャーリィのいる蜃気楼の宮殿…。
大きな湖の上にピンクの大理石のようなもので道が造られている。もしかして珊瑚礁なのかもしれない。
道は所々行き止まりになっていてそこには小屋のようなオブジェが建っていた。
どこまで歩いても、違う景色のなのに同じ景色のように見える。
そんな惑わす造りになっているここは、まさに蜃気楼の宮殿だと思った。
そして道から見える湖はコバルトブルーの混ざったエメラルドグリーンで、綺麗なのになんだか…心のもやもやを誘うようだった。
あの子のことを思い出すと体が重くなる。
だって私、まだあの子が伝えたいことを理解してないのだから。
今の私は、ぬめぬめした泥を体にいっぱいくっつけて歩いてるようなものだった。
気持ちもドロドロ。
歩く度に考えて、答えが見つからなくて悩んでは、吐き気を催す。
「、大丈夫か?」
そんな事を繰り返していると、心配そうな顔でウィルが声を掛けてくれる。
「顔色が悪いな。ファーストエイド。」
ウィルは私の顔色を窺って低級回復爪術をかけてくれた。
「本来心の苦しみには効かないが、気休め程度にはなるだろう。」
「ありがとうございます。」
確かに、少し気分が軽くなったかもしれない。
私はウィルにお礼を言うと笑って見せた。
「笑いに元気がないな。」
「……さすが皆のお父さんですね。ウィルには敵わないです。」
「俺はそんな歳ではないぞ。」
「ふふ。」
私は笑うと、彼を置いて歩き出そうとした。けれども急に腕を掴まれて引き戻される。
「きゃっ…」
「…すまん。」
ウィルは私に謝ると、照れたように目を逸らす。
「ウィル?」
「…お前がそんなに悩んでもわからないという事は、きっとその事を思い出す時があるのだろう。」
「時…?」
「ああ、例えばシャーリィに会う時とかな。」
「…。」
「ワルターかもしれん。」
「え…ワルター?」
「そうだ。お前がイメージで見た親衛隊長がもしかして…。」
ウィルは言葉を途切らすと私を見た。
「ウィルはあの親衛隊長さんが、ワルターかもしれないと言うのですか?」
「可能性を言っているんだ。」
「……そうかもしれませんよね…。」
ウィルの言ってることも一理あるわ。でも違うかもしれない。
「…あまり迷惑かけないくらいに考えて、その時を待ちますね。ウィルが言ってくれたみたいに、その時があればいいんですけど(笑)」
「期待もできんしな。」
私達は笑い合うと他のみんなからの遅れを取り戻すために歩き出した。
「ねーこのオブジェになんか仕掛けがあるんじゃないのーっ?」
「ノーマ、お前トレジャーハンターなんだろ?仕掛けくらい見つけろよ。」
「セネセネひどーいっ!こんなか弱い乙女を捉まえてぇ。」
「どこがだよ。」
みんなはある一個のオブジェの前で立ち止まって討論している。
私とウィルは彼らに追い付くと、そのオブジェを見上げた。
「ここはモーすけの出番だ!」
「何でじゃ!」
「だってこういう時は、モーすけが犠牲になるって決まってるじゃん!」
「シャボン娘ェ〜!!」
「おーっ、やる気かぁ!?」
「仕方ないわね〜。モーゼスがやらないなら私やるわ!」
モーゼスがあまりにも嫌がるので、私が立候補した。
そしてびっくり顔で見るみんなをそのままに、オブジェに向かうとそれに触った。
「あっ…さ」
ジェイの声がしたはずなのに、途中で消えてしまった。
いきなり声が聞こえなくなることにどうして?と思って、辺りを見回したけど誰もいない。
「えっ…みんなどこ行っちゃったの!?」
私の目の前にはさっきのオブジェ。さっきと形は同じ。
私は心を落ち着けて辺りを見回した。
「あれ…ちょっと違うような…?」
よく見ると、さっき場所と景色が違う。
もしかして、どっか行っちゃたのは私の方!?
原因はこのオブジェ?
頭の中を必死にぐるぐるさせていると、目の前にジェイが現れた。
「さん、無事でしたか!」
「ジェイ!!」
「ここはこうやってワープするんですね。
…!!
ガストが向かってきます!一旦戻りましょう!」
「うん!」
ジェイは私の手を握ると、オブジェに触った。
シュンッ…
そして元の場所に戻る。
みんなの前に出た途端、クロエが心配そうに肩を掴んで来た。
「!どこに行ったかと思った、心配したんだぞ!!」
「ごめん、クロエ。」
「やはりシャンドルが行くべきだったんだ!」
クロエはそう言うと、キッとモーゼスを睨んだ。
「何でじゃ〜、クッちゃんまで!!」
「大丈夫よクロエ、モーゼスを責めてはだめ。」
「あ、ああ。すまない。」
クロエは私に謝ると、肩を掴んでいる手を離した。
モーゼスには謝らないのかしら…?
「ワシなんて…。」
彼は隅っこでしょげてしまってるし(笑)
「で、どこに繋がってたんだ?」
「それは…」
「明らかに僕たちが進むべき道だと思いますよ。ただ、ガストが待機していました。」
「ワルターのか!?」
「わかりません。」
「そうか。」
「…何にしろ俺達は進まねばならないからな。すぐ対処出来るように全員で一斉に飛ぼう。」
考え込むセネルの横で、ウィルはそう言うとオブジェに向かって手を出した。
私も含めてみんなも頷いて手をだす。
「せーのっ!!」
ノーマの掛け声でみんな一緒にオブジェに触った。
シュンッ…
全員で新しい場所に飛ぶと武器を構える。
「ガスト覚悟!!」
「行くぞ!」
「………あれ?」
辺りを見回すけど何もいない。
もしかして、さっきのは見間違いだったのかしら…?
そう思いながら上を向いてみると、いるじゃない。それも今にも襲ってきそう!!
私は弓を構えると、爪術を放つ。
「みんな!上にいるわ!!」
「でかした!!」
「あたしに任せて!」
私達はガストの真下から離れると、一気に爪術を放ち始めた。
その戦闘も数秒で終わり一息つくと、少し離れた場所から逃げ出す水の民の若者達を見つけた。
「どうやら、さっきのガストを操っていたのはあの人達みたいですね。」
「ああ、もしかしたらシャーリィのもとに戻るかもしれん。つけてみよう。」
「ええ。」
ジェイはニヤリと笑うと、みんなの先を行くように水の民の後をつけだした。
…もうすぐ、もうすぐだわ。
― 、焦っちゃだめよ。
(でも…)
― 大丈夫。あなたにはわかるから。
(うん…。)
「貴様がここまで来ると思わなかったぞ、セネル。」
「ワルター!」
水の民をつけた結果、私達はワルターと出くわした。彼と出くわしたということは、シャーリィに限りなく近いということだろう。
「シャーリィはこの先か?」
「そうだ、と言ったらどうする?」
「ここを通してもらう。どけ、ワルター。」
セネルはそう言うと、静かな殺気を放った。
「もう一度言う。どけ、ワルター!」
「ほざけ!」
私がハラハラしながら見守っている中、セネルの交渉?は決裂した。
ワルターも助けてくれるって言ってたのに、セネルったら。
…でもそれはしょうがないのかもしれない。
セネルとワルターにはお互い認め合えない相反するものがあるみたいだから…。
私にはどうにもできないのかしら…。
「やめて、セネル!ワルター!」
『』
二人は同時に私の名を呼んだ。
その事が不服だったのか、互いにフンと顔を逸らす。
「ワルター、私達はシャーリィを救いたいの!シャーリィはこんなこと、望んでない。」
「…あれは今やメルネスだ。貴様らの知っている者ではない。」
「メルネスだって本当は望んでないのよ。」
「何故貴様にそんなことが言える!?」
「それは…」
「…っアクアレイザー!」
私が言いかけた時、ワルターが前触れもなく爪術を放つ。
私はそれが信じられなくて、避ける事も忘れて一点だけを見ていた。
苦しそうなワルターの顔を。
「きゃあっ…」
私はもろにそれを食らう。
刃のような水に体を切り裂かれ、その勢いに跳ね飛ばされた。
「!!」
急いで駆け寄って来てくれるセネル。
彼は私を抱き起こしてくれるとワルターを睨んだ。
「何をするんだ!はお前も救いたがってるのに!!」
セネルの言葉に、ワルターは目を細めた。
そして眉間に皺を寄せると口を歪める。
「俺を救うだと?ふざけるな。
…俺が救われる道は、最期までメルネスを守り通す道だ。」
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ワルター出現。
彼は親衛隊長の仕事を全うしようと必死なんです。
2006/07/27
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