「ちゃんは怪我してんだから戦わなくていいよ!」
「はそこで待っていろ!」
ノーマもウィルもそう言うと、ワルターとの戦闘に入っていく。
二人とも私を爪術で回復してくれればいいものを、わざと気を遣ってしてくれなかった。
ワルターと戦うなんて…考えられない。
だから今回は見てろってわけ?
そんなの出来ない。
私にとってはセネル達もワルターも、大切な仲間だから。
だから、出来ないよ。
私は軋む体を無理矢理起こすと、キッと戦闘中の彼らを見た。
「こんな傷……うっ!」
全身から血が滴り落ちる。
この時初めて自分が動けないくらいの怪我をしていることを知った。
でもきっと、ワルターは手加減をしてくれたのだろう。
彼の力だったら、無防備な私の命なんてひとたまりもないはず。
私はもう一度キッと彼らを見ると、再び立ち上がろうと試みた。
こんなの、こんなのだめなのに!
止めたいのに!!
体がいうこときかない。
今すぐにでも飛び出して行きたいのに、立ち上がることが出来なかった。
「滄翼天翔!!」
「迫撃掌!!」
ワルターとセネルは互いにぶつかり合うと、一瞬離れてまたぶつかり合う。
ワルターの空色のマントがひらりと舞う。
それを追い掛けるように、セネルの足についている鎖がチャリと鳴った。
二人は止まることを知らないかのように戦い続けている。
彼らのぶつかり合う波動が私のところまで来る。
心臓が鳴るかのように、ドウン、ドウンと私の体に響く。
本当は、今を生きている彼らの音なんじゃないかと錯覚するくらい、
激しく、
切なく、
必死に鳴り続ける。
他の皆はセネルを援護するように構えてはいるけれど、その戦い……その心と心のぶつかり合いに見入っていた。
「ワルター、お前は迷ってる!!!」
蹴りを繰り出しながら、セネルはワルターに言った。
「なんだと!?」
「お前はシャーリィとの間でフラフラしてるんだ。だからこんなに弱い!」
セネルの拳がワルターのみぞおちにヒットする。
「ぐっ……。」
「俺はお前を助けるとと約束した…だからお前を助ける。
…本当は、あんなにお前のことを考えているを攻撃するような奴なんて助けたくない。」
「………。」
「のためだ!お前が死んだらが悲しむからな。俺はのためにお前を助ける!
輪舞噴竜連撃!!」
「グアァッ……」
セネルの爪術が決まった。
ワルターは床に倒れ込むと動かなくなる。
「ワルター!!」
私は力を振り絞ってよろりと立ち上がると、セネルとワルターのところへ一歩一歩歩き出す。
「ちゃん…。」
「…。」
フラフラと足取りが覚束ない私に、ノーマとクロエが手を貸してくれた。
「…セネル…貴様はを選んだというのか……。」
「俺は誰も選んだりしない。
皆で一緒に生きるんだ、ワルター。」
「………くだらん…。」
私が二人の所に辿り着く前に、ワルターが苦しそうに呻きながら立ち上がった。
「俺は…メルネスを守る。
メルネスを守るのは俺しかいない…」
そしてワルターは黒い翼を出して飛び立つ。
「待て、ワルター!!」
彼はボロボロの体のまま、宮殿の奥へと飛び去っていった。
「…っ…なんだよ!!お前は迷ってるくせに……迷ってなけりゃ戦闘中、あんな顔でを見ないだろ!!!」
セネルはワルターの後を目で追いながら呟いた。
クロエとノーマに助けられながら、私はセネルの元へと辿りつく。
「セネル…。」
「……。」
困った顔で目を逸らすセネルを見て、私の目から突然涙が溢れ出す。
「…あいつのために泣くなよ、。」
「違うわ。嬉しくて泣いてるの。
…セネル、ありがとう。」
「……やっぱりワルターのためじゃんか。」
「セネルったら…。」
セネルは小さく溜息を漏らすと、苦々しく笑った。
「ごめん、あいつを助けるの無理だった。」
「ううん、無理じゃないわ。きっとワルターもわかってくれてる。
私は信じてる。」
「…妬けるよな。」
「え?」
「いや…。」
セネルは笑うと、私の涙を拭ってくれた。
「泣くなって。」
「うん。」
私はセネルに笑ってみせると、ワルターが飛び去った方を指差した。
「シャーリィはきっと向こうにいるわ。」
「ああ。助けよう、絶対。」
私とセネルはガッと腕を組むと、
「やるぞ〜っ!!」
と叫んだ。
「ちゃん、さっきは回復したげなくてごめん。」
ノーマは申し訳なさそうに私に言った。私は唇を緩ませると優しく言う。
「いいの。あれがノーマとウィルの優しさだって分かってるから。
私がワルターと戦うことがないようにって気遣ってくれたんでしょう?」
ノーマは照れ笑いすると頷いた。
「ちゃん、ワルちんのこと好きでしょ?好き合う同士は戦っちゃいかん!」
「…好き合う同士?」
「あれ?てっきりあたし、ちゃんはワルちんに恋してるもんだと思ってたんだけど?」
「ええっ!?」
「あたしらとちゃんがうまくいってなかった時、ワルちんと二人で会ってたみたいだし〜。友達以上恋人未満な関係だと思ってた〜。」
…ステラといい…女の子はもぉ〜!
「ワルターのことは好きだけど…。」
「ふーん、…いたたまれないなぁ、ワルちんも。
ちゃん、自分の気持ちをはっきり言ってあげたらワルちんも素直になるかもよ?」
「え?」
「ちゃんが曖昧だから、ワルちんも迷っちゃうんじゃないのかな〜っ…。」
…。
自分の気持ちに素直に?
私は、自分の気持ちに素直になってないの?
「なんだかさ、隠してるみたいなんだよ。」
隠してる?
「気持ちに膜を張ってるっつ〜かぁ。」
膜を張る?
「人間、言わないとわかんないわけだって!」
「……。」
私は目を点にしていただろう。ノーマがびっくりした顔で私を見てる。
気持ちだけじゃだめなんだ。口で伝えなきゃわからないんだ。
「オレはまだ、シャーリィに話してない事がある。…それをちゃんと話して、自分の気持ちを伝えたい。」
セネルが言ってたのはこの事だったんだ!
「ちゃん…?」
訝しげに私の顔を覗く彼女の顔を見て、私は思わず抱き着いた。
「ノーマ大好きっ!!」
「………あんがと。」
ノーマはびっくり顔で言った。
私はそんな彼女を離すと、にっこり笑う。
「ノーマはすごい!私がわかってないことをズバズバ言い当てて!!尊敬してしまうわ!」
「……、本当にわかってんのかなー?まあいいや。ワルちんにはちゃんと言うんだよ!
友情なのか、
恋愛なのか。
ちゃんの気持ち。」
「?」
「……わかってないしー。」
「あはは、ごめん。でも、私が想っている事を私の口でちゃんと伝えればいいんでしょう?」
「…まあ、そんなとこかな。」
「…大丈夫!」
私はもう一度にっこり笑うと、鼻歌を歌いだした。
だって、どうすればいいかの道が一つみつかったのですもの。
「………ちゃんがこんなんで、ワルちんわかってくれんのかなー?」
…最後にノーマの微妙な呟きが聞こえたような聞こえなかったような…?
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ワルターを撃退?するセネル。
セネルはセネルなりに頑張ってワルターを救おうとしているんです。
でも、恋のライバル?を救おうとするなんて(それが恋してる人の願いだし)
なんて心が広いんだ、セネル!!!(笑)
2006/07/29
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