「くそっ…なんて硬いんだコイツ!!!」
「クロエ下がれ!俺が!!……ぐあぁっ…」
「クーリッジ!!…きゃっ…」
明らかに皆が押されてる。
だって、ここまで何度も魔物と戦ってきたのよ?
皆疲れてるのに、こんな強そうなカカシ君と戦うなんて…!!!
「っ…リザレクション!!」
「ありがとうございます、ノーマさん。」
「ぬぉっ…なんちゅう執念じゃ、ワの字!!」
「敵に感心してどーすんのよっ…!」
「そうじゃった!!」
敵…。
ワルターは敵じゃない。
違うの。
私達の仲間よ?
― !!
(…ステラ。)
― 落ち着いて、大丈夫よ。
(う…ん…。)
― 私が手伝ってあげるから。
(ステラが…)
― ええ。さあ、気持ちを集中させて。
(うん。)
背中から広がる暖かいものが、私の体を包んでいく。
私の体全体を、暖かい薄い膜が張ったようになった。
その暖かさはステラの優しさ。
ステラのテルクェスが、私を守ってくれてる。
― さあ、行って!!
「うん!!!!!」
私は皆の合間を縫って走ると、カカシの足の下を通り抜けた。
「っふう…。」
そしてカカシを動かす事に集中してるワルターの前まで行くと、
思いっきり大きく手を広げて、
たくさんの愛情を両手で掴むように、
彼を抱きしめた。
「!?」
彼はあまりにも集中していたみたいで、私が近づいてきた事にも気付いていなかった。
私の突然の行動に、何が起こったかも分からないで一瞬目を見開くと、抱きしめられたまま床に崩れ落ちる。
そしてワルターの意識を失ったカカシも、私達と同じように床に倒れた。
「あらぁ、カカシちゃん倒れちゃったわねぇ。…。」
「…苦戦したー。」
「なっ!!」
「ジェイ、モーゼスを止めろ。」
「…モーゼスさんの気持ちには賛成しますが、しょうがないですねー。」
「…良かった。」
「お疲れ様、クーリッジ。」
皆の安堵した声が聞こえる中、私はワルターの胸に自分の頬を擦り付けた。
血の匂い。
ワルターの怪我はとても酷い。
そこら中が傷だらけで、血が黒く固まっていた。
私は体を起こすと、傷を触らない様にそろりとワルターの顔を覗く。
「ワルター?」
「……。」
「大丈夫?ワルター。」
ワルターはカカシに意識を使いすぎたのか、朦朧としている感じだった。
目や口は微かに開いているけど、何も喋ってくれない。
「ファーストエイド。」
そこに、ウィルが回復爪術をかけてくれた。
「これから何があるかわからんから、低級のものしか使えんが…。」
「十分です、ウィル。ありがとうございます。」
申し訳なさそうに言うウィルにお礼を言うと、私は再びワルターの顔を見た。
「う……。」
彼は眉を動かすと、眉間に皺を寄せた。でも、まだ意識はハッキリしないみたい。
私は揺り起こしたい気持ちを抑え込んで、ゆっくりと彼の頬を撫でた。
「あのー、ちゃん。」
「何、ノーマ?」
「あたし達先に行ってるから、だからワルちんと二人で後から来てよ。二人だったらすぐ飛んでこれるじゃん。」
「でも…」
「、今のお前のやるべき事は、ワルターを説得して俺達に追いつく事だ。わかったか?」
「…わかりました、ウィル。」
「そうか。ではみんな、行くぞ。」
ウィルとノーマは他のみんなを促して先へと歩いていった。
彼らの姿が見えなくなる時に、ノーマが私にウインクしているのが見えた。
二人とも、気を遣ってくれたのね。
ワルターと私のために。
しばらくしてワルターは意識をちゃんと取り戻すと私を見た。
そのブルーの目が憂いに満ちて、私を揺らめく波に誘うようだった。
わたしの心はくるりくるりと回り、最後に起き上がりこぶしみたいにゆっくり余韻でくるくる回る。
波に揺られてふらふらとしているのに
ワルターの瞳にしっかりと、私が映る。
「……か…。」
「ええ、私よ。」
「何故、貴様一人なんだ?…あいつらも馬鹿だな。貴様一人、俺ならどうってことないというに…。」
「…みんな、ワルターを信じてるから、大丈夫だと思ったのよ。」
「!!」
私は彼に微笑みかける。
あの時の絶望が伝わらないように。
彼が私を裏切ったとしても、私は彼を許すの。
もう一度彼を、心から信じたいから。
「私も、信じてる。
あなたを信じているわ。」
「……ほう、これでもかっ!!」
「!?」
ワルターはいきなり、右腕で私の首を掴んだ。
私の首をどんどん締め付けてきて、彼の指が首に食い込んで息が苦しい。
涙がぽたりと落ちる。
でも、これは苦しいからじゃない。
辛いからじゃない。
あなたから伝わってくる心の叫びが、悲しいから。
「助けて欲しい。」
あなたはそう叫んでる。
「何も言えんだろう?
俺はメルネスと共に行くのだ。貴様を殺して…!!」
そういうあなたの目は、今でも憂いに満ちている。
迷いがない人がそんな顔する?
苦しそうな顔する?
震えた声を出す?
あなたは自分の心を言わなきゃだめ。
私も伝えるから。
あなたも私に教えて…?
「……ワ…ルタ……。……よ…。」
「…?」
「わ…たしと…いしょに……」
振り絞る声。
音として伝わらなくてもいい。
聞こえなくてもいい。
ただ、あなたに伝えたくて。
あなたの心に響かせたくて。
「わた…しとい…しょに、いきよ…?」
「!!!」
言葉になっているかもわからないものを、口から吐いた。
ワルターは私の首から手を離すと、仰け反るように体を反らせ、私を見た。
どうしたらいいのかわからないって顔して、
私を恐がるような目で見たの。
「………っ…何故、貴様はそうなんだ!?…何故、貴様を裏切った俺に手を差し伸べる!?」
「…私、ワルターと一緒にいたい。ワルターを失うなんてこと、私には考えられない。」
わたしの周りにはみんながいて、シャーリィがいて、ワルターがいる。
誰一人も欠けることなく、皆でこれからを歩むの。
だから私、ワルターを失うなんて考えられない。
「……俺が、必要だと言うのか?」
「うん……、私にはワルターが必要なの。だから一緒に生きて?」
『お願いだから、
いなくならないで。』
私は心の中で大きく叫ぶ。
彼には聞こえないように、大きく叫ぶ。
ワルターは目を見開いて私を見ると、唇を噛み締めてすぐ顔を逸らした。
「ねぇ、ワルター。」
「……。」
「何か言って?」
「……。」
無言の彼を心配で覗く。
でも覗くたびに彼は顔をずらして私に見えないように背ける。
「ワルター……泣いてるの?」
「…泣くか。」
「泣いてるなんて、私と一緒だね。」
「…黙れ…。」
ワルターの目には、光り輝くマリンブルーの涙。
涙だというのに、それはちっとも悲しくなくて、むしろ
嬉しい輝きだった。
ワルターは優しく私の頭に手を添えると、自分の方に引き寄せる。
「きゃっ…。」
ぽふ、とワルターの肩に顔が当たる。
背中に回される両腕、私の体を包み込む手。
全てが優しい。
私は、セネルとのあの噴水の事を何故か思い出してしまって、顔が赤くなった。
「、貴様ならメルネスが止められるのか?」
「…うん。」
「本当なのだな?」
「…うん。」
「では、俺も貴様を信じることにする。」
「ワルター!!!!」
安心できる声。
いつもと同じトーンの声
でもいつもとちょっと違う、
優しさを前面に押し出した様な態度。
全部が嬉しくて、素晴らしくて、涙がほろほろ落ちる。
「……今まで、すまなかった。約束したというのに。」
「ううん…。」
彼はそう言って私を強く抱きしめる。
「再び約束しよう。
俺が、お前の支えとなることを。…もういらんかもしれないがな。」
「ううん、必要に決まってるじゃない。
…わたしも、ワルターの支えになってあげるね。」
「……もうなっているがな。」
「え?」
「いや…。
……もう絶対に破ったりはしない。裏切らん」
「うん…」
ワルターはそう言うと、突然私の膝に頭を乗せて寝転がると、ゆっくりとそのブルーの目を瞑った。
フワリと舞う金色の髪。
瞑るとわかる長い睫毛。
透き通った白い肌に私達とは違うものを感じる。
でも、同じ人間なんだ。
一緒に歩んでいくんだ。
一緒に、生きていくんだ。
そう思うと、自然に笑みが零れてしまう。
「ワルター?」
「…メルネスのところに行く前に、数分だけでいい。このまま寝かせてくれ。」
「…ええ、おやすみなさい。」
ワルターはすぐ、規則正しい寝息を立て始めた。
私の目の前で無防備に寝る姿が可愛らしくて、心がくすぐったくなる。
なんだか、私の膝で眠るなんて初めて会った時みたいだね。
あの時はフェニモールも元気で。
あなたはしきりに私が陸の民らしくないって言って。
ちょっと前の出来事となのに、もう何年も前の事みたい。
ねぇ、ワルター。
約束、ありがとう。
ずっと守ってね。
私、あなたを信じてるから。
****************
ウオー!!愛の告白みたいになってしまった。
仲間として、一緒に生きようってことです(汗
でもワルター君が嬉しく思ったのなら、どっちでもいいや(ォィ
2006/08/05
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