ろ……










ワルターの声が聞こえる。
あれ、私何してたんだっけ?






私は今、ふわふわした気分なの。ゆったり〜、リクスな感じ。







でも、ワルター呼んでるし…、起きなきゃ……










































「起きろ!!!」

「んきゃぁっ…!!」







ワルターの怒鳴り声にびっくりして、私は後ろにひっくり返った。






ゴンッ






見事に床へと頭をぶつけてね。














「貴様まで寝るなんて聞いてなかったぞ。」

「ご、ごめんなさい。」

「…寝てしまったのはしょうがないからな。しかし、だいぶあいつらに遅れをとったんじゃないか?」

「………ああーっ!!」

「!?なんだ、何かあったのか?」












私の叫びに、ワルターは過剰に反応すると返答を待っている。




あらら〜、大したことじゃないのに…。













「わ…私達、メルネスの説得にいく途中なのよね…。」












私は当たり前の事を今思い出したかのように言った。
寝て忘れちゃったから、今思い出したんだけど。








ワルターはそんな私を呆れた目で見ると、立ち上がった。












「うっ…。」










ぐらりと揺れる彼の体。
私はそれを支えるように立ち上がる。











「大丈夫?ワルター。」

「…ああ。」









ワルターは苦痛に顔を歪ませて答えた。

全然大丈夫そうじゃないじゃない!!










「…ぐっ…。」

「??」








そんな事を思っていると、ワルターに変化が現れる。











「うぐっ…これは……!?」

「ワルターどうしたの!?傷が痛むの!?」

「いや、ちがっ…………少し静かにしてろ…。」

「う…うん。」









ワルターがとても苦しそうなのに心配になる。
いきなりどうしちゃったのかしら…。

















「これはっ…俺…。」

「?」

「まさか…こんなことが…。」














ワルターは苦しみ終えると、ガクと膝を床についた。







「大丈夫なの?」






私もすぐさま床に膝をつくと、彼の顔に手を添える。








「ねぇっ…ワルター…」







私の必死さとは裏腹に、ワルターは冷静な顔で私を見た。
そして自分の顔に添えられている私の手をとると、きゅと握る。


















「貴様はあいつなのか…?」

「え、何?」

、貴様はあの女なのか?」













ワルターはそう言って私を見つめる。













もしかして、あの子のこと?

私は最初、ワルターがいきなり何のことを言っているのかわからなくて混乱してしまった。


でもよく考えてみると、あの子のことしか思い浮かばなくて…。
でも、何で私があの子の生まれ変わりかって彼が知っているのかの矛盾があったりして、ますますわからなくなってしまう。


















「四千年前のメルネスと俺の前に現れた……あの女なのか!?」

「…メルネスと俺……?」

「ああ。四千年前の俺も、今と同じメルネスの親衛隊長だった。」





















……うそ。



ワルターがあの、親衛隊長さんの生まれ変わりだって言うの!?



こんなことって……。







だって、シャーリィと私とワルター。三人が以前と同じように生まれ変わるだなんて!!!






















「答えろ、。貴様は、あの女なのか?」









私の心はこの驚きのせいで放心状態になり、ワルターの問いにまともな返事が出来なくなっていた。
なので、頷いて返事をする。





































「…そうか。……俺は二度もメルネスを…。」














彼はそう言うと、私の肩に頭をもたれた。
そんな彼の行動に不安を感じ、私は意識をはっきりさせると彼の名を呼んだ。

















「ワルター?」

「……俺は、メルネスのところには行けん。」

「そんな!!どうして?」
















彼は私の手をぎゅっと握り締める。










「痛いよ、ワルター。」

「…すまん。」








そして力を弱めると、溜息をつく。
















「俺は二度もメルネスを裏切った。メルネスは俺の姿を見たらきっと、光跡翼の発動を止めはしないだろう。」

「ワルター…。」

「だから俺は……。」














ワルターはゆっくり私の手を離した。
自分の意志を離すかのように。

私はそれを掴み返すと、ワルターの顔に自分の顔を近づけて彼を見上げる。


















「逃げないで、ワルター・デルクェス。」


「!!」


「あなたは逃げてはいけない。今逃げたら、あなたは本当にメルネスを裏切ってしまう。」


……。」


「昔を思い出したあなたなら、わかるでしょう?メルネスが本当は、光跡翼なんて望んでいなかったことを。」


「……。」


「だからまだ間に合う。メルネスを、一緒に止めましょう。

 それにあなただって、昔の親衛隊長さんのメルネスに伝えたい事があるでしょう?」










どうしてこんなことがわかったのかなんてわからない。
でも、昔の親衛隊長さんだって、あの子だって、メルネスだって、本当に相手へ伝えたかった事があるはず。


今だって遅くはない。
伝える事に時間なんて関係ない。








…だから、そう思ったのかもしれない。






























「…そうだ。俺は話さなければいけないことがある…。」












ワルターは思い出したかのように言った。

















「じゃあ、一緒に行こう?」

「ああ!!」














私はワルターの肩を支えながら立ち上がる。
そしてステラに一言声を掛けると、テルクェスを出した。















「!?、そのテルクェスは一体…。」

「ワルターは知らなかったんだっけ?私の中にはステラがいるの。今は一心同体よ。」

「何だと!!」












ワルターはかなり驚いた様子だった。
そんな彼にテルクェスを出すように促して、二人で飛び上がる。
















「貴様には、敵わん。」

「こっ…これは不可抗力で…」

「…どっちでもいいが、やはり敵わん。」

「……。」















私達は結構スピードを出したけれど、なかなか仲間の皆に追いつく事が出来なかった。
ワルターは怪我人なので、無理をさせるわけにいかないしね。








































































「ワルター、いつ四千年前のことを思い出したの?」


「ああ、全部思い出したのはさっきだ。しかし、自分が以前もメルネスの親衛隊長だったことは知っていた。」


「知ってたの?」


「ああ。幼い頃から皆に言われて育ってきたからな。だが、知っていたのはそれだけで以前のに会った事などは知らなかった。」


「そう…。」


「…あの頃は今と違って、もっと水の民も陸の民も全面戦争をしていた。…醜いものだった。」


「うん。」


「その荒波に、メルネスも貴様も飲み込まれて死んでいった。」


「……。」


「俺はその時、メルネスを裏切ったのだ。」


「え…?」


「俺はメルネスの親衛隊長だというのに、あいつが一番辛いときに支えてやらずにお前を助けに行った。」


「あの……火刑の前の晩のこと?」


「ああ。俺は見事に失敗したけどな。」


「失敗だなんて…私が選んだのが生きることじゃなくて、死して訴える事だったから…。」


「そうだ。死ぬなんて馬鹿げている。あの時無理矢理にでも助けていれば良かった。あの後何度そう思ったことか。」


























































ワルターはその海色の瞳に私を映した。























































「貴様だけでも生きていれば、俺はどんなに救われたことか。」


「…ワルター?」


「あの時からずっと、俺は―――――」




























































「貴様達の戯言ごときで、我が信念揺らぐと思うか!!!!!」




「何っ……まだ、立つのか!?」




「先ほどよりも威圧感が高まっている。」




















ワルターの言葉を遮るように聞こえる、マウリッツとみんなの声。
もうすぐそこにいるのだわ。























「セネル・クーリッジ。お前はステラを死なせ、意識だけ残る今もたぶらかしている。

 それにワルターをその手にかけた。


 ……その血塗られた手に、メルネスを渡すわけにはいかん!!」






































「ワルター。」

「ああ。行くぞ!」

「うん。」
















私達は手を取り合って、仲間達が戦っている部屋へと足を踏み入れた。


























*******************


思い出すワルター。

幼い頃から前世も親衛隊長だったとプレッシャーをかけられるのはいかがなものでしょう。
それほど彼は、自分の使命を全うしようと思ってしまいますね。
彼の葛藤の正体…かな。


2006/08/06








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