「一緒に世界を変えよう。これからずっと私達が仲良くしていけるように。
滄我の願い、叶えよう。
水の民と陸の民の懸け橋となって!!」
ありがとう。
私は、お前達に出会えてよかった。
……これからも、宜しく頼む。
ふんわりとした意識の中、メルネスの声を聞いた。
メルネスは嬉しそうに笑うと、ありがとうって言ってくれた。
メルネスが嬉しいと、私も嬉しいよ。
うんっ…?
…あれ、この気持ち悪い感覚。
静の大地でイメージを見たときと同じ……?
「ごめーーん!!遅くなっちゃった!」
「遅れるのはいつものことだろう。」
「…ま、まあね。」
「…それより、お前に誠名をやるって話をこの前したが、決めてきたぞ。」
「誠名?水の民のその人を表す名前を、本当に私にくれるの…?」
「ああ。」
「嬉しい!!」
「フ…そう言うと思った。」
「貴様…、メルネスが直々に考えたんだからな、有り難く思えよ。」
「ふふ、お前も一緒に決めただろう?」
「////////」
「で、なになに?」
「そう焦るな…。
コホン。
えー、
我メルネスがそうがの祝福を受けし者に誠名を与える。そなたの誠名は、
『テルメス』」
「……テルメス?意味は?」
「内緒だ。」
「ええ〜っ!!ケチねー。私の誠名なのに、意味教えてくれないわけ?」
「…はは、いつか教えてやる。」
テルメス…?
テルメスって…ステラと同じ…。
「ふふ、喜ぶだろうか。
『テルメス』
陸の民として、我ら水の民と交流を持つ
『始まりの星』
…あの娘と、これからも仲良くやっていけるだろうか。」
「あの女なら心配ないだろうな。」
「そうだな…!」
メルネス……メルネス!
ありがとう!!!
ずっと、ずっと、仲良くしていこうね。
ビュンッ!!
そう言った途端、突然強い風に吹かれた。
それに驚いて目を瞑ると、そのまま耐えるように風が止むのを待つ。
「うう〜〜〜っ!!」
そのうち風は、ヒュルリと弱いのを一度吹かせるとピタッと止む。
…なんだったんだろう?
そして、恐る恐る目を開いた。
バン!
って音が鳴ったんじゃないかってくらい、いきなり目の前の景色が開ける。
私の視界に飛び込んでくる広い海。
静かな波に水面を揺らし、ザザンザザンと一定のリズムを立てている。
自分の体も同じように揺れて、心地よい世界に飛ばされそう。
そんな素晴らしい景色に感嘆すると、はっと気づいて周囲を見回す。
周りは360度海で、不思議なことに、私は水に浸かる事なくその上にふわふわ浮いていた。
でも、こんな不思議なことも受け入れられる。
私達の世界と同じで、滄我が感じられるもの……
空にはぎらぎらの太陽が照って、容赦なく海を見ている。
そんな日の光を暖かく受け止めるように、水面が光を反射してきらきらと金色に輝いていた。
私は思わず嬉しくなってスキップをしながら下を見た。
どこまでも続くだろう海は、揺り篭のように優しく波を立てている。
私の高さからは海に触ることは出来ないけれど、
触れたらきっと、
懐かしい思いがするんだろう。
「輝ける青…」
「…なんだそれは。」
呟いた後ろから、突然声がして慄く。
そろりと振り向くとそこには、ワルターがいた。
「ワルターいたの!?」
「ああ、気付いたらここにいた。
それよりテルクェスをだしていないのに、何故浮いてるんだ?」
ワルターは足元を見て不思議がる。
それは無理ないよね。本当に浮いてるんだもの。
私は彼に微笑むと言った。
「これはきっと、メルネスからのプレゼントよ!
これからの滄我が見せる海の色。
輝ける青」
「…だから、なんなんだそれは…?」
「えっ…何って……その、この海のことよ。」
私にはこれ以上の意味はわからないけど、懐かしい響きなのよね、この言葉。
「……まあいい。」
ワルターは諦めると、自分の傷を庇うようにゆっくり座る。
私はそれを手伝うと、隣にちょこんと座った。
そして二人で静かに海を眺める。
「終わったのかな?」
「…終わったのだろう。」
私の問いに、ワルターは頷いた。
彼は遠くの景色を見るように、目を細めた。
「俺達は、変えていけるのか。」
彼は呟くと、私を見た。
不安そうな目で私を映す。
「変えていくの。
私達に、それ以外の道はないわ。」
私が言い切ると、彼は笑う。
「…そうだな。
らしい答えだ。」
「でしょう?」
彼は不安そうな目を、もとのキレイなブルーの目に戻す。
そしてまた、遠くを見た。
私は微笑むと、同じように遠くを見る、
すると、遠くからゆっくりと流れてくる透明なものが見えた。
私はワルターの袖を引っ張るとそれを指差した。
それは、紛れも無く…
「シャーリィだわ!!」
「何だと!?」
シャーリィは透明な布が舞うように透き通った姿で私達の前に来ると、舞い降りた。
「さん!」
「シャーリィ、無事だったのね!」
「さんたちのおかげです!!
ちゃんと、声聞こえましたから。
二人で陸の民と水の民…二つの種族の懸け橋となりましょう!!」
「ええ!!」
シャーリィは消えそうな微笑みを向けた。
「シャーリィ、ここはメルネスが作ったの?」
「?…私が、ですか?それはわかりませんけど…。」
私?
もしかしてシャーリィには、あのメルネスの記憶がないの?
私はワルターと顔を見合わせた。
彼も同じ事を思っていたみたいで、少しがっかりしていた。
でも、その方がいいわよね。
シャーリィに、あの子の悲しみを背負わせる必要なんてないものね。
「あっ……」
「どうしたの?」
「消える……、消えます。
さん、ワルターさん、気をつけて!!」
「えっ…!?」
瞬間、私達の足元が崩れさるかのようにグラリと揺れた。
「、掴まれ!メルネスっ…
な!…いない!?」
いつのまにかシャーリィの姿が消えている。
何がなんだかわからないうちに、足元がグラグラ揺れて立ち上がれなくなっている。
私は思い切りワルターにしがみついた。
「…ワルターっ…」
「落ち着け。」
「う、うん…」
私達はぎゅっと目をつむると、お互いを見失わないように力強く掴んだ。
「うっ…!?」
「眩しい!!」
目を瞑っているはずなのに強い閃光が飛び込んでくる。
目が眩む。
一体、何が起こるの?
私の胸に、一抹の不安が駆け抜ける。
どうしても、彼の名前を呼ばないといけない気がして。
……どうしても!
………きっと、ステラが私に言わせたんじゃないかと思う。
「セネル!!!」
****************
滄我の世界…かな。
そういうつもりで書きました。
海しかなかった遥か昔。
この世界に降り立った陸の民はここを、
「輝ける青」
と呼んだのでしょう。
2006/08/18
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