「ステラはたぶらかされてなんていないし、ワルターはここに生きてるわ!!」
私達はみんなが待つ場所へと入った。
私の仲間達と対峙しているのはマウリッツ、そして部屋の奥の高いところにシャーリィがいる。
「シャーリィ…。」
私は呟くと、部屋の全体を見据えた。
「…ワルター…お前、裏切ったのか…。」
「……。」
「その娘のために、水の民四千年の願いを無下にするというのか!!」
ワルターはマウリッツから目を逸らすと、シャーリィを見上げた。
「あの時からずっと、メルネスはそんなことを望んでいなかった。
…今だってそうだ。
望んでもいもしないのに、他の水の民の願いを叶えるために犠牲になるのは、あのメルネスだけで充分だ!!」
「…ワルター!!!お前もそいつらにたぶらかされたのか!!」
マウリッツはセネル達を抜けて、ワルターに向かって来た。
怪我をしているワルターに彼を避けるのは無理だ!
私は彼の前に躍り出る。
「危ないから前に出るんじゃない!!!」
「そんなことっ…!今度は私が、ワルターを守るんだから!」
「!!」
私を自分の後ろに戻そうとするワルターを押しのけ、私は両手を前に掲げ滄我に祈る。
『滄我よ…』
バァンッ…
マウリッツの攻撃が、私のテルクェスの防壁に跳ね飛ばされる。
「ぐうっ…なっ……これはっ…ステラだけの力では…!」
マウリッツは床に膝をつくと私を睨んだ。
「マウリッツ殿、あなたは私に勝てません。」
「なんだと!?」
「私は……メルネスと同じ滄我の力を代行出来る者だから……。だからあなたは私に勝てないのです。」
「滄我の力を代行出来る者?…そんな馬鹿な!
滄我の代行者はメルネス一人だ!!
それが陸の民などっ……。」
マウリッツは混乱しているようだった。
彼は頭を掻きむしると、鬼のような形相で私を睨み付ける。
「そうか、打ち捨てられた地の滄我だな!
あんな滄我など、我々の足下に及びもせん!!」
マウリッツは再び私達に向かって攻撃を仕掛けてくる。
彼の攻撃は先程よりも威圧的で、力が上がっていた。
しかし先刻と同じように両手を前に掲げると、私は彼の攻撃を防いだ。
「何故だ!
何故だ、何故だ!?
こんな事が、あっていいはずがない!!」
「この世界には、絶対出来ないなんてことはありません。」
「何を!?」
「マウリッツ殿、
遥か昔、海は私に言ったのです。
『我が煌めきを陸の民が受け入れる事を嬉しく思う。
共に生きよう。
お互いの存在を忘れずに。』
そう約束したのだと。」
私は掲げた手を下ろす。
「それを陸の民が忘れた結果、猛の滄我が怒ったのです。
けれども、猛の滄我も静の滄我も同じ滄我として共存を望んでいる。
これは紛れも無い事実。
私達が陸の民の代表として、必ずや共存を実現してみせます。」
「嘘を言うな!では何故、メルネスは猛の滄我の代行として光跡翼を発動させようとしているのだ!?」
私はシャーリィを仰ぐ。
彼女はずっと動かないまま、目を瞑っている。
「……それも、滄我の願いだから。」
「それでは矛盾しているではないか!!
やはり、お前達陸の民は、水の民を貶めようとしているのだな!!」
「違う!猛の滄我も静の滄我も、同じ滄我だけれども違う滄我でもあるから、だから…!!」
「うるさい!
さあメルネスよ、光跡翼を発動させるのだ。
陸の民を、陸ごと消滅せしめるのだ!!!」
メルネスの力が増幅する。光跡翼に彼女の力が注がれていく。
発動させてはいない。
彼女を失うわけにはいかない。
『滄我よ……私に力を貸してください。』
私はテルクェスをマウリッツの方に向けて放った。
すると、彼はテルクェスに包まれて身動きがとれなくなる。
「何をするっ……!?」
「私達の邪魔をさせないようにです!!」
「くうっ…」
動けなくなったマウリッツを見届けると、私はワルターの手をとってセネル達の方へと走る。
「遅くなりました。」
「いや、よく戻った。」
ウィルは暖かい手で私の頭を撫でてくれた。
それがくすぐったくて笑みが零れる。
「ワルターの説得、うまくいったんだな。」
「ええ。セネルの御蔭です。」
セネルは嬉しそうに私を抱きしめてくれる。
私はそれを受けると、抱きしめられたままぽんぽんとセネルの背中を撫でた。
セネルは一度、きゅ、と力を込めて私を抱きしめると、すぐ体を離す。
「シャーリィは、もうメルネスなのか?」
「……ええ。ここからは、私とワルターに任せて。」
「ワルターも…か?」
みんなは驚いたように彼を見た。
ワルターはそれを無言で受け止める。
「しかし…ワルターはひどい怪我を…。」
「ウィル、あなたの言った通りワルターはあの親衛隊長さんでした。だからメルネスを止めるためには、彼の力が必要なのです。」
「…やはりそうだったか。なら、俺達が出来るだけサポートしよう。
二人で、メルネスを説得して来るんだ。」
「はい!!」
私はワルターの手を握り締めると彼を見た。
ワルターも、私を見返して頷く。
「…行くぞ、。」
「うん。」
そして一緒にテルクェスを出すと、メルネスと同じ高さまで昇る。
「私達なら、大丈夫だよね。」
ワルターの手をぎゅ、と握る。
すると、彼も握り返してくれた。
「ああ。俺はがいるから大丈夫だ。
がいなかったら……こんな勇気、出なかっただろう。」
「私も。
…私もだわ。
あなたがいるから頑張れる……」
「……?」
「あなたが……」
かつての私は、こんなに素直に言えたかしら。
こんなに素直に自分の気持ちを伝えられてたかしら。
ちゃんと自分の気持ち、言ってたかしら。
ううん……隠して……たような気がする。
……
―わかった。
何故こんなことになったのか。
何故、メルネスは猛の滄我の負の部分を代行したのか。
ステラとシャーリィは、私に答を言ってくれてたはずなのに。
私がこんなに鈍いから、気付かなかった。
こんなにも長く延ばして、皆を傷つけてきたんだわ。
「?……大丈夫か。」
「うん、大丈夫。ごめんなさい。」
「いや…」
「!!ワルター、気をつけて!何か来る!」
叫んだ途端、無数のテルクェスが放たれる。
私は防壁を張ってなんとか防ぐけれども、後ろにいたセネル達はそれに捕まってしまった。
「くそっ…シャーリィ、外せ!」
「なんて力じゃっ…これじゃあ手も足も出せん!」
「ちゃん!!」
私の力では、今の皆を助けるほど動けない。
どうすれば…。
「、後ろを見るな。前に進むんだ!!」
後ろの仲間を気にする私を、ワルターは引っ張る。
「今は、メルネスを止めるのが先だ。あいつらはその後でも助けられる。」
「…わかったわ。」
私はしぶしぶ了解すると、メルネスに近づいて行く。
パァンッ
「きゃあっ…!」
「くうぅっ…!」
途中、何かにぶつかったように私達は跳ね返された。
「防壁…?」
そこには、シャーリィを守るように青い防壁が張られていた。
「痛っ……!」
それを確かめようと手を出すと、バチバチッと電流のようなものが走る。
「どうしよう…私では、この防壁は破れない。」
「何…本当か!?」
「うん…。」
「ここまで来て…。」
私達が防壁を前に歯痒く留まっていると、体の内からステラの声が聞こえてきた。
(大丈夫よ。。)
「え…?この力、ステラじゃ無理よ!」
(あら、言ってくれるわね。)
「これは、冗談とかじゃなくて!!」
(わかっているわ。…私はこのためにいるのだもの。)
「なんて…言ったの…?」
(私はこの最後の力を破るために選ばれたの。)
「そんな…!こんな力をステラがどうにかしようとしたら…ステラは!!」
(言わないで。…ありがと、。今まで楽しかったわ。)
「やだっ!ステラ!!」
(…あなたは最高の親友よ、!!)
「ステラ!!!!!」
体の中からステラの意識が消える。
テルクェスの羽が消えて私がガクンと落ちそうになると、ワルターは体を支えてくれた。
「ステラ・テルメスはどこに行ったんだ?」
「…ステラ、あの防壁を破るって行ってしまったの。
…まるで、最期の別れみたいに…。」
ワルターは無言になると、メルネスを見る。
「それが、ステラ・テルメスの使命なんだろう。
…行くぞ、防壁が開く。
俺達は、俺達の使命を全うしなければならん。悲しむのはその後だ。」
「…わかってる…。」
ステラが居なくなった心に、ぽっかり穴が出来たように思う。
でも今は、それを気にしている場合じゃないんだよね。
「…ありがとう、ステラ。
私、絶対止めるから。
シャーリィを助けるから。」
ブゥンッ
勢いよく開く防壁。私達はそこに踏み出す。
ステラの気配がほんの微かに残っているけれど、声を聞くまでにはいかなかった。
でも今、彼女が私に声を掛けているのはわかる。
『、頑張って!』
と。
****************
うひょ〜!!
原作どっかいっちゃった感満載な展開に!!
またまたほしのきワルードってことで、許してやって下さい(笑)
ワルター贔屓しすぎなんて言わないで…(苦笑)
【猛の滄我と静の滄我が同じ滄我だけど違う滄我】という点に関しまして。
ちょっとややこしかったので、ここに解説(笑)
同じ滄我(共通項は滄我という点)=同じ意志を持つ=共存を望む
だけれども、
猛の滄我と静の滄我は違う場所に存在するものなので、望むものは同じでも考え方ややり方は少しずつ違うということです。
わかりました?(余計ややこしくなったら申し訳ないです…。)
2006/08/11
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